«前の日記(2012-07-25(Wed)) 最新 次の日記(2012-10-11(Thu))» 編集

[email protected]



2012-08-26(Sun) [長年日記]

_ 『磯野家の介護』(澤田信子監修)

磯野家の介護(澤田信子)

本書『磯野家の介護』は、「85歳になった波平がまだらボケになってしまったら」をテーマに、介護とどう向き合うかを明るく描いた一冊。

まだらボケとは認知症の初期症状のこと。しっかりと現実の世界を認識している状態と、認知症によって混乱している状況が入り交じった状態をいう。

20年ほど前に『磯野家の謎』という研究本が大ヒットした記憶があるが、ついに磯野家も介護の時代に入ったかと思うと考えてしまうものがある。

それはさておき、介護未経験者で、これから介護を経験するであろう身としては、とても参考になる内容だった。

目次

第1章 まだらぼけってどんなもの?
      まだらぼけを知る

第2章 まだらぼけケーススタディ(1) マダラーさんのデリケートな心
      物忘れの困った/喜怒哀楽の困った/昼夜逆転の困った

第3章 まだらぼけケーススタディ(2) 日常生活の「困った!」はこう解決
      お風呂の困った/身だしなみの困った/食事の困った/料理の困った/外出の困った/トイレの困った

第4章 行政と二人三脚で快適介護!
      要請介護認定/デイサービス/小規模多機能ホーム/ケアマネージャーと上手につきあう/ヘルパーさんと上手につきあう
第5章 ここが知りたい在宅介護! 痒いところに手が届く介護の疑問あれこれ
      週末に出かける用事!マダラーさんをだれに頼めばいい?/手すりやスロープ、バリアフリー 介護保険でどこまでできる?/お年寄りの食事、だれかにお願いできますか?/お年寄りの金銭感覚、どうすればいい?/バカにならない介護帰省の交通費 介護割引きってありますか?/介護をするには仕事はやめないとだめ?/介護保険で使えるサービス いろいろ知りたい!

介護といえば、どうしても暗いイメージがつきまとい、事前に考えることをついやめたくなるが、日本人であれば、誰でも知っている磯野家というアイコンを使うことによって、そんなイメージを払拭している。

介護する側からだけではなく、介護されるマダラーさん(本書では、まだらボケになりはじめたお年寄りを愛情といたわりと明るさを込めてこう呼ぶ)の内面にも光を当てているのも優れている点だ。

感情の起伏が激しくなる、家族を泥棒扱いする、介護認定調査員の前では優等生になる、などは介護経験者からよく聞く話だが、マダラーさんがどうしてそのような状態になるかを理解することができる。感情の問題はまた別なので、マダラーさんの行動に憤慨することはもちろんあるだろうが、相手を理解することが介護の一助になることは間違いないだろう。

介護のための行政サービスを積極的に紹介している点も良い。高齢化と核家族化が進み、さらに景気も悪いとあって、現在の日本では介護は精神的・肉体的・経済的に大きな負担になる可能性が高い。介護に限らず、なんでもそうだが、行政は「こんなサービスがありますよ」と向こうから売り込んでくることはない。せっかく税金や介護保険料を払っているのだ。介護サービスを活用し、少しでも楽な介護を目指すべきだろう。

とはいえ、本書によれば、今後、高齢化率が高くなると(ほぼ必至だ)介護認定が厳しくなると予想されるという。自分の親の世代まではいいとして、自分が高齢者になるとどうなるんだろうと一抹の不安も覚えた。認知症にならないためのどうするべきかが、今後の課題かもしれない。

「知は力なり」、「情報は宝なり」である。磯野家という親しみやすい雰囲気にくるまれた本書は、これからの「超々高齢化社会での介護」という大きな問題と向き合うための強い味方になるだろう。

Tags: 書評