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2012-01-15(Sun) [長年日記]

_ 『「盗まれた世界の名画」美術館』──盗まれた美術品たちとそれらにまつわるエピソードを紹介する一冊。ピカソの作品だけで500点以上が盗まれている!

「盗まれた世界の名画」美術館(サイモン・フープト/内藤 憲吾)

フィクションの世界では美術品は泥棒の獲物として大人気だ。たとえば、ルパン三世のエピソードで美術品が絡むものを挙げれば、かなりの数になるのではないだろうか。

映画やアニメ、マンガでは、盗まれた美術品は泥棒たちの私的な美術館に飾られたり、そこに隠されたさらなる財宝の鍵になったりする訳だが、現実の世界では違う。ほとんどの泥棒たちは美術品を売るために盗むのだ。

地下経済で売買されるものの中でも、盗まれた美術品は麻薬、武器に次いで第3位の規模になるという。その額、年間15億から60億ドル。これまでで10万点以上の絵画や彫刻が盗まれ、闇のマーケットに消えたと考えられている。

ちなみにピカソの作品だけで500点以上が盗まれているそうだ。

本書はそんな盗まれた美術品たちとそれらにまつわるエピソードを紹介する一冊。

オークションの発達が美術品の高額化をまねき、ひいては美術品盗難を頻発させる要因となった指摘からはじまり、戦時下に国家によって行なわれた美術品略奪、盗まれた美術品の歴史、行方不明の美術品を探す者たち、そして盗まれ闇に消えた美術品のガイドという構成になっている。

ヒトラーが占領地から美術品を略奪したというエピソードは有名だが、それがナチスの美術館に飾るためだったというのは、ほとんどの泥棒たちが売ることを目的にしていたことと比較すると面白い。まぁ、泥棒であることに違いはないが。

盗まれながらも幸運にも戻ってきた美術品も紹介されているが、盗んだ者たちが美術品の扱い方を知らず、傷ついたり、酷い場合には永遠に失われてしまったというケースも多く心が傷む。

テーマがテーマだけに仕方のないことではあるのだが、全体的に盗難美術市場の闇に光を当てるような深みがなかったのは残念。

また、原文のせいなのか、訳文のせいかのか、意味が分からない文章も散見された。

知らない世界が少し見えたという意味で興味深かったが、ノンフィクションというより、変わった美術作品集的に読む方がいいだろう。

Tags: 書評