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2013-03-20(Wed) [長年日記]

_ 『シークレット・ウォーズ』ロネン・バーグマン

シークレット・ウォーズ(ロネン バーグマン/佐藤 優/河合 洋一郎)

イスラム革命以後、ホエイニ率いるイランは、イスラム革命を全世界に輸出すべく、莫大なオイルマネーを武器にテロ組織を支援し、大量破壊兵器の入手を図ってきた。イランから殲滅することを宣言されたイスラエルとアメリカは、イランと同様の「汚い」手段を用いて戦うことになる。

本書は中東を舞台に繰り広げられてきたイランとイスラエルの30年間に渡る秘密戦争を明らかにするノンフィクションだ。佐藤優の「この本の秘密情報には30億円の価値がある!」という煽り文句はちょっと苦笑してしまうが、少なくともこれまでの固定観念が覆されることは間違いないだろう。

旧ソ連は共産主義の輸出をスローガンにしてアメリカと戦い、結局、敗れた訳だが、一方のイランはイスラム革命の輸出に半ば成功していることに驚かされる。PLOやハマスなど、本来であればシーア派であるイランとは対立しているはずのスンニ派の組織も積極的に支援し、第二次レバノン戦争ではイスラエルに手痛いダメージを与えて勝利したヒズボラもイランの出先組織として、テロ組織というよりは完全な軍事組織へと育て上げている。さらにアメリカ国内にテロ組織を創設することさえ成功しているのである。

もちろん、対するイスラエルも善人という訳ではなく、一般人を巻き込む二次被害を考慮しない手段で、テロ組織と戦っている。まさに血を血で洗う抗争である。ちなみに、一般にプロフェッショナルな諜報機関と思われているイスラエルのモサドの様々な失敗を明らかにされている点も興味深い。諜報組織間の対立で防げたはずのテロが防げなかったなどという事例は、まさに9.11に見られたものと同じだ。

アラブの春により、いくつもの中東の独裁政権が倒れたが、その後に成立した政権にイスラム色が強いのも、イランの関与があったせいではないかと本書を読んだ後には、思わず勘繰りたくなってしまった。

本書は西側からの視点で描かれているということは留意する必要があるだろう。イランから見た場合はどうなのか、ぜひ知りたいところだ。

本書とCIAの失敗の数々を描いた『CIA秘録』を読み比べてみるのも面白いのではないかと思う(今度やってみようと自分用メモ)。

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