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2011-09-04(Sun) [長年日記]

_ いきなり怪獣映画のような完全に作者の趣味な展開にw 世界観が魅力的なハードSF長編──書評『天獄と地国』

天獄と地国  (ハヤカワ文庫JA)(小林 泰三)

小林泰三によるハードSF長編。

ほぼ冒頭部分が短編「天獄と地国」(『海を見る人』所収)を読んでから、続きが書かれているのを待っていた作品。といいつつ、実はSFマガジンに連載されていた時には、なんとなく「まとまってから読めばいいや」ということでスルーしてしまっていたw

30ページくらいでネタバレされているので書いてしまうと、巨大なダイソン球の外側が舞台になっている。ダイソン球は高速で回転していて遠心力を発生させているため、様々な資源はどんどん宇宙に飛び出していってしまう。住人たちは飛ばされないように地面に貼り付いた「村」を建設して、その中で乏しい資源をやりくりして貧しい生活を送っている。村に住めない者は、村を襲って資源を奪う「空賊」となるか、空賊の襲撃後のとりこぼしを探す「落穂拾い」になるしかない。

頭の上には地面があって、足元には茫漠たる宇宙があるという、高所恐怖症の人間だったら発狂してしまうような世界なんですな。物語はカムロギ率いる落穂拾いチームがある村の跡地を訪れたところから始まる。

村に残されたコンピュータには、かつて人々は地面に足を着け生活していたという伝説が残っていた。伝説を信じるメンバー、カリティはひとり、村の周辺の探索に出掛け、事故に巻き込まれる。事故の跡地から現われたのは巨大なメカだった──。

というのが本書の冒頭部分で、ついでに書くと短編版「天獄と地国」のラスト。で、これからどうなるんだとわくわくしながら読みはじめたら、急に怪獣映画のような完全に作者の趣味な展開にw いや、これはこれで面白いんだけど。

終盤がちょっと急ぎ足な面もあるのだが、独特の世界観がとても魅力的で楽しめた。どうやら続きも出そうなので、首を長くして待ちたいと思う。

ちなみに本書のラストはスティーヴン・バクスターの『タイム・シップ』にあったシーンのオマージュかと思ったんだけど、どんなもんでしょ。

タイム・シップ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)
スティーヴン バクスター/Stephen Baxter/中原 尚哉
早川書房
¥ 840

タイム・シップ〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)
スティーヴン バクスター/Stephen Baxter/中原 尚哉
早川書房
¥ 714

Tags: 書評 SF