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2013-01-06(Sun) [長年日記]

_ 『ペルセウス座流星群』(ロバート・チャールズ・ウィルスン著)

ペルセウス座流星群 (ファインダーズ古書店より) (創元SF文庫)(ロバート・チャールズ・ウィルスン/茂木 健)

〈時間封鎖〉シリーズの作者、ロバート・チャールズ・ウィルスンによる短編集。

〈時間封鎖〉はガチのSFだったが、こちらはSF的な要素は一編をのぞいてあまりなく、どちらかというと全体的にホラー色が強い。ホラー短編集といってもいい一冊だ。

舞台がカナダのトロントで共通していたり、副題にもあるファンダーズ古書店や登場人物が作品を通して登場したりするが、連作集というほどのつながりはなく、基本的に独立した作品を集めている。

収められた9編に通じるテーマを乱暴にまとめてしまうと「我々の世界から膜一枚向こうに隠された別の世界を覗く」というもの。ホラーものとしては、かなりオーソドックスなのだが、怪異をメインにするのではなく、あくまでも怪異に接した登場人物たちの心情や距離などを主に描いている点が面白い。

ここらへんは、ものすごいスケールで、これでもかとばかりにSF要素を投げ込みながらも、一貫して登場人物たちに焦点を当てつづけた<時間封鎖>と共通の視点といっていいだろう。

〈時間封鎖〉と共通といえば、登場人物たちのほとんどが不幸な生い立ちだったり、離婚や不仲などの問題を抱えていたりと、家庭的に恵まれていない点も同様だ。

そんな訳でストーリーも必然的に暗いものばかりな訳だが……そこは読んでからのお楽しみ。人によっては気が滅入ってしまうかもしれないけれど、個人的には暗い話は大好物なので、なかなか面白く読めました。

個人的には

  • 20世紀劈頭のトロントを舞台に、重度の鬱病の姉を抱えた少年と古書店の老店主の交流を描いた「アブラハムの森」
  • 宇宙が膨張していることを発見した天文学者ハッブルや地球外知的生物によるアブダクション、アダムスキーなどが登場しながらも、あくまでも落ち着いた筆致で心に問題を抱えた少女の体験を描いた「観測者」
  • 鬱病の男を主人公に、薬品と環境とのメッセージという特異な関係を描いた「薬剤の使用に関する約定書」
  • 妻と死別した男が妻が勤めていた古書店を訪れたことからはじまり、宇宙規模まで拡大する本書唯一のSF作品「無限による分割」

がお気に入り。しかし、こうやって並べてみると、本当に心の問題を抱えた主人公ばかりだなぁw

Tags: SF 書評