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2012-07-22(Sun) [長年日記]

_ 書評『ベヒモス クラーケンと潜水艦』

ベヒモス ―クラーケンと潜水艦― (新ハヤカワ・SF・シリーズ)(スコット ウエスターフェルド/Scott Westerfeld/小林 美幸)

イギリスを中心とする生物工学を駆使する〈ダーウィニスト〉とドイツなどの機械工学を主体とする〈クランカー〉の対立という改変を持ち込んだ第一次世界大戦を背景に、亡きオーストリア大公の息子アレックと男装のイギリス海軍兵士デリンの冒険を描いたSFシリーズ第二弾。

今年のはじめに読んだシリーズ前作『リヴァイアサン クジラと蒸気機関』がすこぶる面白かったので、本書もわくわくしながら読みはじめたのだが、その期待を裏切らない面白さだった。

宮崎アニメの冒険ものが好きな向きには太鼓判を押せる傑作。

前巻で墜落しながらも、アレックの助けでなんとか任務を続行している英海軍巨大飛行獣リヴァイアサンは、オスマントルコ帝国の首都イスタンブールに向かっていた。史実とは違い、まだスルタンが在位し、親ドイツに傾きながらも、かろうじて中立を保っているオスマントルコを説得するためだった。

イギリスによって軟禁されることを恐れたアレックは脱走を画策する一方、デリンは外交使節ノラ・バーロウ博士の護衛を命じられる──。

アレックとデリンのふたつのストーリーを軸にして、オスマントルコ帝国に浸透するドイツやスルタンに反抗する革命勢力などが入り乱れ、エキゾチックなイスタンブールの町を舞台に、前巻に勝るとも劣らない冒険活劇が繰り広げられる。

あれだけ「イギリス海軍の誇る」と言われていたリヴァイアサンが、あっさりドイツ軍の秘密兵器にまた墜とされそうになったり(リベンジはあるんだけどね)、自信たっぷりだったバーロウ博士(ダーウィンの孫娘)なのに「おいおい、だめじゃん」ってな展開があったりして、ちょっと苦笑しつつ、夢中になって読んでしまった。

ちなみに新登場の人造獣はかわいいです。ぺろぺろ。あ、いや、ベヒモスではないですよ。

かわいいといえば、表紙絵のデリンもけっこうな美少女ぶりで、性別隠せないんじゃないんでしょうかと思ったり。挿絵はそうでもないんだけどね(笑)。

しかし、「クラーケンと潜水艦」っていうサブタイトルはどうにかならなかったのかなー。「クラーケン != ベヒモス」だし、潜水艦も登場しないし。

訳者あとがきによれば、訳者の本意ではなく、編集部によって押し切られたとのこと。前巻のサブタイトル「クジラと蒸気機関」に響きを合わせたかったんだろうけど、作品にとってプラスなことはない気がする。

それはさておき、最終巻である第三巻の舞台は日本! ダーウィニストである日本がどんな風に改変されているのか、今から見るのが楽しみだ。

Tags: 書評 SF