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2010-07-26(Mon) [長年日記]

_ ソーシャルメディアの出現によって、人類は次の段階への第一歩を踏み出した(のかもしれない) ── 『つぶやき進化論』

つぶやき進化論 「140字」がGoogleを超える! (East Press Business)(エリック クォルマン/竹村 詠美/原田 卓)

R+から『つぶやき進化論』のPDF原稿を献本していただきました。ありがとうございます。土日をかけて読んだので書評。

TwitterやFacebookといったソーシャルメディアが爆発的に流行している。Twitterのユーザ数は1億を超え、Facebookにいたっては5億を超えたそうだ。『つぶやき進化論』は、ソーシャルメディア先進国であるアメリカにおいてのソーシャルメディアの浸透と、ソーシャルメディアがこれまでの経済のありかたを変えつつある現状を浮き彫りにしている。

ソーシャルメディアの大きな力を見せつけたのは、なんといっても2008年のアメリカ大統領選だろう。TwitterやFacebook、YouTubeといったソーシャルメディアは、民主党のバラク・オバマ候補を大統領に就任させる原動力のひとつになった。オバマ陣営が得た6億6000万ドルもの選挙資金の大半は、5ドルや10ドルといった少額の寄付によるものだという。

そして、2010年。ソーシャルメディアはさらにアメリカ国民に浸透している。スーパーでレジ待ちをする主婦がケータイでFacebookにポストをし、友人から買い物のアドバイスを受け、さらには大学に進学している娘がなにをしているかを知る──。そんな場面は珍しいことではなくなっている。ソーシャルメディアは、若者たちだけのものではなく、文字通り「社会的な(ソーシャル)」メディアになっているのだ。

人と人が繋がっていくソーシャルメディアの力は、さらに社会経済の構造さえ変えていく。ムダな広告や仲介業者は排除され、商品やサービスの価値は、企業が作るイメージ戦略ではなく、親しいユーザーによるクチコミによって評価される。著者は、そのような経済をふつうの人が主役の「みんなの経済」=ソーシャルノミクスと名付け、これからの企業が新しい経済の形にどう対応すべきかの指針を示している。

TwitterやFacebook、YouTubeは広く使われているものの、本書に登場する他のソーシャルメディアは、日本ではあまり馴染みのないものがほとんどだ(Huluのように日本から使えないものもある)。そのため、日本の状況に、すぐに適用できない事例も多いが、ソーシャルメディアの利用で先を行くアメリカの現状を知ることは決してムダではないだろう。

本書のターゲットは、次のような人々だ。

まず、なんといっても、ソーシャルメディアの未来とそれがもたらすものに興味がある人。アメリカの実情を通して、日本におけるソーシャルメディアの可能性を知ることができるはずだ。

次に、マーケティング担当者。ソーシャルメディアとどのように向き合えばいいかの指針を得ることができるはずだ。

そして、新しくソーシャルメディアを作り出そう、もしくは、自身のサービスをソーシャルメディアに接続しようと考えている開発者。アイデアの種と避けるべき失敗パターンを学ぶことをできるはずだ。

本書を読んで思ったことがある。人には、誰かに自分のことを知ってもらいたい、誰かと繋がっていたいという普遍的な欲求がある。ソーシャルメディアは、そういった欲求を時間と場所を超えて満たし、さらには人間関係の構築を円滑にしてくれるものではないか、ということだ。

卑近な例で恐縮だが、Twitterをはじめとするマイクロブログで知り合った人たちと初めて会う時、いつも、その人たちのつぶやきを見ているせいか、初対面なのにもかかわらず、昔からの知り合いのように、すぐ打ち解けることができる。

そんな事象が世界中で起きているのであれば、それはまさしく「進化」といっていいのではないだろうか。ソーシャルメディアの出現によって、人類は次の段階への第一歩を踏み出したのかもしれない(ちょっと大袈裟すぎるかもしれないが)。