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2011-08-16(Tue) [長年日記]

_ 黙示録的災厄に襲われた地球とMMRばりのトンデモ演説が炸裂するシリーズ第2弾──『キリストのクローン/真実』書評

キリストのクローン/真実 (創元推理文庫)(ジェイムズ・ボーセニュー/田辺 千幸)

『キリストのクローン/新生』につづく、〈キリストのクローン〉三部作の第2弾である。

トリノにあるキリストの聖骸布から採取された遺伝子より作られたクローン、クリストファー・グッドマン。地球規模で起きた謎の大量突然死、そして頻発するテロや戦争といった混迷を深める世界の中で、国連の外交官となったクリストファーが世界を救うべく奮闘し、国連に巣喰う邪悪な人物と対峙することによって、遂に救世主としての力に目覚める、というところまでを描いたのが前作。

これから救済がはじまるのか、というのが前作の読者の大半が思ったことだろうが、作者、ジェイムズ・ボーセニューは、そんな想像を大きく超えた物語を出してきた。ボーセニューが提示するのは「ヨハネの黙示録」の内容をそのまま現代に出現させることだ。

前作のラストから数ヶ月後、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの女子大学院が地球に近づいているように見える三つの点を偶然見つける。それらは地球に接近しつつある小惑星だった。突如、出現したように見える三つの小惑星は、シミュレーションの結果から、先の二つが地球を掠め、三つ目が地球への衝突コースを描いていることが判明する。クリストファーが属する国連は、各国の核ミサイルを結集し、2031KFと名付けられた三つ目の小惑星を破壊することを決定するが──。

本書の実に2/3は地球を襲う黙示録を描くために費やされている。地球規模の大災厄を、世界各地の人々のミクロ的な視点を交じえつつ描いていく作者の筆致は見事で、そんじょそこらの終末をテーマにした映画を超えるデキのよさ。夢中になって読んでしまうこと確実だ。黙示録的な世界を描いた面白さという点では、ゾンビに席巻された世界を舞台にした『WORLD WAR Z』に匹敵するといってもいいかもしれない。

そして、残り1/3はクリストファーの演説となっている。「本当の敵」とは誰なのか。正直なところ、山田正紀という偉大なSF作家を持つ日本人にとっては「ふーん」という感じだろうが、キリスト教圏では、とてもヤバい内容であるのだろう。だからこそ、前作からつづく冒頭の「著者からの大切なお知らせ」があった訳だ(というか、これだけでネタバレになっちゃいますね)。

その演説の過程で、フリーメイソンやブラヴァッキー夫人からはじまって、サイエントロジー、占星術、『かもめのジョナサン』、スター・トレック、スターウォーズ、エドガー・ケイシー、ローマクラブといったニューエイジやトンデモやSFやらなんやらかんやらを2ページ近くに渡って列挙、全部一緒くたにして、「全部、実は本当の敵に対抗するためだったんだよ!」という感じブチ上げる訳だが、これがまるで『MMR』シリーズのキバヤシ。

ΩΩΩ<ナ、ナンダッテ-

とか思わず、呟きたくなった人は多いに違いないw

正直なところ、ここらへんは、と学会本の読者であれば、かなりの違和感を感じる部分だと思うが、ストーリー自体はなかなか読ませる。トンデモ嫌いな人でも楽しめるのではないだろうか。

解説によれば、シリーズのラストになる第3弾では、さらに驚きの展開が待っているらしい。期待できそうだ。

Tags: SF 書評