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2012-07-21(Sat) [長年日記]

_ 書評『ペルディード・ストリート・ステーション』

ペルディード・ストリート・ステーション (上) (ハヤカワ文庫 SF ミ)(チャイナ ミエヴィル/鈴木 康士/日暮 雅通) ペルディード・ストリート・ステーション (下) (ハヤカワ文庫 SF ミ)(チャイナ ミエヴィル/鈴木 康士/日暮 雅通)

『都市と都市』が抜群に面白かったチャイナ・ミエヴィルのスチームパンク+ダークファンタジーなジャンルミックス小説。

単行本が出た2009年には、あまりの分厚さにスルーしてしまったのだが、山岸真さんが今回の文庫版を

と猛プッシュしていたので、手に取ってみた次第。

結果から先に書いてしまうと、これはたしかに大傑作! 上下巻あわせて1100ページ超という厚さを感じず、一気読みしてしまった。

『都市と都市』よりもさらに都市小説としての色が濃く、町が主人公といっても差し支えがない。都市小説好きは読んで損なしの一作だ。ミエヴィルは本当に都市というものに憑かれているなー。

舞台となるのは〈バス=ラグ〉と呼ばれる異世界にある、蒸気機関と魔術によって繁栄している都市国家ニュー・クロブゾン。飛行船が行き来し、立ちこめるスモッグの中には摩天楼が聳え、スカイレールという軌道が空に張り巡らされたこの巨大都市には人間をはじめ、甲虫の頭部に女性の身体を持つ〈ケプリ〉やサボテン人間〈カクタシー〉、水棲の〈ヴォジャノーイ〉など様々な種族が渾然と一体となって暮らしている。

──と書けば、中二病なファンタジー設定だが、猥雑そのものの情景や、住民が直視しないようにしている夜警国家としての一面など、どんどん細部を書き込んで読み手にリアリティを感じさせてくる筆致は圧巻。

ストーリーは、翼を罰によって奪われた鳥人〈ガルーダ〉から翼の復活を依頼された異端の科学者アイザックという端緒からはじまり、中盤で一気にニュー・クロブゾン全てを巻き込む怪獣大決戦へと雪崩れでいく。人間など一瞬で殺されてしまうモンスター達の戦いの中で、傷だらけになりながら(さらに垢と汚物にまみれながら)、繰り広げられるアイザックたちの冒険に夢中になること間違いなし。

様々な異種族たちのほか、地獄の大使館や次元間を行き来する巨大蜘蛛、霧を見通す魔術で強化された狙撃兵、モンスターを直視しないように常に鏡ごしに見るなどなど、「なんだかやたらとTRPGぽいな」なんて思っていたら、ミエヴィルはTRPGの経験があるそうです。なるほど納得。〈バス=ラグ〉を舞台にしたTRPGやってみたいなー。

あと、ちょっと気になったんだけど、ニュー・クロブゾンの人間の言語って、都市名からして分かるけど、英語なんですね。

参考

Tags: 書評 SF