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2012-11-03(Sat) [長年日記]

_ 『ディミター』(ウィリアム・ピーター・ブラッティ著)

ディミター (創元推理文庫)(ウィリアム・ピーター・ブラッティ/白石 朗)

本が好き!から献本いただきました。ありがとうございます。

『エクソシスト』の原作者、ウィリアム・ピーター・ブラッティのスパイ小説系ミステリー。

と書くと、柳広司の『ジョーカー・ゲーム』ぽいが、本作の出だしもそれぽい。

物語は冷戦まっただなかの1973年、東欧のアルバニアから始まる。

本書を読むまで知らなかったのだが、当時のアルバニアは、ソ連の衛星国でありながら、ソ連を仮想敵国と見なし、国交は中国とのみという強烈な鎖国国家だったそうでだ(後に中国とも仲違いする)。さらに無神国家を宣言し、一切の宗教活動を禁止、苛烈な弾圧を繰り広げていた。

そんな中、死んだ男の名前を名乗っていたひとりの謎の男が官憲に拘束され、国家保安省に連行されてくる。男は激しい拷問を加えられるが、いっさい口を開こうとしない。男の目的は何なのか。その正体は? 尋問官の視点から不気味とも思える男の姿が描かれる。

舞台が翌年のイスラエルに変わると、物語はがらっと雰囲気を変える。病院に現われた正体不明のピエロ、ガソリンスタンドで起きた爆発事故、教会に残された死体──。精神科医とその友人の警官を主人公として、異様な事件が続く事態を調書や手紙、会話記録を交じえつつ描き出していく。

幻惑されるようなストーリーの中を読み手は霧の中を歩くように読み進めていく訳だが、時折、顔を出す伏線が緊張感を高める。そして、すべての事件には伝説のスパイの影が──。

雰囲気も非常によく、精緻な文体(訳者の努力もあったのだろう)も好みで面白く読めたのだが、最後の最後で肩すかしを食らった感がある。うーむ、この謎解きはどうなんでしょうか。日本人にはピンとこないラストかもしれない。

ただ、未読だった『エクソシスト』を読んでみなければ! と決意させるくらいのデキの良さではありました。

『エクソシスト』の訳文ひどいのかー

amazonのレビュー参照。

エクソシスト (創元推理文庫)
ウィリアム・ピーター ブラッティ/William Peter Blatty/宇野 利泰
東京創元社
¥ 1,260

Tags: 書評