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2011-12-24(Sat) [長年日記]

_ 『契約』──圧倒的なスピード感でぐんぐんストーリーが加速するスウェーデンミステリ・シリーズ第2弾

契約〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)(ラーシュ・ケプレル/Lars Kepler/ヘレンハルメ美穂) 契約〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)(ラーシュ・ケプレル/Lars Kepler/ヘレンハルメ美穂)

超弩級の面白さだった『催眠』(書評はこちら)につづく、スウェーデンミステリ・シリーズ第2弾。

前巻で圧倒的な存在感を示したヨーナ・リンナ警部が武器輸出の闇に蠢く悪に立ち向かう。

24歳の若き平和活動家、ペネロペ・フェルナンデスは恋人と週末を過ごすため、クルーザーでストックホルム沖の群島に向かった。しかし、翌日、そのクルーザーは漂流している状況で発見される。クルーザーのベットでは若い女性が死んでいた。服が濡れた形跡がないにも関わらず、死因は水死。

時を同じくして、スウェーデンの武器輸出を監督する戦略製品査察庁長官、カール・パルムクローナが自宅で首吊り死体となって発見される。

一見関係ないかに見えた2つの事件だが、捜査にあたったヨーナは意外な接点を見出す──。

前巻を上回る圧倒的なスピード感でぐんぐんストーリーが加速し、読み手にページを繰る手を止めさせない筆力はさすが。ヨーナをも超える戦闘能力を持つターミネーターばりの殺し屋との戦いも非常に読ませる。

ただ、その一方で、少々大味になったきらいがなきにしもあらずといったところ。

『催眠』ではアクションと人間ドラマが高いレベルでバランスが取れていたのだが、本書ではアクションの比重が高くなりすぎて、その分、人間ドラマが手薄になったような印象を受ける。

前巻の主人公は催眠療法を手掛ける医師で、あくまでもヨーナは副主人公的な扱いだった。事件の背景として語られる医師とその家族のエピソードがストーリーの軸にあった訳だが、本書ではヨーナが完全に主人公で、ペネロペやパルムクローナ後任の戦略製品査察庁長官、アクセル・リーセンは物語の重要な人物でこそあるものの、副主人公といえるほどではない。

特にペネロペについては、かなりのページが割かれているにもかかわらず、展開が進むにつれ存在感が薄くなっていってしまう点は、どうにも尻すぼみな感を受ける。

物語の中でヨーナの秘密の一端が明かされるが、足りない人間ドラマ要素を埋めるほどの分量でないことも遠因だろう。

期待が大きすぎたせいか、個人的には少し残念な読後感だったが、ミステリとしては充分、及第点の面白さであることは間違いないので、安心して手に取っていただきたい。

シリーズは8部作になるとのこと。第3部を楽しみに待ちたい。

Tags: 書評