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2012-02-12(Sun) [長年日記]

_ 『遺体―震災、津波の果てに』──被災地の人々は残された膨大な遺体という大きな問題に向き合ったのか

遺体―震災、津波の果てに(石井 光太)

読んでいる最中、思わず、何度も嗚咽を漏らしてしまった。

東日本大震災発生の翌日に岩手県釜石市に入った著者が、廃校に設けられた遺体安置所を軸に、震災から約3週間の壮絶な日々を描いたノンフィクションが本書だ。

東日本大震災で甚大な被害に見舞われた被災地。津波により廃墟と化した地には莫大な数の遺体が残された。その数、釜石市だけで1100人以上。行政、インフラともに巨大なダメージを受けた被災地の人々は遺体の処遇という大きな問題に直面した。

死者をどこに安置し、どのように身元確認し、どうやって弔うのか──。悲しむ間もなく、日々増えつづける遺体に関わり奔走した人々の体験を著者は丹念に描き出している。

遺体にはどうしてもデリケートなものがつきまとう。死者の尊厳を守りたいという気持ちの一方で、遺体を恐れる気持ちが我々にはあるからだ。

ましてや震災で残された遺体は大きく損傷していることが珍しくない。海で見つかった遺体は、場合によっては一目では性別さえ分からない状態であるという。著者は決してきれいごとでは済まない遺体にまつわる出来事を直視する。

本書に登場する医師や歯科医、市職員、消防団員、民生委員、葬儀社社員、僧侶といった人々は、様々な状態の遺体に向き合いながら「死者を家族のもとに帰したい」「弔ってやりたい」という気持ちで、ひたすら不眠不休の活動に従事するのである。自分が彼らと同じ立場だったら、ここまで出来るだろうかと考えずにはいられなかった。

本書からは死者への哀悼と遺された家族の慟哭とともに、人間が持つ勇気や優しさというものが立ち上がってくる。

2011年3月11日のあの日から、もうすぐ1年。

被災地から遠く離れた地に住み、また縁者もかの地にいないと、どうしても過去のことと忘れてしまいそうになるが、被災者の負った傷跡は深く、簡単に癒えることはない。そのことを忘れないためにも読んでおくべき一冊だ。

Tags: 書評
本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
_ (2012-02-26(Sun) 21:13)

1つ前のエントリからの流れが……

_ poppen (2012-02-26(Sun) 21:17)

あー……