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2011-06-04(Sat) [長年日記]

_ 辺境惑星の大森林地帯を舞台に繰り広げられるマンハントSF『ハンターズ・ラン』を読んだ

ハンターズ・ラン (ハヤカワ文庫SF)(ジョージ・R・R・マーティン/ガードナー・ドゾワ/ダニエル・エイブラハム/Stephan Martiniere/酒井昭伸)

読みながら「SF版『山猫の夏』だ!」と、ドヤ顔でtwitterにポストしてしまった。

『山猫の夏』といえば、船戸与一による冒険小説の傑作だが、違う土壌にありながらも、本書と『山猫の夏』の底に流れるものは、同じものといっていい。

本書の舞台となるのは植民地惑星、サン・パウロ。主にラテン・アメリカ系の地球人たちが移住したこの辺境の惑星は、決して住みやすい場所ではないのだが、宇宙進出に出遅れた人類には、こんな星しか残されていなかったのだ。

主人公は探鉱師ラモン。未踏の山脈で未知の異星種族の秘密基地を発見してしまったラモンは、捕われの身となり、異星種族から逃れた人間を追うよう命令される。同じ人間のラモンであれば、行動や思考を読み、追跡できるのではないかというのだ。ラモンは異星種族のハンターと肉の紐で繋がれ、文字通り、猟犬に仕立てられてしまう。

逃げている人物は誰なのか。なぜ異星種族たちはその人物を追っているのか。謎をはらみつつ、大森林地帯の中でマンハントが繰り広げられていく──。

はっきりいって、主人公のラモンはろくでなしである。異星種族と遭遇することになったきっかけも、喧嘩相手をはずみで殺してしまい、官憲から逃れるためだし、愛人はいるが完全にヒモ状態だ。そんなラモンが冒険の中で徐々に変わっていく過程が読ませる。一種の成長譚になっているのだ。

もちろん、冒険行そのものも素晴しい。ネタバレになるので多くは語れないが、誠に男臭い冒険行が展開されるということだけは保証しておく。

SF読みというよりは、冒険小説好きに強くオススメしたい一冊である。特に冒頭で触れた『山猫の夏』が好きな読み手であれば、確実に気に入るだろう(もちろん本書から『山猫の夏』に進むのもアリだ)。

山猫の夏 【新装版】 (講談社文庫)
船戸 与一
講談社
¥ 990

Tags: 書評 SF