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2012-02-25(Sat) [長年日記]

_ 『犯罪』(フェルディナント・フォン・シーラッハ)

犯罪(フェルディナント・フォン・シーラッハ/酒寄 進一)

このミスをはじめとする各所のミステリ系の書評で絶賛された一冊。

ドイツの刑事事件専門の弁護士である著者が実際に担当した事件をモチーフにしたという短編が11篇収められている。どの作品も20ページくらいで本当に短くて、全部で200ページちょっと。これで定価が1890円というのは、ちょっと高すぎる気がしないでもない。

まぁ、どの作品もいいんだけどね。

著者自身を投影したらしい弁護士の〈私〉はいちおう出てくるのだが、必要最小限。タイトル通り、犯罪そのものを描くという作風の作品が多い。ドイツらしいというか、弁護士らしいというか、硬質な乾いた文体で事件とそれを引き起こした人々が淡々と描かれていく。

余計なものを一切省いた文体なのだが、その裏から人生の哀しみや不条理が滲み出て、味わい深い余韻を残していく筆致は素晴しくうまい。

お気に入りは、頭の悪そうな不良三人組とちょっと間違った日本人観の「タナタ氏の茶碗」(ついタニタと書きそうになる)、オーヘンリーぽいすれ違いをすごく残酷に描いた「幸運」、猿渡哲也の『高校鉄拳伝タフ』の父ちゃんみたいなオッサンが出てくる「正当防衛」、うるっとくる「エチオピアの男」あたり。

「エチオピアの男」は漫画にするにはいいストーリーじゃないかなーと思ったりした。

Tags: 書評