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2012-04-15(Sun) [長年日記]

_ 物語が好きなすべての人にオススメしたい傑作ミステリ──『二流小説家』(デイヴィッド・ゴードン)

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)(デイヴィッド・ゴードン/青木千鶴)

2011年度の「このミス」や「文春ミステリー」の海外部門で見事1位に輝いた作品。前々から「面白い!」と評判だったのだが、なんとなくスルーしてしまっていた。

二段組450ページという分量だが、むちゃくちゃ面白くて一気読み。これが処女作というんだから素晴しい。

語り手はハリーという中年男。元ポルノ雑誌のライターで、今はヴァンパイヤ小説やSF、ハードボイルドものの作家を生業としている。といっても、どれも売れ行きがいまひとつのB級もので、本名で出した本はゼロ。正体を隠し、すべてバラバラのペンネームで書いている。

恋人に捨てられ、小説だけでは食えずに高校生のレポート代行までせざるをえないと、散々なハリーに大きなチャンスが巡ってくる。

ニューヨークを震撼させた連続殺人鬼、ダリアンがハリーに告白本の執筆を依頼したいというのだ。4人の女性を惨殺したダリアンは三ヶ月後に死刑が執行されることが決まっていた。ダリアンは殺害した女性たちの頭部をどこかに隠したが、逮捕後も一切の自供を拒み、三ヶ月後には死刑が執行されることになっていた。ダリアンはポルノライターだった頃のハリーの記事の大ファンで、ハリーがある条件を満たせば、女性たちの頭部の隠し場所も含めた真実を話すという。

条件の醜悪さに一度は依頼を断わろうとするハリーだが、彼をバカにする作家連中を見返すため、つい告白本を執筆することを宣言してしまう。その先に危機が待ち受けているとも知らずに……。

ダメ男のくせに、ハリー、モテすぎやろ!(それも一人は美少女、もう一人は美女!)とか、犯人はハリーが行き来する間にあんなことをする時間があったんやろうか? とか多少のツッコミどころはあるものの、前半の社会派ミステリから一気にサイコスリラーへと展開させる手腕は見事。

最近はミステリといいながら、推理要素がないものも多いが、きちんと推理小説になっていることも評価したい。ヒントはちゃんと提示されます。まぁ、私は分かりませんでしたが(笑)。

ストーリーは合間合間にハリーが書いたB級小説が抜粋されてメタ小説としての一面を見せつつ、さらに物語を書くとはなにかまで斬り込んでいく。

物語が好きなすべての人にオススメしたい作品だ。あ、グロシーンはあるので、そっち方面がダメな人は注意のこと。

Tags: 書評