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2011-02-14(Mon) [長年日記]

_ 『鈴蘭』──〈探偵・畝原〉シリーズ第9作目。ゴミ屋敷、捨てられるペット、貧困ビジネス。著者の現在の闇を切り取る筆力の高さにつくづく感心させられる一冊だ。

鈴蘭(東 直己)

『旧友は春に帰る』につづいて、もう1冊、東直己作品を読んだ。

東直己による探偵・畝原が語り手としたシリーズも9作目となった。〈ススキノ便利屋〉シリーズが10作目になったと思ったら、こちらのシリーズもいつの間にか、それに迫る勢いになっていた。

本書は去年の刊行前に、出るのはチェックしていたはずなのだが、すっかり忘れていて、今になって手に取った。結果から書くと、東直己ファンであれば、すっかり大満足の一冊だ。

本シリーズの特徴は、畝原が請け負う複数の依頼がモジュラー方式に同時平行で描かれていくこと。今回は畝原はふたつの事件にかかわることになる。

ひとつめは、札幌郊外の山の中のゴミ屋敷に住む初老の男の調査。男と同居していた女性の姿を最近見なくなった──。男の近隣でナチュラル・パークを経営する主人からの依頼を受けて、畝原は男の身辺調査を行なうことになる。

ふたつめは、失踪人探し。高校教師だった男は、妻の死からほどなくして姿を消した。かつて男の教え子だった人物からの依頼により畝原は元教師の足取りを追う。

ゴミ屋敷、捨てられるペット、貧困ビジネス。ふたつの事件から浮かび上がってくるのは、現代の貧困の姿だ。読書の興を削ぐので、詳しくは書かないが、本書を読んで、著者の現在の闇を切り取る筆力の高さにつくづく感心させられた。

物悲しさの残るラストも一級だ。

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