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2012-07-25(Wed) [長年日記]

_ 書評『吊るされた女』

吊るされた女 (創元推理文庫)(キャロル・オコンネル/務台 夏子)

本が好き!から献本いただきました。ありがとうございます。

天才的な頭脳と長身にして完璧な美貌をもち、決して感情を外に出さないニューヨーク市警の巡査部長、キャシー・マロリーを主人公にしたシリーズ第6弾が本書『吊るされた女』だ。

実はノンシリーズだと思い込んで献本をしてもらったのだが、届いてみたらシリーズものだったという次第。「あー、いい読者じゃないのに申し訳ないなー」と出版社さんに思いつつ読了。

マロリーの相棒、巡査部長のライリーの情報屋のひとり、娼婦のスパローが何者かによって首に縄をかけられ、アパートメントの天井から吊されるという事件が発生する。事件現場に急行したマロリーとライリーが見たものは、切られた金髪を口に押し込まれたスパローの変わり果てた姿だった……。スパローの事件の捜査はもうひとつの事件、さらに20年前の事件へと繋っていく。犯人は連続殺人鬼なのか?

一方、ライリーは事件現場に落ちていた古いウェスタン小説を隠匿する。それはスパローとマロリーの関係を示すものだった──。事件を追うマロリーとライリーの捜査が本書の縦糸だとすると、横糸となるのがスパローとマロリーの意外な関係から明らかになるマロリーの過去だ。クールな外面の中にマロリーが隠しているものの一面を読み手は知ることになる。

この二つの糸から本書のストーリーは織られているのだが、糸が縒り合わされず、最後までバラバラのままという印象が残った(シリーズものなので仕方ない面はあるのだが)。

どうも、作者キャロル・オコンネルは論理よりも雰囲気を重視するタイプのようだ。犯人がどうして特定できたのか?、犯行の意味は?(ただ単に「異常」というだけ?) 、新人警官デルースの行動の理由は? などなど、どうもよく分からないことが多かった。マロリーは「天才的な頭脳をもつ」と表現されているわりにロジカルな描写が出てこないのも、ちょっとどうかなと思う。

一方で、雰囲気重視がうまくいっている部分もあって、ライリーが地下鉄の乗客を昔培ったテクニックで静めるシーンは、本書の中でも印象に残るシーンだろう(重要度は低いのだけけれども)。

シリーズの他の作品を読んでいないということはあるのだろうけれども、単発のミステリーとして読むと、いまひとつな感じだった。

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