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2011-12-08(Thu) [長年日記]

_ 『ダイナミックフィギュア』──第32回日本SF大賞候補作。緻密な設定が彩るミリタリー巨大ロボットSF

ダイナミックフィギュア〈上〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)(三島 浩司/加藤 直之) ダイナミックフィギュア〈下〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)(三島 浩司/加藤 直之)

読みそびれていたのだが、第32回日本SF大賞の候補になったということで手にとってみた。

太陽系外から突如飛来した異星生命体。渡来体「カラス」と命名された、その存在はSTPFと呼ばれるリングを地球軌道に建設しはじめた。STPFは地球上の生物に「究極的忌避感」と呼ばれるようになる強烈な肉体的・精神的な苦痛をもたらす作用があった。だが、STPFが完成する前に、カラスを追うようにして別の渡来体が飛来、カラスを撃退する。しかし、その戦闘でSTPFの一部が四国・剣山に落下。四国の南部は究極的忌避感に覆われた生物が存在することのできない地と化した。

さらに落下したSTPFからは「キッカイ」と呼ばれることになる謎の生命体が出現。日本政府は四国から北上しようとするキッカイを殲滅するため、人型特別攻撃機「ダイナミックフィギュア」を建造する。ダイナミックフィギュアのパイロットに選ばれた若者たちの運命は──。

主人公とヒロインの関係を軸に、キッカイとの激戦、各国政府の思惑、そしてファーストコンタクトを描いた野心作。

いうなれば、エヴァンゲリオン+ガンパレードマーチな一作なのだが。だが、もちろん、それだけではない。ミリタリー・ロボットアニメ的なストーリーにできるかぎりのリアリティを持たすため、非常に緻密な設定が背景に組んである。

キッカイとの戦いに様々な制約をつけられていることもそうだ。

たとえば、キッカイは死ぬ時に仲間たちに自分が学んだ「概念」を伝播する。それを防ぐため「走馬灯」と呼ばれる情報を蓄積した部位を破壊した上で、倒さなくてはならない。そうしなければ、繰替えされる人類との戦闘でどんどん進化してしまうのだ。

その延長線上として、キッカイには「翼」と呼ばれる概念を与えてはならない、という制約もある。もし、キッカイが翼を持ってしまえば、自由に四国から拡散してしまう。翼を与えないために、戦闘には航空機は使わず、空を飛ぶものは飛行船のみ。戦車の滑空砲弾には翼があるため、わざわざライフル砲に換装されている。

さらに、STPFは日本の上を日に2回通過する。その間に与えられる究極的忌避感のために「ダルタイプ」という人間以外は、13分間のあいだ活動することができなくなる。

究極の兵器であるダイナミックフィギュア自体も、日本の周辺国に警戒心を抱かせていて、周辺国によって構成された会議の許可が下されなければ、ダイナミックフィギュアは出撃できないという政治的な制約もある。

ただ、設定が緻密な上、ストーリーも詰め込み過ぎな感がある。二段組み800ページ余という、かなり長い作品なのだが、しかし、それでも消化不良気味だ。

もう少し刈り込んだ方がもう少しまとまったりが出たのではないか、というのが正直な感想。非常に惜しい作品だ。

Tags: SF 書評