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2011-08-28(Sun) [長年日記]

_ 2009年度・年刊日本SF傑作選。SF者にかぎらず、面白い小説を読みたい人にオススメできる一冊──書評『量子回廊』

量子回廊 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)(田中 哲弥/大森 望/日下 三蔵)

大森望・日下三蔵編による2009年度・年刊日本SF傑作選。既に2010年度SF傑作選『結晶銀河』で出ていたりするのだが、いまさら読了した。

今回の収録作は全18本。ガチのSFはもちろんのこと、ホラーあり、お笑いあり、漫画ありと、あいかわらずバラエティに富んでいる。

個人的なイチオシは、谷甲州の宇宙艦隊SF「星魂転生」。初出のSFマガジン掲載時を含めて、たぶん、3回(2回かも)読んでいると思うのだが、やはり面白かった。1万光年単位の超長距離射撃なんていう大ネタを扱いながらも、語り口は谷甲州らしく、実に地味w

ニオシは、大学の生物学研究室を舞台にした松崎有里の第1回創元SF短編賞受賞作「あがり」。「アマチュア作品かー。あんまり面白くないんじゃないかなー」なんて失礼なことを思いながら読み始めたのだが、とてもレベルが高く楽しめた。バカSFなネタと生真面目な語り口との乖離がいい味を出している。私自身は文系なので、理系の研究室というところに足を踏み入れたことがない訳だが、そういう部外者にも理系研究室の雰囲気がよく伝わってきる筆致は見事。第2の瀬名秀明の出現かもしれない。期待したい新星だ。

サンオシは、上田早夕里の「夢見る葦笛」。SFというよりはホラーだが、こちらも面白かった。『魚舟・獣舟』や『華竜の宮』を読んだ時にも感じたことだが、上田早夕里はモンスターを描くのがとても上手い。歌うイソギンチャク、「イソア」のぞっとしつつも魅力的な描写を味わえる作品になっている。

日本SF界を代表する2人の編者によるものなので、今回も非常にバランスのとれた作品集になっている。SF者にかぎらず、面白い小説を読みたい人にオススメできる一冊だ。

結晶銀河 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)
大森 望/日下 三蔵
東京創元社
¥ 1,155

Tags: 書評 SF