最新 追記

ぽっぺん日記@karashi.org


2009-08-02(Sun) [長年日記] この日を編集

_ Amazon API認証のPROXYをGoogle App Engine Oilで書いたよ(4)

報告が遅くなりましたが、amazon-auth-proxy仕様の改訂に伴ない、gaeo-amazon-auth-proxyを仕様に準拠させました。

http://github.com/poppen/gaeo-amazon-auth-proxy/tree/master

主な変更は

の実装です。

実装してから2週間も放ったらかしにしてしまいました。 すいません……。


しかし、たださんも書かれているけど、ログを見ていて、過度のフリーライダーが多いことにはびっくりする。

それなりのPVがあるサービスは、自前でアクセスキーを取得するのが筋ではなかろうか。

gaeo-amazon-auth-proxyは、まぁ、ちょっと品質があれにしても、風柳さんのAmazonのProduct Advertising API認証プロキシ(REST版・GAE用)をGAE上で運用すれば、ほぼインフラコスト0で使えるはずなのに。

なんのためにソースが公開されているのか、と疑問に思わざるをえない。

_ 不惑の歳を迎えた主婦探偵ルーシー──授業の開始に爆弾予告 (創元推理文庫)(レスリー・メイヤー/髙田 惠子) 授業の開始に爆弾予告 (創元推理文庫)(レスリー・メイヤー/髙田 惠子)

東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。

メイン州の田舎町ティンカーズコーヴを舞台に、ミステリ好きの主婦ルーシーが活躍するコージーミステリ〈主婦探偵ルーシー・ストーン〉シリーズ第4弾が本書。

前作『ハロウィーンに完璧なカボチャ』から2年を経た秋。 ティンカーズコーヴは、新学年がはじまる9月を迎えていた。 夏休みも終わり、末っ子ゾーイも新設された託児所に預けられるようになったルーシーは、子供たちから久々に解放され、地元紙『ペニーセイヴァー』でパートタイマーとして働きはじめていた。 新学期の初日、警察無線を傍受しながら留守番をしていた彼女の耳に、次女セアラが通うティンカーズコーヴ小学校に爆弾をしかけたとの予告電話があったという通信が飛び込んでくる。 学校に駆け付けたルーシーら親達と避難した子供たちの前で、予告通り爆発が起きる。 だが、爆発の規模は小さかったため、校舎への被害は少なく、けが人も出なかった。 事件で注目を集めたのは、捨て身の活躍で校舎内に取り残された生徒を救った、新任の副校長キャロルだった。 一夜にして町の英雄となったキャロルだが、その名声に反して、同僚や生徒からの評判は悪いものばかり。 事件後の教育委員会の集会で、キャロルが聖書会衆派教会の神父とともに、校長ソフィーを追い落とそうとする動きを見せたことにより、ルーシーの不信感は強まっていく。 学校運営を巡って町を二分する騒ぎの中、殺人事件が発生する。 ルーシーは犯人とした逮捕された知り合いの教師を救うため、独自の捜査を開始するが……。

本書の一番の読みどころは、不惑の歳を迎えたルーシーの心境の変化。

これまで妻として母として、家事や子育てに忙殺された日々を送ってきたルーシーだが、子供たちへの手がかからなくなるとともに、ふと自分の人生を立ち止まって考えるようになる。 これまで楽しみだったはずの夕食づくりや家庭菜園に対する情熱がなくなっていることを実感するのだ。 代わって、ルーシーはティンカーズコーヴの新聞社の仕事に喜びを覚え、新たな人生を模索するため、大学の夜間授業を受講する。 さらには、自らの夫ビルへの愛にも疑問を感じたルーシーは、ハンサムな担当教授へと心惹かれてしまい……と登場人物が作品とともに年齢を重ねていく、コージーミステリならではの楽しみが味わえる。

もちろん、ミステリとしても手抜きはない。 読書の興を削ぐので詳しくは書かないが、ルーシーの調査が進むにつれ、浮き彫りになっていくキャロルの裏の顔と、複雑な人物関係には、コージーミステリという名前から連想されるほど甘々なものはない。 あいかわらず、ルーシーの推理は外れまくっているが、それはご愛嬌(笑)。

ただ、ちょっと気になるのは爆弾騒ぎの真相。 ここだけはツッコミどころが多いように思う。

少々ツッコミたくなるところもあるが、これまでのシリーズが楽しめた人であれば、面白く読めることは請け負っておく。 オススメ。

なお、作中で、いわゆるインテリジェント・デザイン論を唱える聖書原理主義者が登場するのだが、原著の書かれた1997年の時点で、既に問題なるほどの存在だったという点は、個人的に興味深かったことを付記しておく。


授業の開始に爆弾予告

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書評/ミステリ・サスペンス


2009-08-03(Mon) [長年日記] この日を編集

_ gaeo-amazon-auth-proxy-0.0.1リリース

gaeo-amazon-auth-proxyも安定してきたので、不要なファイルを削除して、0.0.1のタグを打ちました。

mattn先生にwassrで教えてもらったのですが、githubではタグを打つと、Downloadsからタグを打ったソースツリーが、tarballとzipがダウンロードできるようになります。 これは便利ですね。

_ アラフォー探偵がナンシー・ドルーのトリビアをたっぷり教えてくれるミステリ──少女探偵の肖像 (創元推理文庫)(スーザン・カンデル/青木 純子) 少女探偵の肖像 (創元推理文庫)(スーザン・カンデル/青木 純子)

東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。

『授業の開始に爆弾予告』と同じく、アラフォー女性が主人公のミステリ。 こちらは主婦探偵ならぬ、伝記作家の素人探偵である。

離婚歴のあるアラフォーの伝記作家シシー・カルーソーが執筆中の作品は、〈少女探偵ナンシー・ドルー〉を生み出した作家キャロリン・キーンに関する評伝だった。 取材の過程で知り合った美術評論家エドガー・エドワーズから、ある絵画を見せられる。 それはナンシー・ドルーの表紙画のモデルとなった女性のヌード肖像画だった。 シシーとすっかり意気投合したエドガーは、執筆中の本の関係でナンシー・ドルー・ファンクラブ総会が開催されるパームスプリングスへ赴くシシーへ、気前よく別荘の鍵を貸してくれる。 親友ラエルとブリジットとともに、パームスプリングスへ向かったシシーだが、彼女を待ち受けていたのは、射殺されたエドガーの死体だった。 エドガーがパトロンとなっていた若い彫刻家は姿をくらまし、また肖像画も行方不明となっていた。 生前、エドガーがシシーに郵送した女性が写った古い写真はなにを意味しているのか。 シシーは独自の捜査に乗り出すが……。

ミステリ専門の伝記作家が探偵役として、往年のミステリ作家が絡んだ事件に挑む〈シシー・カルーソー・ミステリ〉シリーズ第2弾。 前作『E・S・ガードナーへの手紙』同様、シシーがヴィンテージファッションを披露しつつ、往年のミステリ作家のトリビアをたっぷり教えてくれる一冊となっている。

前作では、シシーがペリー・メイスンの生みの親、E・S・ガードナーの足跡を追ううちに、ガードナー自身が扱った冤罪事件に出喰わすというストーリーだったのだが、いかんせんペリー・メイスンをよく知らず、いまいち面白さが分からなかったというのが正直なところ。 しかし、本書のメイン・テーマは〈少女探偵ナンシー・ドルー〉。 同じく創元推理文庫から現在のところ、5冊出されている完訳版を読んだ身としては、非常に楽しめる内容だった。

ナンシー・ドルーの作者、キャロリン・キーンが架空の作家で、実際はストラテマイヤー工房のゴーストライターたちが作者であることは、完訳版の訳者あとがきで知っていたが、ゴーストライターが正体を明かさないという守秘契約を工房と結んでいたというのは本書で初めて知った。 さらに、ナンシー・ドルー初期の代表作を手掛けたゴーストライターの一人で、新聞社のリポーターを勤めていたミルドレッド・ワート・ベンソンの正体が明らかになった経緯など、ナンシー・ドルーを知っている読者には、ヘェーとなる情報が満載である。

私自身もナンシー・ドルーの完璧さは、少々鼻についたりしたのだが、やはり、本国でも気になる人はいるんですな。

逆に言えば、ナンシー・ドルーを知らない読み手には、ちょっと理解できない点もあるとだろうが、それを差し引いても、シシーらアラフォー3人組の軽妙なやりとりは楽しめることと思う。 普段の行動に似合わず、よりを戻した刑事ガンビーノとの関係に臆病になるシシーなども読みどころ。

ラストで明かされる肖像画に隠された思わぬ正体に驚かされることも請け負いである。

本書を楽しむためにも、ナンシー・ドルー・シリーズを一冊だけでも読んでおくことをオススメしたい。 これを機会に、ナンシー・ドルーを読みはじめてみるのもいいのではないだろうか。

関連


少女探偵の肖像

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書評/ミステリ・サスペンス


2009-08-04(Tue) [長年日記] この日を編集

_ MacBookのHDDを換装した

copying now!

愛用の白ポリカMacBookのHDD残量がほとんどなくなり、VMware Fusionにさえ問題が出るようになってしまって仕事にならないので、HDDを大容量のものに換装した。

HDDは会社近くのパーツ屋でゲット。

WESTERN DIGITAL 2.5インチ内蔵HDD Serial-ATA 5400rpm 500GB 8MB WD5000BEVT WESTERN DIGITAL 2.5インチ内蔵HDD Serial-ATA 5400rpm 500GB 8MB WD5000BEVT

WESTERNDIGITAL
¥ 8,790

HDD換装に当たって参考にさせていただいた

と同じWestern Digitalのものにした。 500GBでは一番安かったし(8400円くらい)。

換装作業は上記のリンク先通りやれば、まったく問題なし。

ちなみに、復元を実行してからしばらくは、転送完了予想時間が7時間と出ていてビビったけど、結局、3時間程度で終わった。

新しくなったHDDの残り容量はこんな感じ。

New HDD!

これでまだまだ白MacBookで闘える。


2009-08-06(Thu) [長年日記] この日を編集

_ FreeBSD ports www/tinytinyhttpdを作った

mattnさん作の軽量にもかかわらず、CGIが動いてしまう軽量Webサーバ、tinytinyhttpdが素晴しかったので、FreeBSD portsにしてみました。

小ささをウリにしているのでインストールとか、レジストリとか、面倒くさいものは要りません。

[Big Sky :: C++で軽量Webサーバ書いた。より引用]

という趣旨から、ちょっと外れているような気もしますが。:-)

書いたportsは、ports treeにcommitされ、現在、FreeBSDから ports/www/tinytinyhttpd としてご利用いただけます。

tinytinyhttpdは、既に0.0.4cがリリースされていますが、portsについてもupdateをsend-pr済みです。 しばらく後、ports treeに反映されることと思います。

このportsが、尊敬するmattnさんのお名前を少しでも世界に広まるお役に立てれば、これに勝る喜びはありません。

♯ ちなみにportsには、ちょっとした遊びが入っていますが、mattnさんのご許可をいただいています。念の為。:-)


2009-08-08(Sat) [長年日記] この日を編集

_ tDiary-2.3.3にupdateした

Amazon API認証が実施される8月15日が迫ってきたので、対応済みのtDiary 2.3.3リリースにupdateした。

特に問題なく完了。

このバージョンからAutoPagerize対応も入ったので、拙作simple_autopagerize.rbを動作pluginから外した。

_ 月表示をAutoPagerize化するtDiaryプラグインを書きました

tDiary-2.2.2およびtDiary-2.3.3はAutoPagerize対応するようになりましたが、月表示ではAutoPagerizeに対応していません。

開発者のhsbtさんにお聞きしたところ、月表示AutoPagerizeについてはニーズがないため、現在対応予定がないとのことでした。 個人的には1年のふりかえりのために、月表示でのAutoPagerizeに対応していると嬉しい*1ので、月表示をAutoPagerize化するプラグイン、monthly_autopagerize.rbを書いてみました。

GitHubとCodeReposで開発しています。 ご利用になる場合には、下記から入手してください。

GitHub

CodeRepos

AutoPagerizeの方向は

  • 過去方向(To Past)
  • 未来方向(To Future)

の2通りを選択することができます。 標準は過去方向になっていますので、変更したい場合には、設定画面の「Monthly Autopagerize」設定から変更してください。

patch & fork、welcomeです。

*1 つまり1年に1回しか使わないということなのですが。:-)


2009-08-09(Sun) [長年日記] この日を編集

_ ドフトエスキーの原作を換骨奪胎し、現代日本に舞台を移しかえた新たな物語──『罪と罰』(落合尚之)

双葉社様より本が好き!経由で献本御礼。 今回は『罪と罰』の既刊5冊を献本していただきました。 双葉社さん、太っ腹!

大学を中退し引きこもりとなった青年、裁弥勒(たち みろく) は、肥大する自尊心と劣等感を抱え、もがき苦しんでいた。 弥勒はある夜、春をひさぐ女子高生、島津里沙を目撃する。 理沙は、女子高校生売春グループのリーダー、馬場光に売春を強要されていたのだ。 理沙に虫ケラのように扱う光を見た、弥勒はある計画を思いつく。 それは「この世の害虫」である光を「この世から取り除く」というものだった。 光の周りを観察し、慎重に計画を立てていく弥勒。 しかし、突如として、計画の実行を余儀なくされた時、計画は思わぬ方向に転がり墜ちていく……。

世の中に『罪と罰』というタイトルの作品は数あれど、原典であるドフトエスキーの『罪と罰』と関連するものはあまりない。 まぁ、はっきり言えば、ちょっとしたブンガク的な香りづけに『罪と罰』という名を用いているに過ぎない。 しかし、本書はそんな流れとは一線を画す。 漫画家、落合尚之がドフトエスキーの『罪と罰』を換骨奪胎し、現代日本に舞台を移しかえた新たな物語として描いているのだ。 まさに意欲作という名がふさわしい作品である。

ここで告白しておくと、実は恥ずかしながら、本作がドフトエスキーの『罪と罰』をモチーフにしているということは、本書を読んだ妻に聞くまで分からなかった。 というのも、『罪と罰』を読んだことがなかったからなんですな。 そんな訳で、慌てて図書館から『罪と罰』を借りてきて読んでいる最中なのだが、なるほど、著者はうまく原作を料理している。

たとえば、原作の主人公、ラスコーリニコフと、本書の主人公、弥勒は同じ元大学生だが、殺人を犯す動機というものが大きく違う。 前者が「正義を為すため」というものであるのに対して、後者は色々と理屈はこねているが、還元すれば、あくまでも自分本位にしかすぎない。 ぎすぎすした現代社会で「正義のため」という題目にリアリティが感じられるはずもなく、うまい改変といえるだろう。

また、主人公の殺される人物にも相違がある。 原作の金貸しの老婆は殺されるほどの罪を犯していない人であるが、本書の光は高校生ながら悪逆非道の限りを尽していて「殺されてしまって当然」と読み手が感じてしまうような人間なのである。 また、殺害現場にたまたま居合わせてしまった犠牲者についても、原作はホントにたまたま居た人、本書はあまりにも愚かな人という違いがある。

うまく原作を改変しているが、では、物語の完成度も原作に匹敵するかと言えば、5巻まで読んだ段階では、残念ながら否といわざるをえない。 というのも先に書いた通り、主人公の動機が身勝手なもので全然、感情移入ができないのである。 さらに主人公の手にかかった被害者たちも、程度の差こそあれ「殺されても仕方ない」という感情が沸いてしまい、感情移入ができない。

5巻では、原作でのキーパーソンとなる女性が登場する。 まだ、どのように弥勒に関わってくるか分からないが、ストーリーに膨らみを持たせることのできる人物だと思われる。 今後の展開に注目したい(ただ、あんな良い娘がまともに授業が行なわれないような高校の生徒であるという点は疑問。あんまり勉強が得意ではないのだろうか)。

また、今のところ、ちょろっとしか登場していない検事の五位(ごい)についても、原作の予審判事・ポルフィーリィばりの活躍を期待したいところだ。

現在のところ、作品としてあまり評価できていないが、読み続ける価値のある作品であることは間違いない。 自腹でこれ以降も買い続ける予定だ。

話題の亀山訳『罪と罰』も先頃、遂に完結した。 本書とともに読まれるのはいかがだろうか。 違う『罪と罰』の世界が味わるはずだ。


罪と罰 1 (アクションコミックス) 罪と罰 1 (アクションコミックス)
落合 尚之
双葉社
¥ 630

罪と罰 2 (アクションコミックス) 罪と罰 2 (アクションコミックス)
落合 尚之
双葉社
¥ 630

罪と罰 (3) (アクションコミックス) 罪と罰 (3) (アクションコミックス)
落合 尚之
双葉社
¥ 630

罪と罰 4 (アクションコミックス) 罪と罰 4 (アクションコミックス)
落合 尚之
双葉社
¥ 630

罪と罰 5 (アクションコミックス) 罪と罰 5 (アクションコミックス)
落合 尚之
双葉社
¥ 630

罪と罰 6 (アクションコミックス) 罪と罰 6 (アクションコミックス)
落合 尚之
双葉社
¥ 630

罪と罰〈1〉 (光文社古典新訳文庫) 罪と罰〈1〉 (光文社古典新訳文庫)
フョードル・ミハイロヴィチ ドストエフスキー/亀山 郁夫
光文社
¥ 860

罪と罰〈2〉 (光文社古典新訳文庫) 罪と罰〈2〉 (光文社古典新訳文庫)
フョードル・ミハイロヴィチ ドストエフスキー/亀山 郁夫
光文社
¥ 840

罪と罰〈3〉 (光文社古典新訳文庫) 罪と罰〈3〉 (光文社古典新訳文庫)
フョードル・ミハイロヴィチ ドストエフスキー/亀山 郁夫
光文社
¥ 920


罪と罰 (1巻~5巻)

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書評/


2009-08-17(Mon) [長年日記] この日を編集

_ 『時間封鎖』の待望の続編が登場だ──無限記憶 (創元SF文庫)(ロバート・チャールズ・ウィルスン/茂木 健) 無限記憶 (創元SF文庫)(ロバート・チャールズ・ウィルスン/茂木 健)

東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。

どデカいスケールのアイデアと過去のSF作品へのオマージュを詰め込み、SFファンから大絶賛された、ヒューゴー賞・星雲賞を受賞作『時間封鎖』。 本書はそれにつづく、待望の続篇である。

前作のラストから30年後。 40億年に渡って地球を封鎖した〈仮定体〉という謎の存在がインド洋に投下した宇宙を超える門、〈アーチ〉。 その先にある新世界が本書の舞台となる。

夜空から星が消えるという衝撃的な幕開けから、地球を襲った異常現象の数々を、主人公が現在と過去の回想のふたつの軸から語るのが前作のスタイルだったが、本書では一転、様々な背景をもつ登場人物たちが権力からの逃避行をつづけながら〈仮定体〉の謎に挑むというものになっている。 畳み込むような異常現象によってディザスター小説としての面が強かった前作から、より落ち着いた雰囲気の作品へ転化したといっていいだろう。

ただ、その分、SFとしても少々、落ち着いてしまったのが残念なところだ。 1億倍の時間加速とそれを逆手にとった火星テラフォーミング、異星からの客など、SF者の感性を刺激するネタに溢れた前作と比較すると、本作のSFネタは〈仮定体〉の死骸とおぼしき灰が降るという、かなりこじんまりとしたものなっている。

また、ラストでその一端が明かされる〈仮定体〉の正体にしても、前作を読んだ読者には予想の範囲内だろう。

とはいえ、本書は3部作の中間にあたる第2部。 多少、中途半端に感じられるのも仕方のないところかもしれない。 前作よりは落ちるとはいえ、作品単体として見ても、中盤以降は一気通読確実な面白さであることには太鼓判を捺しておきたい。

神を巡るSFとなることを示唆するラストから、俄然、第3部への興味がかきたてられるが、訳者あとがきによると、第3部は依然、執筆段階にあるそうだ。 なんとも残念だが、首を長くして一日でも早く完結編を読めることを望むしかなさそうだ。

時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫) 時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)
ロバート・チャールズ ウィルスン/Robert Charles Wilson/茂木 健
東京創元社
¥ 987

時間封鎖〈下〉 (創元SF文庫) 時間封鎖〈下〉 (創元SF文庫)
ロバート・チャールズ ウィルスン/Robert Charles Wilson/茂木 健
東京創元社
¥ 987


無限記憶

  • ロバート・チャールズ・ウィルソン/茂木 健
  • 東京創元社
  • 1302円
Amazonで購入
書評/SF&ファンタジー


2009-08-19(Wed) [長年日記] この日を編集

_ クロスジャンル系エンターテイメントの新鋭登場──『時限捜査』(ジェイムズ・F・デイヴィッド・著、公手 成幸・訳)

東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。

タイトルから「時効ものかいな?」と想像してしまうが、実はSFテイストな警察小説。 著者は、去年急逝したクロスジャンル系エンターテイメント小説の旗手、マイケル・クライトンの後継者とも目されたジェイムズ・F・デイヴィッドだ。 本邦初紹介である。

物語の舞台は、アメリカ・オレゴン州最大の都市、ポートランド。 ある夜、公園を抜けて近道しようとしていた双子の姉妹が酔ったティーンエイジャーたちに襲われる。 二人を救ったのは帽子とコートに身を包んだ、青い肌を持つ老人だった。 公園から逃げ出した姉妹だが、その間に一人が姿を消し、他殺体で発見される。 彼女の手には青いガラガラがあった。 サンディエゴ、サンフランシスコと、西海岸を北上してきた連続幼児殺人鬼、通称「クレイドルラバー」(ゆりかご泥棒)が、遂にポートランドまでやってきたのだ。 捜査に従事することになった、ポートランド市警の殺人課刑事カイル・ソマーズは、生き残った姉妹の一人から意外なことを告げられる。 彼女たちを助けた老人から、警察に渡すように、とメモを預かったというのだ。 そのメモは、姉妹がティーンエイジャーたちにレイプ後殺害されたという起こらなかった事件についての新聞記事のコピーだった。 新聞記事が意味するものはなんなのか。 いたずらか? 捜査の攪乱か? それとも──。 娘を失った悲しみの心の傷を抱えるカイルは、第2の犯行を防ぐべく全力で捜査に当たるが……。

起きてしまった事件や事故に介入し、未然に防ごうとする人物。 SF小説はもちろん、映画やマンガなどによく見られるアイデアである。 はっきり言って、手垢のついたネタといっていいだろう。 本書のネタもその手の作品を読んだ人には、数十ページ読んだだけで「あー、あれね」と合点がいくに違いない。 そういう意味で、本作は非常にオーソドックスな作品といっていい。

しかし、それほど新奇なものが見られないストーリーでありながら、作者は読者をぐいぐいと引っ張って、最後まで一気に読ませてしまう。 ここは素直にその筆力を認めたい。

特に優れているのがキャラクター造形だ。

主人公のカイル・ソマーズは、6フィート3インチある長身の男で、かつては「市警の"鬼才"」と呼ばれるほどの第一級の刑事だった。 しかし、娘を事故で亡くして以来、酒浸りを生活をつづけていて、一時は幻覚を見るほどのアルコール依存症となった経験を持つ。 市警一番の美女に誘いを受けているが、恋に臆病になって、一歩を踏み出すことができずにいる。 クレイドルラバーは、そんなカイルにとっての復帰戦の第1試合の相手なのである。 捜査を進める中、カイルは未来を知っているかのような青い肌の老人の正体に迫るとともに、ある希望を持ちはじめるのだ。

カイルを食ってしまうほどの強烈な個性を持つのが、ひょんなことからカイルの相棒となる女性、シェリー・ノーマンだ。 両足とも膝から上で切断され、車椅子が欠かせないシェリーだが、カイルに負けないほどの筋力の腕を持ち、プロポーションも抜群。 さらに、カイルを優に上回るほどの食欲と激情型の感情の持ち主という、社会的弱者としてカッコつきで語られる「障碍者」というステロタイプとはまったく違うタイプの女性なのである。 SF・ファンタジー作家という顔を持つシェリーがカイルをサポートしていく。

また、ポートランド市警の同僚たちを中心とする、キャラ立ちした脇役たちにも注目されたい。

本書の主たる読みどころは、もちろん、クレイドルラバーと青い肌の老人に迫る捜査にあるが、まったく正反対の性格のカイルとシェリーが徐々に惹かれはじめていく部分もまた読みどころといっていいだろう。

香山二三朗氏の解説でも引き合いに出されているディーン・クーンツ作品を読みまくった人には「またか」という思いを抱く人もいるには違いないと思うが、個人的には気にいった作品である。 他のジェイムズ・F・デイヴィッド作品も近刊とのこと。 今から楽しみにしておこう。

本書について少々苦言を呈したいのが、上下巻になっているということ。 一冊300ページ未満なので、ここは1冊にまとめてもらった方が価格が安くできてよかったのではないかと思うがどうだろうか(献本して頂いて言うことでもないのだが)。

ちなみに、もうひとり(ふたり?)のクロスジャンル系エンターテイメントの書き手、ダグラス・プレストン&リンカーン・チャイルドの作品が解説にもある通り、全然訳されないのだが、そろそろどこかの出版社が訳してくれないだろうか。 そちらも楽しみにしているのだが。


時限捜査

  • ジェイムズ・F・ディヴィッド/公手 成幸
  • 東京創元社
  • 798円
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書評/ミステリ・サスペンス


2009-08-21(Fri) [長年日記] この日を編集

_ 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ──「東京裁判」を読む(保阪 正康/井上 亮/半藤 一利) 「東京裁判」を読む(保阪 正康/井上 亮/半藤 一利)

日本経済新聞出版社様より本が好き!経由で献本御礼。

今年もまた8月15日が過ぎた。 戦後64年を経た今年は、日中戦争、太平洋戦争などについて政府や軍の指導者を裁いた極東国際軍事裁判が結審してから61年目の年でもある。

極東国際軍事裁判、いわゆる東京裁判について、疑問を投げ掛ける意見は多い。 勝者である連合国が一方的に敗者である日本を裁いたということもそうであるし、量刑についても客観的に見て不当と思えるものがずいぶんとある。

だからといって、まったく歴史的な意義と断じるのは早計だ。 東京裁判には、弁護側からも検察と同じく大量の証拠資料が提出されている。 それらの資料を日本経済新聞編集委員である井上亮氏、昭和史研究家である作家の半藤一利氏、保坂正康氏の3人が客観的に眺めることによって、日本が遂行し敗戦した戦争の姿を浮き彫りにしようとするものが本書である。

本書の基礎となった資料は、豊田隈雄元海軍大佐をはじめとする東京裁判の被告弁護に関与した人々がまとめたものである。 実に30年以上に渡って法務省の中で眠っていた資料は、1999年に国立公文書館に移管され、2007年より公開が開始されている。

本書は基本文書、検察側立証、弁護側立証、個人弁護と最終論告・弁論、判決の5章立てとされている。 それぞれの章は分析と、解説を兼ねた3者による鼎談が収められており大変分かりやすい。 歴史を俯瞰する視線も、半藤、保坂というベテランの二人が携わっているだけあって、客観的でバランスが取れている。

戦争計画、真珠湾攻撃、南京事件、虐待・虐殺事件など東京裁判で訴因とされたものについて論じられているが、個人的に知らなかった事実が明らかにされている。

たとえば、アメリカに騙し討ちと非難され、「リメンバー・パールハーバー」が対日戦のスローガンともなった真珠湾攻撃であるが、実は東京裁判では罪とはされていない。それどころか、「あの当時の状況では通告が遅れたのは当然、仕方なかった」とまで言われているのである。 真珠湾攻撃をアメリカに騙されたせいだとする謀略史観を持つ人はどう考えるのだろうか。

謀略史観について、半藤氏が「謀略説こそ自虐史観」と述べている見解も興味深い。 太平洋戦争について、日米ともに策略を巡らせたことを指摘しつつ、日本人は簡単に謀略にのせられるほどバカだったのかと問う。

「ルーズベストにうまい具合にはめられて真珠湾を叩いた」なんて言うと、日本国民は本当にバカなんじゃないかということになってしまう。(p.229)

深く頷ける意見である。

日本を無罪としたとして取り上げられることの多い、インドのパール判事についての記述も興味深い。 パール自身、予断と偏見をもって意見書を書いていて、満州事変を日本の謀略ではないと間違った判断をくだし、戦時下の言論弾圧についても当然だという見解まで述べているのである。 その一方で、日本軍が行なった残虐行為を事実として認定し、非難しているのだ。 パールが東京裁判について日本を無罪とした理由は、そもそも裁判自体のあり方が法的におかしい、ということに過ぎないのである。

東京裁判では20万人が虐殺された南京事件だが、本書では犠牲者の数が多すぎるにしても(3〜4万人とされている)と、虐殺自体はあっただろうとされていることも付記しておきたい。

本書を読んで非常に情けなく感じたのが、A級戦犯とされ、絞首台の露の消えた元首相・東条英機の手記の内容である。 東条は降伏に際して、その原因を「国民の無気魂」にあるとしているのである。 さらに、昭和20年2月の段階で、天皇への奏上で「我が国には作戦的にも余裕がある」と述べている。 開いた口がふさがらないとはこのことだろう。

ちなみに、海軍大臣だった嶋田繁太郎が巣鴨プリズンに収監されていた際に書かれた日記の内容は、ほとんど日々の食事の献立であった。

情けないといえば、日本人の歴史文書に対する意識の低さについても、またそう感じてしまう。 敗戦にあたって、陸海軍は一切の重要書類を命じた。 軍は血税と文字通り国民の命を遣い、戦争を遂行したはずである。 自分たちが成したことを後世に伝えることを義務と考えなかったのだろうか。

「裁判資料は国民すべての歴史資産である」と言う想いのみで資料の整理・収集にたずさわった豊田元大佐は、書類の焼却について「本当にバカなことで、国の重要資材の破棄にも等しいことである」と嘆いたという。

豊田元大佐らの資料が公文書館に移管されてから公開まで8年の月日がかかっている。 その原因には、もちろん、資料が膨大ということもあるが、公文書館の職員が42名しかいないということも多いに関係している。 組織には予算という問題が常について回るとともに、国民の血税で運営される以上、軽々しく予算を増やすべきとも言えないが、我々は歴史文書について、ドイツの宰相、ビスマルクの言葉

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ

を今一度考えてみる必要があるのではないだろうか。 そんなことを考えさせられた書である。


「東京裁判」を読む

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書評/歴史・記録(NF)


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