ぽっぺん日記@karashi.org
2009-06-28(Sun) [長年日記]
_ [読書感想]男たちのますらおぶりを見よ!──
時は13世紀末。 フランス征服の野望に燃えるイングランド王、エドワード1世は戦争に必要な国力を得る足がかりとして、北の隣国スコットランドを植民地化することを決意した。 スコットランドへの政治的圧力を強めるイングランドに対し、大きく国力で劣るスコットランドは、平和的な解決をはかるため、イングランドの提案を受け入れる。 しかし、それはエドワード1世が仕掛けた罠だった。 なんとかイングランドの毒牙から逃れるべく、策を巡らせるスコットランド。 しかし、それも虚しく戦端は開かれ、スコットランドはイングランドに屈服する。 征服者であるイングランド人によるスコットランド人に対する圧政が続く中、遂に反乱の狼煙が上がる……。
イングランドによるスコットランド支配のくびきを解くために奮戦したスコットランド人たちの独立戦争を描いた歴史小説が本書。
著者は英国に駐在経験を持つ元サラリーマンというだけあって、正直なところ、文章的な技巧に優れているとはいえない。 また、リーダビリティを優先したせいだろうと思われるが、「Sプロジェクト」「ゲリラ戦」といった、時代を無視した名称が登場することにも違和感を感じる。 しかし、それを補ってあまりある波瀾万丈かつ燃えるストーリーがページを捲る手を止めさせない一冊だ。
本書の舞台となる、13世紀末のイングランドやスコットランドとの戦いと聞いてもぴんとこない人もいるのではないかと思う。 しかし、メル・ギブソンが監督・主演したアカデミー賞受賞作品『ブレイブハート』の舞台だと聞けば、「あー、なるほど」と分かってくれる人も多いに違いない。
『ブレイブハート』の主人公ウィリアム・ウォレスはイングランド独立運動の指導者のひとりで、本書の主人公のひとりでもある。 本書のもうひとりの主人公はウォレス亡き後、スコットランド王として祖国を独立に導いたロバート・ブルースである。 そして、三人目の主人公が、ウォレスとブルースの宿敵であるイングランド王、エドワード1世だ。
本書の魅力はなんといっても、男たちのますらおぶりにあるだろう。 反乱軍の指導者であるウォレスとブルースはもちろんのこと、侵略軍を率いるエドワード1世もなんともカッコいいのである。
さらにその上、彼らの下で働く猛将たちもカッコいい。 個人的に気に入ったのはスコットランド軍の猛将、ジェームズ・ダグラス。 大胆な計画と果敢な攻撃で勇名を馳せ、黒髪と黒い瞳、そして敵を容赦なく殺すイメージからブラック・ダグラスと呼ばれ、イングランド人を震え上がられたと書けば、「それ、なんてアニメのヒーロー?」と言いたくなること間違いなしである。
ちなみに、勇猛なダグラスの名はのちにスコットランドで男の子のファースト・ネームとして好んで用いられるようになったそうである。 GHQ司令官のダグラス・マッカーサーもその一人。 本書にはこんな豆知識も多数入れられている。
スターリングブリッジの戦い、バノックバーンの決戦といった歴史の転換点となった戦場も詳細に語られている。 英国好き、軍記物好き、歴史小説好きの読み手には文句なしにオススメできる書だ。
なお、本書と『ブレイブハート』を(読み|見)比べてみるのも面白いのではないかと思う。 本書のエドワード1世は野心を持つ人間ではあるものの高潔な人間で、『ブレイブハート』で大悪人として描かれたエドワード1世とは大きく違っている。
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- 小林 正典
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書評/歴史・記録(NF)

