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2012-01-28(Sat) [長年日記]

_ 『公安は誰をマークしているか』──コンパクトに公安警察の実態とそれが追うものを描き出した一冊。捜査手法の是非を判断する材料としてもオススメ

公安は誰をマークしているか (新潮新書)(大島 真生)

新書を見れば『○○は○○なのか」というタイトルのものばかりで、Amazonには「タイトルと内容があっていない」というレビューが溢れている昨今だが、本書は例外。

タイトルの通り、ごく普通の一般人からはいったい何をやっているのか分からない公安警察について、産経新聞記者が解説した一冊だ。

公安警察とは「日本という国家の体制を脅かす組織の取り締まり」を行なう警察のこと。公安警察には各道府県警察や警察署の公安担当も含まれる訳だが、なんといっても自他ともに認める最強の実働部隊、警視庁公安部がその筆頭となる。

本書では警視庁公安部のうち、主に次の8組織を取り上げている。それぞれの調査対象をざっとまとめておこう。

  • 公安総務課:日本共産党、オウム真理教、統一教会、グリーンピースなどの過激な環境保護団体など
  • 公安一課:過激派
  • 公安二課:過激派革マル派
  • 公安三課:右翼
  • 外事一課:アジア以外の外国スパイ組織(ロシア中心)
  • 外事二課:アジアの外国スパイ組織(北朝鮮工作員など)
  • 外事三課:国際テロ組織(米同時多発テロを受けて発足)
  • 公安機動捜査隊:特殊鑑識活動

ここに公安部と同じく公安を冠する別組織、公安調査庁を加えた9組織の実態と何を追っているのか、そして各組織が関わった事件が描かれている。

警察という組織は、軍隊(まぁ、普通の企業でも同じだろう)と同様に、トップから流れてきた指令が滝のように上位部署を次々に経由して最終的な実働部署に届くものと思っていたが、ことに公安についてはそうではないそうだ。

各警察署の公安担当には、道府県警本部長や署長をスキップして、公安部からダイレクトに指令が飛ぶとのこと。そこには解体された旧特高警察の流れがあるという。本書には、無断で部下を手足のように使われた署長が公安部に抗議したということも書かれている。

本書を読んで感じたのは、公安警察も時代の流れには勝てないということだ。

公安総務課のメインの調査対象は、過去に暴力革命路線と取っていた日本共産党だが、今でも共産党が暴力革命を起こすなどと考えている人間はほとんどいないだろう。

公安一課、二課が担当する過激派にしても高齢化により、ほとんど解散状態になっているといっていい。

公安総務課が調査対象をグリーンピースやシーシェパード、さらに政界やマスコミ、経済界などに広げているという動きには組織存続の思惑が見え、若干の危惧を覚える。

右翼団体を監視する公安三課が、ネット右翼の台頭に頭を悩ませているという記述も興味深かった。

全体的に公安部について肯定的なトーンの本書だが、麻生邸見学ツアー逮捕事件のような「やりすぎ」と思える面も指摘していて、バランスが取れているといっていいだろう。

いずれにせよ、著者が指摘するように民主主義の日本において、警察の捜査手法の是非を判断するのは有権者である我々、国民である。そのための判断材料を得るという意味において、公安警察の実態をコンパクトにまとめた本書は読む価値ある一冊だ。

まぁ、本来であるならば、警察が情報開示すべきなのかもしれないが。

Tags: 書評