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2011-10-22(Sat) [長年日記]

_ 2010年刊日本SF傑作選『結晶銀河』を読んだ

結晶銀河 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)(大森 望/日下 三蔵)

2010年度に発表された日本SF短編の中から大森望・日下三蔵が選んだ13篇(マンガ1本を含む)に、第2回創元SF短編受賞作 「皆勤の徒」を加えたアンソロジー。

今回はガチSFばかりで、SF者には非常に嬉しい一冊になっている。とはいえ、SFという要素がこれだけ拡散している時代なので、SF者じゃない人でも、たぶん楽しめるんじゃないでしょうか。分からんけど。

一押しは谷甲州による宇宙土木SF「メデューサ複合体」。木星大気に建造中の複合体で起きた異変を調査するため単身赴いた技術者を主人公にした一作だが、ハードSFであると同時に、技術者の矜持というものを地味な抑えた筆で描き出している。20年以上前に、〈小説奇想天外〉に同様の系列の宇宙土木SF作品が3篇掲載されてそうだが、その続きという位置づけになるそうだ。ぜひ、本作と合わせて一冊の単行本として読みたい。

二押しは第2回創元SF短編賞受賞作、酉島伝法 の「皆勤の徒」。どことも知れない異形の星の泥海に浮かぶ職場で酷使される労働者を描いている。と書いても、作品の説明に全然なっていないのだが、とにかく読んでもらうしかないとしか言いようのない一篇。とてもつもなくグロテスクで、とてつもなく魅力的な世界観とだけ書いておく。作者自身によるイラストも必見。創元SF短編賞から、今後が楽しみな才能がまた発見された。

三押しは伴名練によるゼロ年代の日本SF評論「ゼロ年代の臨界点」。ゼロ年代といっても、2000年代のことではなく、架空の歴史における1900年代の日本SF概況を描いている評論風のSFだったりする。日本SFの創始者たちが女学生たちだったというのには笑ってしまった。続編に期待。

月村了衛の「機龍警察 家宅」は、戦闘用パワードスーツが犯罪に使われるようになった世界を舞台にした警察小説シリーズの番外編。どう見てもSFではないのでベストスリーには入れなかったが、ミステリとしては秀作なので番外としておく。

クオリティの高い一冊だと思うのだが、ちょっと苦言を呈したい部分もある。というのも、収録作のうちの2作が大森望が編者を務める〈NOVA〉シリーズから選ばれているのだ。まぁ、SFマガジン以外に、SF短編を掲載する雑誌媒体がなくなっているというものをあるとは思うのだが、読者のかなりの部分が重なることを容易に想像できるのだから、できれば配慮して欲しかった。お金を払っている人へのサービスは必要ですよ。

Tags: 書評 SF