ぽっぺん日記@karashi.org
2011-04-26(Tue) [長年日記]
_ [書評][SF]ポストヒューマンSFアンソロジー『スティーヴ・フィーヴァー』を読んだ
『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』につづいて、SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー『スティーヴ・フィーヴァー』を読んだ。
編者によると「テクノロジーによって変容した人類の姿を描いたSF傑作選」ということなのだが、全般的に『ここがウィネトカ〜』よりも小粒な作品が多かった印象。ポストヒューマンもの自体は好みの部類に入るので、単に肌にあまり合わない作品が多かっただけではないかと思う(ポストヒューマンSFとはいえないかもしれないが、『ブラッド・ミュージック』の変容したアメリカにはゾクゾクしたクチ)。
12篇の収録作の中でのベストはチャールズ・ストロスの「ローグ・ファーム」。現在の人間の姿からかけ離れた存在に変容し、自力で木星まで飛んで行こうとする(!)ファームの設定がいい。昔、SFマガジンで読んだ記憶があるが、やはり面白かった。個人的には、働き者でマリファナ愛好家の犬がお気に入り。:D
二番は、ロバート・J・ソウヤーの「脱ぎ捨てられた男」。意識をデジタル化して義体にコピーする技術が富裕層の間で一般化した世界を舞台に、人間としての権利を捨てた「コピー後」の男が、権利と尊厳を取り戻すために人質事件を起こすというストーリーが、いかにもソウヤーちっくだ。イーガンに比べると、アイデンティティの踏み込みが浅い気がしたが、話自体は楽しめた。
三番目は、グレッグ・イーガンの表題作「スティーヴ・フィーヴァー」。14歳の誕生日を迎えた少年は、突然、アトランタへ行かなければならない熱病のような衝動に駆られはじめる。その背後には世界を変容させたナノテクノロジーが──という内容。イーガンの本邦初訳ものということで、期待して読んだのだが、いまいちピンとこなかったというのが正直な感想。オチは面白かったんだけど。
