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2012-01-14(Sat) [長年日記]
_ [書評][SF]『リヴァイアサン クジラと蒸気機関 』──巨大飛行獣が大空を征き、多脚陸上戦艦が地上を疾駆する異形の第一次世界大戦へようこそ
正直、銀背復活といってもピンとこないかったりするのだが(なにしろ生まれる前のことだし)、本書のような傑作が復活第一弾の狼煙を上げたというのは、とても幸先がいい。
センス・オブ・ワンダーあり、血湧き肉踊る冒険あり、ボーイ・ミーツ・ガールあり(しかも少女は男装!)と何拍子も揃った逸品である。
時は1914年。オーストラリア大公の息子アレックはある夜、突然、臣下によって多脚戦車ウォーカーに乗せられ、住み慣れた城から連れ出される。臣下はアレックに告げる。大公夫妻が暗殺され、アレックの命が狙われていると。
同じ頃、英国では空へ憧れる少女デリンは性別を偽り、海軍航空隊へ志願していた。デリンはひょんなことから英国が誇る巨大水素呼吸獣リヴァイアサンに乗り込むことになる。
風雲急を告げる欧州情勢を舞台に、二人の運命は──というのが冒頭のあらすじ。
第一次世界大戦をモチーフにしている訳だが、本書の素晴しい点は複雑なヨーロッパの情勢をダーウィンによって生み出された生物工学を主体にする〈ダーウィニズム〉と機械工学を主体とする〈クランカー〉という二つのイデオロギーの対立に置き換えていること。
奇抜な歴史改変を行なっているのだが、それでいて地に足が着いた設定になっているのも見事だ。
設定の白眉はタイトルにもなっている巨大飛行獣リヴァイアサンだろう。鯨の遺伝子を改造して生み出されたリヴァイアサンはそれだけでなく、攻撃に使用される矢弾こうもりや駆逐鷹、照明代わりのツチボタル、水素の原料となる蜜を集める蜜蜂、水素漏れを見つける水素探知獣、艦の各部署へ伝言を伝える伝言トカゲといった他の人造獣が組み合わさって構築された巨大な生態系なのである。
そんな魅力的な世界を舞台に、少年、少女がナウシカやラピュタといった宮崎アニメばりの冒険活劇を繰り広げるというのだから、面白くない訳がない!
本書は三部作の開幕篇。今年中に出版が予定されている第二部、第三部が楽しみだ。
巨大飛行獣が大空を征き、多脚陸上戦艦が地上を疾駆する異形の第一次世界大戦へようこそ。
