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2010-07-29(Thu) [長年日記]

_ イラン米大使館人質事件の失敗を教訓に創設された特殊部隊、通称「アクティビティ」を扱った貴重なノンフィクション。軍上層部や他の情報機関との確執が大変興味深い一冊 ── 『キラー・エリート 極秘諜報部隊ISA』

キラー・エリート 極秘諜報部隊ISA (集英社文庫)(マイクル・スミス/伏見 威蕃)

1979年のイラン米大使館人質事件の失敗を教訓に創設された特殊部隊、通称「アクティビティ」を扱ったノンフィクションが本書。秘密のベールに包まれていた部隊の活動を明かしている貴重な書といえる一冊だ。

一般に特殊部隊といえば、潜入や襲撃など現場で活動する兵士を想像することが多いが、アクティビティは、そういった特殊部隊が活動する前に、情報を収集・分析し、現場の特殊部隊が活動するための地均しをすることを任務としている。

本書には、これまでアクティビティが行なってきた作戦が数々取り上げられている。

1981年の赤い旅団による米陸軍准将誘拐事件、1983年のベイルート米大使館爆破事件、1980年代末から1990年はじめの南米での麻薬撲滅作戦、1991年の湾岸戦争、映画『ブラックホーク・ダウン』の元となった1993年のソマリアにおけるアイディード派幹部捕縛作戦(作戦自体はご存じのように失敗に終わったが、これはアクティビティのせいではない)、そして、9・11後の活動……。その中でも、本書の白眉は、実態のない目撃証言ばかりから「エルヴィス「というコードネームで呼ばれていたサダム・フセイン元イラク大統領の捕縛だろう。

しかし、本書を読んでいて、アクティビティの戦歴よりも面白く感じるのは、軍上層部や他の情報機関との確執だ。正直なところ、実際の作戦よりも、いわゆる「政治的な戦い」の方がよほど大変そうなのには笑ってしまう。

著者は一貫してアクティビティの視点で書いているので、軍上層部は石頭ぞろいで、CIAをはじめとする情報期間は役立たずぞろいと思ってしまいそうになるが、そこは多少割り引いて読む必要があるだろう。

さらに書けば、それだけ優秀なアクティビティが活動しているのに、なぜ、いまだにイラクでは自爆テロがつづき、アフガニスタンでは泥沼の戦いがつづいているのかという疑問を投げ掛けたくなる。

文句も書いたが、興味深い本であることは間違いない。特殊作戦に興味がある人には強くオススメしておきたい。