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2010-07-21(Wed) [長年日記]

_ 犯人を追うために技を磨きつづける刑事たちの姿を描くノンフィクション ── 『刑事眼』

刑事眼―伝説の刑事の事件簿-(三沢 明彦)

どんな世界にも職人技というものはあるが、刑事の世界にも存在する。『刑事眼』は、現役の新聞記者が、刑事たちへのインタビューと取材を通して、犯人を追うために技を磨きつづける刑事たちの姿と、彼らの持つ熱き魂を浮き彫りにした一冊。

本書に描かれる刑事たちの技には舌を巻く。

泥棒たちが残す様々な「癖」を記憶する手口捜査官。犯行現場から泥棒を特定し、次に泥棒が現れる地域まで予想する姿は、まさに現代のプロファイリングだ。事実、手口捜査という概念があったがために、日本の警察にプロファイリングがすんなり受け入れられたという。

目だけで雑踏の中から指名手配犯を見つける見当たり捜査官は、常に手配写真を眺め、容疑者の顔を脳裏に刻み込んでいる。ベテランになると、何百人もの容疑者の顔を記憶するそうだ。

スリが獲物を狙う一瞬に飛ぶ視線を捕えて現行犯逮捕するモサ(スリ)刑事。スリが飛ばす視線を「眼が落ちる」と刑事たちの間では呼ぶそうだが、「眼が落ちる」を見分けるようになるまで、3年はかかるという。新入りのモサ刑事は「師匠」役の刑事につく。しかし、師匠は手取り足取り教えたりはしない。新入りは、背中について街を歩きながら技を盗み、血が滲むような努力を経て、遂に「真打ち」へと成長していく。

本書からは、刑事が単なる職業ではなく、人生そのものであるという、デカたちの強い想いが立ち上がってくる。

本書のもうひとつの魅力は、デカの宿敵である犯人たちの人生が対比するように描かれていることだ。手口から盗むものまで、個性的な泥棒やスリたち。彼らは何度も逮捕され、その度に悔悛の情を見せながら、足を洗えず、出所と同時に犯行を繰り返す。その末路は悲惨なものだ。

その犯人たちにも少子高齢化の波は押し寄せているらしい。技を駆使して(というとおかしいが)窃盗をする者がどんどん減っているという。

「若いのがねぇ。仕事についてこれないんですよ。張りをやらせても、スイトリやらせても、ちょっと怒鳴ったり、ひっぱたいたりすると次の日から来なくなっちゃう」

という、スリの親分のぼやきが印象に残る。しかし、窃盗が減った訳ではない。強盗やひったくり、かっぱらいなど安易かつ凶暴なものに変化していっているという。

対する刑事もまた少子高齢化とは無縁ではいられない。ある刑事は溜息を漏らす。

「いい泥棒もいなくなったけど、いい刑事も育ったなくなった」

スリ刑事も言う。

「若い人は何時間にも及ぶ尾行に耐えられない。スリ眼が見えるようになるまでには長い時間がかかる。後継者不足に悩むスリの世界も同じだけど、辛抱が足りない」

職人が存在する日本のどの職場とも同じように、警察もまた技の伝承が途絶えてしまう危機にある。そういった技がコンピュータを使った捜査に取って代わられるのは時代の趨勢かもしれない。しかし、修業とは、師匠から弟子への単なる技の伝承ではなく、職人として生きるという決意を学ぶものでもある。日本の治安のためにも、刑事たちの技の伝承が断たれないことを望みたい。

決して派手さはないが、刑事たちの熱き魂に触れられる一冊だ。

_ 友人と焼肉を食べた

小学校時代からの友人と、半年ぶりくらいに焼肉屋で飲み。

高いお肉をご馳走してもらいました。

ありがとうございます!!

Tags: 日常