原発事故以来、「御用学者」という言葉が一気に広まった。
正直なところ、誰にでも「御用学者」というレッテル貼る風潮の裏には、排斥主義が透けて見えてどうも苦手なのだが、それはそれとしてアメリカには「御用学者」と呼ぶしかない科学者たちがいるそうだ。
本書はそんな科学者たちを実名を挙げて告発した書である。
煙草による肺癌の誘発、酸性雨の原因は工場や自動車の排気ガス、フロンガスによるオゾン層破壊、煙草の副流煙被害、CO2増加による地球温暖化、DDTの環境への悪影響。今ではたいていの人が常識として考えている事柄は混乱させられたり、事実を歪められたり、公表を遅らせられたりといった歴史を経てきた。
そんな「妨害工作」を主導したの業界と利害関係のある科学者たちだった。驚いてしまうのは、上記の全てに嘴を突っ込んでいる科学者たちがいるということだ。
元々、彼らは仮想的国だったソ連の脅威を訴えて、スペースオペラばりで実現の可能性が低いと評価されていた戦略防衛構想(SDI)の促進を主張した人々だった。しかし、専門は物理学やロケットなど。環境問題とは縁もゆかりもないのである。そんな専門家ではない人々がSDI促進で得た肩書を武器に強い影響力を行使してきた。
彼らの採った戦術の中でも、思わず「さすがに頭がいいなぁ」と感心してしまったものに「マスコミに両論併記をさせる」というものがある。
業界にとって都合が悪い事実がマスコミに取り上げられる際、反対意見も書かなければバランスが取れていないと訴えるのだ。マスコミはバランスという言葉に弱い。そのため、肯定派、賛成派、どちらの意見も取り上げることになるのだが、記事を読んだ人々は「なるほど。反対意見もあるんだな」と思ってしまうという寸法だ。
業界の御用学者となった科学者たちだが、一般に思いつくような金銭的な理由だけで手先になった訳ではない(もちろん、皆無ではないだろう)。
冷戦時代のまっただ中で子供時代を過ごした彼らには「資本主義=自由・社会主義=悪」という考えが刷り込まれた。彼らにとって、環境問題を理由に資本主義活動を制限するという行為は社会主義、つまり、「自由を侵害する悪」ということに他ならないのである──と著者たちは主張する。まぁ、ここらへんはもちろん本人たちに訊いた訳ではないので想像の域を出ないのだが。
では、専門家ではない我々はどうやって、正しいであろう真実を見分ければいいのだろうか。
著者たちが述べるのは、ピュアレビューの大切さである。科学的な着想には証拠による裏付けが必要だ。着想と証拠は、その分野の専門家たちによって審査される必要がある。これがピュアレビューだ。ピュアレビューによって認められた着想のみが事実として認定される。
先に挙げた数々の環境問題はピュアレビューを経ている。一方で反対する意見はどんなピュアレビューも通過していない。どちらを正しいものと捉えるかどうかは自ずと明らかだろう。
しかし、我々には「信じたいものを信じる」という根本的な問題がある。煙草を吸いたいばかりに煙草の害を否定し、原発を否定したいあまりにCO2による地球温暖化を間違っていると決め付ける──。例を挙げれば、枚挙に暇がない。そういった心とどう折り合いをつけるかがこれからの課題だ。
]]>〈隠蔽捜査〉シリーズ第4弾。あいかわらずの安定した面白さで一気読了。エンタメ警察小説のひとつといっていいんじゃなかろうか。
家族の不祥事から左遷され、大森署署長を勤めることになったエリート警官、竜崎。前巻までで単なるお飾りではなく、自他ともに認める大森署の指揮官となった竜崎だが、殺人、轢き逃げ、放火、麻薬捜査を巡る厚生省麻薬取締部との確執という数々の事件・トラブルが一気に飛び込んできて翻弄されることになる。
さらに娘、美紀の婚約者がカザフスタンで飛行機事故に遭ったという知らせが届いて……と、今回はモジュラー型ミステリ色が強くなっている。
読みどころは、やはり、竜崎が積み重なる難題を鮮やかに解決していく部分だろう。組織のしがらみに囚われず、原理原則を旨とし、すべてを合理的に見る竜崎の姿勢は理想の上司像であるとともに、ハッカー魂に通じるものもあって、とても共感できた。
個人的には、もう少し凝った文体の方が好きなのだが、ストーリーテリングの巧さはさすがの一言に尽きる。
ラストの一文も素晴らしい。本当に痺れますぜ、これは。
難点をあげると、あいかわらずの苦しいタイトル。漢字2文字っていう流れだから仕方ないんだろうけど、今回もストーリーとの関係がほとんどないですね(笑)。
]]>本が好き!経由で献本いただきました。
SF者にはいわずと知れた、ロイス・マクマスター・ビジョルドの代表作〈ヴォルコシガン・サーガ〉。なんだかマイルズ君の話を読むのひさしぶりだなー、なんて思ったら、なんと6年ぶりの邦訳ですよ! 邦訳を出版をしながら、じりじり待つのが(英語が読めない)SF者の宿命とはいえ、ちょっと長すぎる気もしますな。
まぁ、それでも出版されただけで喜んじゃうのが、SF者なんだけどね。
今回の舞台は惑星コマール。皇帝とコマール人女性の結婚式という重大イベントを前に、テラフォーミング用ミラー衛星に貨物船が衝突するという事件が起きる。事故なのか、それともテロなのか──原因を究明するために、皇帝直属の聴聞卿となったマイルズは同僚ヴォルシスとともにコマールを訪れる。
マイルズらはヴォルシスの姪、エカテリンの家に滞在することになるのだが、しかし、テラフォーミングを担当する局の責任者を勤める彼女の夫、エティエンヌにはひた隠しにする秘密があった。夫の秘密を知るエカテリンはひとり悩みを抱えていたが……というのが冒頭のあらすじ。
読むはじめて、いきなり「あれ? マイルズ君、いつの間に軍辞めて、聴聞卿になったんだ……?」なんて思ったりしたんだけど、ググってみたら、なんと、前作『メモリー』を読み飛ばしていたことが判明。ブックオフでシリーズものを揃えたりすると、こういうミスがあったりしますね!
マイルズが聴聞卿になった経緯がよく分からなかったりしたんだけど、まぁ、それでも楽しく読めた。
ストーリーは、事件を調査しつつエカテリンに魅かれていくマイルズと、夫の束縛に苦悩するエカテリンという、ふたつの視点で描かれていく。
これまでのシリーズでは、マイルズが舌先三寸で危機を乗り越えていくというものが多かったのだが、今回は聴聞卿という大きな権力を手にしたマイルズがどうその権力と折り合いをつけていくかが、かなり大きなウェイトを占めている。そのせいか、ビジョルドのストーリーテリングの妙はさすがと思いつつも、ハラハラドキドキ感がかなり薄くなったというのが正直な感想。
どうやら、これまで数々のヒロインたちの踏み台にされてきた(笑)マイルズ君もいよいよ次作でゴールインするらしいので、そのインターミッションと捉えておいた方がいいかもしれない。
早めに次作を読めることを祈りつつ(今度は6年かかりませんように!)、それまでに『メモリー』を読んでおこう。
ちなみに、タイトルの『ミラー衛星衝突』は、原題のままの『コマール』とか『コマールの○○』みたいなものにした方がよかったんじゃないかなー。あんまりミラー衛星関係ないし。
]]>この手の話に弱いんだよなー、ホント。
イギリスのヤングアダルト向けの物語だが、世代を超えてぐっときてしまう一冊。
主人公は13歳の少年、コナー。去年の春に二人暮らしの母親が重い病気にかかっていることが分かり、その事実は学校中に広まった。同級生も教師も「お母さんが病気のかわいそうな子」としてコナーをまるで腫れ物に触れるように扱う。
いじめっこグループに目をつけられ、さんざん嫌がらせをされるが、同級生は誰もコナーとかかわろうとしない。ただひとり、近所の幼馴染リリーを除いては。しかし、リリーは母の病気を学校中が知ることになった端緒だった。コナーが心を開ける訳もない。
コナーが小さい頃に母と離婚して、遠くアメリカで再婚している父親は時折電話をかけてくるだけ。母方の祖母とも気が合わず、コナーはひとり孤独の中にいた。
そんなある夜、自宅から見える丘のイチイの大木が怪物となってコナーを訪れる。怪物は告げる。「おまえに三つの物語を話して聞かせる」「わたしが三つの物語を語り終えたら、今度はおまえが四つめの物語をわたしに話すのだ」と……。
死の影に覆われたストーリーはお世辞にも明るい話とはいえない。たぶん、日本では推薦図書の類いには選ばれないだろうなーなんてことも思う。
しかし、本書は人生で乗り越えなければいけないもの、大切にすべきものを伝えてくる。読み手の心に染み込み、長く──もしかしたら、ずっと──残るだけのなにかを残すのは、このような物語ではないだろうか。
挿絵の素晴さも特筆もの。影と闇を強調したタッチは一見ホラー調だが、物語に寄り添い、イメージを押し広げる。
上からの目線ではなく、読み手と同じ目線の高さで人生のなにごとかを教えてくれる──。本当の意味でのヤングアダルト作品のありかたを再認識させられた。
]]>scraper系のスクリプトを書いていて、いつもどうするか迷うのがテストの仕方。
の2つのテストをしないといけないんだけど、後者のscrapeした値というものが変化するもの(株価だったり、気温だったり)なので、なかなかテストが難しいなぁと感じている。
bloomberg_quoteのRSpecはこんな感じで書いてみた。
の2つを確かめている。
サイトの変更があった場合、
というかなり泥臭い感じでやらざるをえないんだけど、もうちょっといい方法がないかなーと模索中。
]]>以前書いたPerlモジュール、Finance::Quote::BloombergがBloombergのサイトレイアウト変更で動かなくなってしまった。
本家に取り込まれる気配がなくて、なんだかモチベーションも上がらず、どうしたもんかなーと思っていたところ、たださんのBundlerを使ったGem作成メモを読んで、今まで謎だったGemの作り方が分かったので、一念発起してRubyGemを書いてみた。Rubyだったらherokuで動かせるしね。
作ったGemはこちら。RubyGemsはとても手軽で素晴しい。
開発は例によってgithubでやっています。今のところ、本当に基本的な機能しかないので、興味がある方はpull requestしていただけると幸いです。
scraperはサイトの変更に追随するのが大変なので、なかなか機能を増やすのに躊躇してしまうところだけど、とりあえず、四則計算でいける
くらいは入れるつもり。
]]>2011年度の「このミス」や「文春ミステリー」の海外部門で見事1位に輝いた作品。前々から「面白い!」と評判だったのだが、なんとなくスルーしてしまっていた。
二段組450ページという分量だが、むちゃくちゃ面白くて一気読み。これが処女作というんだから素晴しい。
語り手はハリーという中年男。元ポルノ雑誌のライターで、今はヴァンパイヤ小説やSF、ハードボイルドものの作家を生業としている。といっても、どれも売れ行きがいまひとつのB級もので、本名で出した本はゼロ。正体を隠し、すべてバラバラのペンネームで書いている。
恋人に捨てられ、小説だけでは食えずに高校生のレポート代行までせざるをえないと、散々なハリーに大きなチャンスが巡ってくる。
ニューヨークを震撼させた連続殺人鬼、ダリアンがハリーに告白本の執筆を依頼したいというのだ。4人の女性を惨殺したダリアンは三ヶ月後に死刑が執行されることが決まっていた。ダリアンは殺害した女性たちの頭部をどこかに隠したが、逮捕後も一切の自供を拒み、三ヶ月後には死刑が執行されることになっていた。ダリアンはポルノライターだった頃のハリーの記事の大ファンで、ハリーがある条件を満たせば、女性たちの頭部の隠し場所も含めた真実を話すという。
条件の醜悪さに一度は依頼を断わろうとするハリーだが、彼をバカにする作家連中を見返すため、つい告白本を執筆することを宣言してしまう。その先に危機が待ち受けているとも知らずに……。
ダメ男のくせに、ハリー、モテすぎやろ!(それも一人は美少女、もう一人は美女!)とか、犯人はハリーが行き来する間にあんなことをする時間があったんやろうか? とか多少のツッコミどころはあるものの、前半の社会派ミステリから一気にサイコスリラーへと展開させる手腕は見事。
最近はミステリといいながら、推理要素がないものも多いが、きちんと推理小説になっていることも評価したい。ヒントはちゃんと提示されます。まぁ、私は分かりませんでしたが(笑)。
ストーリーは合間合間にハリーが書いたB級小説が抜粋されてメタ小説としての一面を見せつつ、さらに物語を書くとはなにかまで斬り込んでいく。
物語が好きなすべての人にオススメしたい作品だ。あ、グロシーンはあるので、そっち方面がダメな人は注意のこと。
]]>1941年12月8日、真珠湾を奇襲すべく第一航空艦隊を発進した攻撃隊がハワイで見たものは、正体不明の三脚機械に蹂躙される真珠湾と米太平洋艦隊の姿だった──という冒頭からはじまるタイトルそのままな直球勝負の『宇宙戦争』オマージュ作品。
作者である横山信義は架空戦記作家の大ベテラン。狂ったように架空戦記を読んでいた時期があるので、当然、横山信義作品も読んでいたのだが、ここ10年くらいはご無沙汰だった気がする。架空戦記もすっかり縮小しましたね。
Amazonのレビューも高評価なのでかなり期待して手に取ったのだが、うーん、SFファンが読むとちょっとどうかなーという感じかもしれない。
時代を太平洋戦争開戦時に持ってきたのは、なかなかいいアイデアだと思うのだが、やたらと戦闘シーンが長いのが正直、かなりかったるい。さらに日本軍も米軍も火星人の兵器にはまったく歯が立たず、延々とボロ負けする様子を読ませられるのもストレスが溜まる。
だが、負けまくるのも当たり前。41年前にも火星人はロンドンに侵攻している──つまり『宇宙戦争』のこと──のだが、イギリスがそれを隠蔽していたため、どの国も通常兵器しか持っていないという設定なのだ。
しかし、その肝心のイギリスも全く火星人に対する備えをしていないというのが意味不明。おまえら、41年間もなにやっていたんだ(笑)。だいたい、当時の世界の中心ともいえるロンドンが壊滅的な危機に陥ったのに、それを隠し通せるものだろうか、なんて疑問が浮かぶ。
さらに火星人が侵略を開始した日が1941年12月8日という歴史の転換点だったり、真珠湾からフィリピン、マレー半島となぜか日本軍の先回りをするように侵攻していたりと、ちょっと「たまたま」では説明がつかない点も気になった。ロンドン、ベルリン、モスクワにも侵攻しているのだが、ワシントンDCや東京には手を付けていないのも不自然といえば不自然。
著者がSFを書き慣れていないせいか、どうも設定の粗が目立った。まぁ、SFというよりはSF風味の架空戦記として読めば及第点かもしれない。
ストーリーは、人類同士の戦争どころじゃなくなった各国が手打ちにして、どうやら統一軍を創設しようと動き出すようなので、次巻『宇宙戦争1943』に期待しておきたい。
ちなみに、もしかして、ヒトラー総統、火星人との同盟とか考えてないですよね? そのネタは手垢がつきまくっていますぜ。
著者がオマージュしたと挙げている小松左京の『見知らぬ明日』は未読なので、そのうち読んでおこう。
]]>これはすさまじい本だ。
二段組みで700ページ近さの分量を持つ本だが、著者の魂が込まった筆致は、格闘技にまったく興味がなかった私のような人間もぐいぐい引き込むだけのパワーに満ち溢れている。今年読んだ本の中でもベスト級の一冊。
木村政彦という名は本書を読むまで知らなかったのだが、柔道史上最強と謳われた人物だそうだ。戦前から戦後の15年間を通じて負けなし。「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」と柔道界に今でも語り継がれるほどの偉業を成し遂げた超人である。
しかし、現在、彼の名は一般にはほとんど知られていない。
なぜか。
現役を引退した木村はプロ柔道を経て、プロレス界に入り、力道山と戦った末、惨敗したからである。だが、その試合には裏があった。
僕の一番好きなことは「勝つ」といふことです。一番嫌いなのは「負ける」ことです。
本書の冒頭に掲げられた木村の言葉だ。これほど勝負にこだわる男だった木村にとって、「力道山に惨敗した男」というレッテルは耐えがたいものがあった。一時期、木村は本気で力道山を殺害しようと考える。
これが一見キャッチーすぎるとも思える本書のタイトルの由来なのである。
著者が本書で試みるのは、忘れされた存在である木村政彦という男の復権だ。
「柔道の鬼」と呼ばれた牛島辰熊に見出され、常人の三倍以上の練習──乱取りだけで1日9時間。加えてウェイトトレーニングに4〜5時間という常人であれば確実に死ぬものだったという──こなした末に、現在のオリンピックにも匹敵する天覧試合で念願の優勝旗を手にした木村。
だが、師匠牛島が石原莞爾と親交を持ち、時の東条英機総理大臣暗殺を試みるほどの思想家でもあった一方、木村には確固たる思想がなかった。それが木村政彦という歴史に名を残すはずだった格闘家の人生を狂わせた。
現役を引退した後、なにを胸に秘め、木村は生きたのか──。丹念に描かれた木村政彦の軌跡は戦中から戦後にかけての柔道史、歴史の徒花となったプロ柔道、黎明期のプロレス、さらに現在の総合格闘技に繋がる萌芽をも描き出すことになる。
著者が指摘するように、木村政彦だけでなく、師匠牛島辰熊、そして本書では悪役(ヒール)である力道山もまた帝国主義と戦争によって人生を踏みにじられた人々だったということは覚えておかなければならないだろう。
もし歴史が違っていたら──本書を読んだ後に、ついそんなことを考えてしまう。木村は伝説の柔道家、いや、世界に冠たる格闘家になったかもしれない。牛島と木村の師弟愛は揺ぎないものになったかもしれない。力道山は朝鮮人力士として角界に名を轟かせたかもしれない。
木村は本当に忘れ去られたのか。真実は本書を読んで確かめて欲しいが、最後にひとつだけ書いておこう。
柔道には腕緘(うでがらみ)という関節技がある。ブラジリア柔術や総合格闘技では腕緘はこう呼ばれる。キムラロックと。
]]>いやー、これは暗い。かなり苦手な感じの硬さの残る訳文で、読むのにだいぶ時間がかかってしまった。
アルバニア出身の作家、イスマイル・カダレによる幻想小説が本書。元々、アルバニア語で書かれた作品だそうだが、邦訳の底本となっているのはフランス語版とのこと。まぁ、日本でアルバニア語ができる人なんて数えるほどしかいないと思うので、それはそうだろうなぁ。
舞台になるのは19世紀末のオスマン・トルコ帝国。ある名家に連なる青年、マルク=アレムが巨大官僚組織〈タビル・サライ〉──通称〈夢宮殿〉への登庁初日からはじまる。
この〈夢宮殿〉の業務は国民の夢を管理するというもの。帝国全土から収集された夢は〈夢宮殿〉の各課で選別され、解釈され、重大なものは〈親夢〉として皇帝へ報告される。夢が現実のなにかを暗示していると考えられているのだ。
てっきり、〈夢宮殿〉が国民の夢の中に入り込んで夢を収集するのかと思いきや、自己申告制だというのは原始的といえば原始的。各地にある〈夢宮殿〉の支所に報告された夢が文書にまとめられて、夢運び人によって中央に送られるというシステムらしい。
マルク=アレムが属する名家は、数々の大臣を輩出してきた一方、弾圧の対象にもなってきたという複雑な歴史を持つ。一族の生き残りをはかるため、マルク=アレムが〈夢宮殿〉へと送り込まれたという背景がある。マルク=アレムはとんとん拍子で出世するのだが、その理由に一族が関係しているのかどうか分からない。上司は「都合がいい」と一言で片付けるだけだ。
マルク=アレムの出世の理由と同じように、〈夢宮殿〉自体も曖昧模糊としている。どんな課が存在するのか、職員ですらよく分かっていない。帝国にとって害があると解釈される夢を見たものは連れ去られて監禁されるらしいが、それもはっきりしない。そんな中でマルク=アレムは徐々に心身を摩耗させていく。
終盤には〈夢宮殿〉が政治闘争の場になる事件が暗示されるが具体的な説明はなされない。
本書の背景には全体主義体制にあったアルバニアへの批判があるという。霧の中にぼんやり見える宮殿のように、姿をはっきりとは捉えられない、しかし、巨大な存在感を持つ官僚組織を描いているという点で、いわゆる普通の幻想小説とは一線を画した一作といえるだろう。
官僚組織を中心にした作品らしく、マルク=アレムの〈夢宮殿〉の業務も組織遊泳術的な側面も見えて興味深い。
ある夢の解釈に「官史の一団が国家に対してなんらかの不正行為を働く」と書いたあと、関係組織の目の仇にされることを恐れ、「官史の一団が国家に対してなんらかの不正行為を働くのを防ぐ」と書き加えるあたりは、なんだか日本の組織に通じるところがあって苦笑してしまった。
結局のところ、国や体制が違えど、官僚組織の本質は変わらないという証左なのかもしれない。
]]>もう一個更新ついでに、今まで使っていた「YYMMDD#p01.html」形式はshorten URLと相性があんまりよくない感じなので、tdiary/tdiary-contribから
を貰ってきて有効した。
今まで使っていた
はsection_permalinkとバッディングする感じなので外した。
]]>tDiaryの更新ついでに、Rubyも1.9.3-p125に更新した。
Rubyはrvmで管理しているんだけど、MacBookはrbenvにしてしまったので、実行環境だとどんなもんかなーと、サーバもrbenvに変更してみた。
結果からいうと、うまくいかず、めんどくさくなってrvmに戻してしまったw
nginxにrbenvの環境変数が渡されていないぽい。ruby-local-execを使わないといけないらしいので、あとで仮想環境で試してみる。
]]>tDiary 3.1.2 リリースから2ヶ月近く経った訳だけども、重い腰を上げて、この日記もやっとこさ更新した。
gitで管理しているから、20分もあればできるのに。
ものぐさなのはいかんねー。
]]>