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2010-07-22(Thu) [長年日記]

_ 元SAS隊員が活躍する冒険小説シリーズ開幕篇。既に映画化も決定済み ── 『消えた錬金術師』

消えた錬金術師---レンヌ・ル・シャトーの秘密(スコット・マリアーニ/高野 由美)

『消えた錬金術師』は、イギリスで大人気を博した冒険小説シリーズ開幕篇。元SAS隊員の人捜しのプロフェッショナルが、実在の錬金術師が残した幻の手稿を巡る陰謀に巻き込まれる物語だ。映画化も決定したとのことだが、それも納得のエンターテイメント作品である。

主人公ベン・ホープは、特殊部隊SASでもトップクラスの兵士だった。軍を除隊後は、SASで培った技術を生かし、誘拐された子供を救出するプロとして活動している。プロフェッショナルとしての顔の一方で、ベンはあるトラウマを抱えて、酒に溺れ、毎晩悪夢にうなされる私生活を送っていた。

ある日、ベンの元にひとつの依頼が飛び込む。依頼主は大富豪のフェアファクス。フェアファクスはベンに言う──不治の病かかった孫娘を救うため、ある手稿を捜して欲しいと。1926年に姿を隠した錬金術師フルカネリによって書かれたその手稿には、不老不死の薬の製造方法が記されているというのだ。

話の荒唐無稽さから一度は依頼を断ったベンだが、フェアファクスの孫娘の名前は、ベンの心の傷を強く刺激し、結局、依頼を受けることを承諾する。

フルカネリの情報を得るため、ベンはフランス在住のアメリカ人の女性科学者、ロベルタ・ライダーの元を訪れる。ロベルタは、錬金術を生物学に応用しようとしたため、異端の烙印を押され、大学から放逐されていた。

だが、フルカネリの手稿を探しているのはベンだけではなかった。ベンがロベルタに接触したことを受けて、闇に隠れていた勢力が動き出す。ロベルタが襲われ、またベンの命も狙われる。ベンとロベルタは闇の勢力の魔の手を逃れながら、手稿の行方に追うが……。

元特殊部隊隊員という経歴を持ち、正義のために生きる一方で、心に傷を負ったタフガイ。伝説の錬金術師が残した、不老不死の製造方法が書かれた手稿。手稿を狙う闇の組織。主人公とともに逃げることになる女性科学者。殺人事件の関係者として、主人公たちを追う警察──ハリウッド映画を彷彿とさせるアクション、歴史ミステリー、ロマンスが満載の作品である。ローラーコースターばりのストーリーも読み手を飽きさせず、最初から最後まで楽しませてくれる。このサービス精神は見事。

ただ、一方で、キャラクター造形やストーリー展開があまりにもベタすぎて「どこかで見たような」と感じてしまうことも事実。また、ベンがプロフェッショナルにしては、わりとツメが甘いように見えることも気になる。

だが、まぁ、ここらへんは些事といっていいだろう。冒険小説、アクション映画好きであれば、確実に楽しめる作品に仕上がっている。オススメ。

第二弾も今年の秋に邦訳が出版予定とのことで、今後の展開が楽しみなシリーズだ。

ちなみに、本書の最大の欠点は帯のコピー。

「実在した伝説の錬金術師が残した暗号

歴史の闇からあらわれる謎

飛び交う銃弾

息もつけない面白さ!!」

という謳い文句はあまりにも陳腐。もうちょっと、どうにかならなかったのだろうか。「本の雑誌」には、帯に点数をつける「オビミシュラン」というコーナーがあるけれど、もし、このコピーを出したら、たぶん星0点になってしまいそうな気がする。