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2011-12-18(Sun) [長年日記]

_ 『機龍警察 自爆条項』──パワードスーツが実用化された至近未来を舞台にした警察小説第二弾。これは日本SF、警察小説の大きな収穫だ

機龍警察 自爆条項  (ハヤカワ・ミステリワールド)(月村 了衛)

軍用有人兵器・機甲兵装と呼ばれるパワードスーツが実用化され、テロ事件にも使用されるようになった至近未来を舞台に、事件に立ち向かう警察官たちの姿をリアルな筆致で描いたシリーズ第2弾。

前巻の書評の最後を「ぜひとも続編を希望したい」なんて言葉で締めくくったものの、「続編は出ないだろうなぁ」なんて密かに思っていたら、なんと続編が登場した! しかも文庫から単行本へ装いもアップグレードという嬉しいサプライズつき!

その分、単価が高くなっちゃったので、財布のダメージも大きくなった訳だが、中身もその価格分を大きく超えてアップグレードしているので、ご安心を。読み手に深い満足感を与える傑作に仕上がっている。

横浜港で乱射事件が発生するシーンから物語は始まる。多数の警察官や民間人が犠牲となり、犯人も自殺した事件の背景には機甲兵装の密輸があった。横浜の他にも、同じ犯人グループによって多数の機甲兵装が既に日本に密輸されていることを掴んだ警視庁特捜部は捜査に乗り出す。だが、上層部から不可解な中止命令が……。

特捜部・沖津部長は上層部からの横槍をかわすため、表向きは捜査員を引き上げつつ、龍機兵パイロットの三人に捜査を密かに続行させる。捜査の結果、浮かび上がったのはアイルランドの一大テロ組織。奇しくも龍機兵パイロットのひとり、ライザ・ラードナー警部が過去に所属した組織だった──。

ストーリーは現在の東京と過去のロンドンやベルファストが交互に語られることによって重層的に展開していく。

アイルランド問題を背景に、普通の少女だったライザがテロ組織に身を投じ、凄腕の暗殺者として恐れられるまでになったものの、組織を離脱、一転裏切り者として追われることになった経緯が丁寧に描かれる過去パート。

特捜部と公安部、外務省の三つ巴の権力闘争、東京をチェス盤に見立てて進行する沖津とテロ組織の指導者〈詩人〉との頭脳戦、機甲兵装同士の激戦と多くの要素がみっちりと描かれてる現代パート。

どちらのパートのレベルも非常に高く、読者のページを繰る手を止めさせない。張り巡らされた伏線の回収で見せる手腕も見事だ。

日本SF、警察小説の大きな収穫といっていいだろう。前巻が未読な向きには、前巻から読むだけの価値はあると太鼓判を捺しておきたい。

続刊が楽しみなシリーズがまた増えた。

Tags: 書評 SF