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2011-08-23(Tue) [長年日記]

_ エログロに、汚物とダジャレまみれの怪作・宇宙戦争SFの第1部。真面目な人は読んじゃダメ──書評『罪火大戦ジャン・ゴーレ』

罪火大戦ジャン・ゴーレ 1 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)(田中 啓文)

エログロに、汚物とダジャレまみれの怪作・宇宙戦争SFの第1部。

作者自身もあとがきで書いているけど、SFマガジンに連載されていた時は、本当にむちゃくちゃで「これを単行本にするのムリなんじゃないだろうか」と思っていたのだが、きちんと一冊にまとまった(第1部だけど)。

書籍化するにあたって3回も全面改稿したらしいが、それもむべなるかな。SFマガジンに載せていた時には、つじつまが合わなくなって「前回掲載分の○ページから○ページまでを、以下の○ページから○ページまで差し替えてください」という、すごい技が使われていたしw

舞台は、有史以来の死者が復活する「復活の日」を迎えた西暦2217年。総人口600億となった人類を少しでも減らすため、人々は〈魂抽出装置〉により、ひとつの身体に複数の魂が寄宿することを強制されている。それでも生活空間が足りず、ほとんどの人々は窓もドアもないワンルームで一生を過ごすという、すさまじいまでのディストピア状態。

自由を求める桃屋ピンクは、殺人事件の容疑者となったことをきっかけに、住居を脱出。追われる彼女が逃げ込んだのは、宇宙軍だった──というのが冒頭のあらすじ。

色々な意味ですごい本なのだが、主人公のピンクからしてすごい。

カバーイラストから推測するに、ピンクはいちおう美少女という設定だと思うのだが、いきなり肥満体の中年女性*1の寄宿者として登場する。そんなピンクがトイレで用を足したり、オンライン風俗のアルバイトをするシーンが描かれていたりして「いったい、これ誰得なの?」とツッコミを入れざるをえなかったりするw

少しネタバレしてしまえば、少なくとも第一部ではピンク本来の身体は一度も登場しない。その代わりのサービス(?)なのか、美少女ジャンヌ・ダルクとの濡れ場があったりするんだけど。

ピンクがワンルームを脱出するくだりもすごくて、ずっと汚物まみれ。その手が苦手な人は読んでるだけで食欲がなくなること請け合いだ。

話の筋とはあまり関係ない詳細な麻雀対決が描かれていたり、藤子不二雄作品からパクったキャラがわんさか出てきたり、新兵器〈老魔砲O〉(もちろんダジャレ)が全然役に立っていなかったり、だいたいタイトルにもなっているジャン・ゴーレ自体がそんなにストーリーに関係なくね? って感じだったりと、その他にもツッコミどころ満載。

どう贔屓目に見ても、めちゃくちゃな話なんだけど、ぐいぐい読ませる筆力はさすがで、一気に読んでしまった。まぁ、読む人によっては途中で投げちゃうかもしれないけど。

ちなみに、実はキリスト教をモチーフにしたストーリーでもあるので、『キリストのクローン/真実』を読んだ後だと、その落差がおかしかった。

真面目な人には絶対オススメできない一作。ワイドスクリーンバロックになるらしいので、個人的には第2部以降の出版を期待したいけど、本当に出るんだろうかw

Tags: 書評 SF

*1 なんと額田王w