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2011-12-26(Mon) [長年日記]

_ 『アジャイルサムライ−達人開発者への道−』──アジャイルな開発に興味をちょっとでも持っている人であれば、読む価値が絶対にある一冊

アジャイルサムライ−達人開発者への道−(Jonathan Rasmusson/西村 直人/角谷 信太郎/近藤 修平/角掛 拓未)

夏くらいに話題になった本だが、今までアジャイルソフトウェア開発関連の本を読んでも、それほどしっくりくることがなく、スルーしてしまっていた。

最近になって「読むべき」とオススメされたので、手に取ってみたら、本当に素晴しい内容で「もっと早く読むんだった!」と心から後悔した。

本書はアジャイル開発を行なうためのチームづくりにはじまり、計画策定、プロジェクト運営、そして実際の開発までカバーしている。これ一冊でアジャイル開発の極意を学べてしまうといっても過言ではない。誇張抜きで、アジャイルな開発に興味をちょっとでも持っている人であれば、読む価値が絶対にあるといえる本だ。

なぜ、これまでアジャイル本を読んでも感銘を受けなかったかといえば、そもそもアジャイル開発の目的がぴんとこなかったことにある。

ドキュメントを書かない? → プログラマが楽するため? → それとも一刻も早くリリースすすため? → クライアントはドキュメントがなくて納得するのか?

という感じで、今になってみれば、トンチンカンなことを考えていたりした。

本書が掲げるアジャイル開発の目的は明確だ。第1章はこんな言葉から始まっている。

お客さんにとって価値ある成果を毎週必ず届けたいと思ったら、どうすればいいだろう?

この一文を読んで目からウロコが落ちた。そう、当たり前なことだが、アジャイル開発はクライアントのためのものなのだ!

たとえば、2ヶ月で納品するシステムがあるとする。クライアントにとって、50日目で初めてそのシステムを見せてもらうよりも、毎週、実装された機能を見せてもらう方が安心できるに違いない。その際に意見を開発者にフィードバックすることもできるだろう。

「定期的にクライアントに成果を見せる」という目的に集中し、その目的を達成する上で関係ないもの──たとえば、誰も読むことのないドキュメント書き──を捨てる、ということなのだ。目的に特化しつづけるためには、約束を守りつづけ、クライアントとの間で「信頼貯金」をする必要があると著者のラスマセンは書いている。

クライアントの信頼がなければ、アジャイル開発ができないというのは、とても重要な指摘だと思う。

これだけ濃い内容でありながら、絵やマスター・センセイとの対話といったショートエピソードがふんだんに入って読みやすい上に、ページ数も300程度と、2時間もあれば読めてしまうボリュームに収まっているというのは特筆に値する。

「価値ある成果を毎週必ず届ける」と一言でいっても、それは決して楽な道ではないが、本書は開発者たちのやる気を鼓舞する言葉で締められている。

・毎週、価値ある成果を届けられているか?

・たゆまぬ改善のための努力を惜しまず続けているか?

この2つの問いへの答えが「イエス」なら、君はアジャイルだ。

最後になるが、先日、本書で紹介されているポイントの見積り法を使ってみたのでちょっとだけ書いておきたい。

実際に使ってみて、非プログラマな同僚も理解できる優れた見積り方法だと感じた。この手法はソフトウェア開発だけでなく、様々な分野で応用できるのではないかと思う。たとえざっくりであっても根拠のある見積りというのは、自信をもって出せるものだ。

強く一読をオススメしたい。

電子書籍もあるよ

本よりもちょっと500円ちょっと安いPDF版もあるので、電子書籍を読むためのガジェットを持っている人にはオススメ。

Tags: 書評