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2012-07-14(Sat) [長年日記]

_ 書評『挑む力 世界一を獲った富士通の流儀』

挑む力 世界一を獲った富士通の流儀(片瀬 京子/田島 篤/野中郁次郎)

レビュープラスさんから献本いただきました。ありがとうございます。

富士通と聞いても、ぱっと思い浮かぶのパソコンと携帯電話、それから「世界の車窓から」くらいで、いったい何をやっている会社なのか、いまひとつ分からなかったのだが、実は「社会全般に対して、ICTサービスを提供する事業者」としては日本1位、世界3位の「世界最大級の日本企業」なのだそうである。

本書は「挑戦し続け、成し遂げるためには何が必要なのか?」をテーマに、困難なプロジェクトに立ち向かい、成し遂げたプロジェクトリーダたちの姿に光を当てている。いってみれば、富士通版「プロジェクトX」と称してもいい一冊だ(まぁ、演出がない分、現実はあそこまでドラマチックではないけれど)。

とりあげられるのは、事業仕分けの「2位じゃダメなんでしょうか」で存亡の危機に立たされつつも、見事、スーパーコンピュータ世界ランキング1位に輝いた「京」(先日惜しくも1位から陥落)を筆頭に、東京証券取引所株式売買システム「アローヘッド」、「すばる望遠鏡/アルマ望遠鏡」、東日本大震災復興支援、らくらくホン、農業クラウド、電子カルテ、手のひら静脈認証の8つのプロジェクト。

223ページに8つものプロジェクトを掲載しているため、ひとつひとつは深くは掘り下げられてはいないのだが、知らなかったことばかりで、なかなか面白かった。たとえば、すばる望遠鏡については天文台はシステムがブラックボックスになることを許さなかったという。ブラックボックスでは観測後の検証ができないからだそうだ。なるほどと思った次第。

プロジェクトリーダーたちの奮闘ぶりが伝わってきた本書だが、一方で「富士通だったからこそ」というのがいまいち見えてこなかったのも事実。富士通という組織云々というよりは、プロジェクトに携わった人々が不眠不休でがんばったせいではないだろうかと邪推してしまう。

そんな気持ちでいたせいか、解説の「今こそ日本に学べ!」というスローガンにはなんだかちょっと虚しさを感じてしまった。

Tags: 書評