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ぽっぺん日記@karashi.org


2009-04-08(Wed) [長年日記]

_ [読書感想]傑作ミステリふたたび──検死審問ふたたび (創元推理文庫)(パーシヴァル ワイルド/Percival Wilde/越前 敏弥)

東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。

劇作家パーシヴァル・ワイルドによる傑作ミステリ長篇の続篇が本書。 前作『検死審問』と同じく、溢れるユーモアと、そこに隠された見事な筆さばきが楽しめる一冊だ。

静かな執筆環境を求めて、コネチカットの小さな村トーントンの村はずれのボロ屋敷に引っ越してきた、小説家アランスカ・ティンズリー。 ある夜、ティンズリーの屋敷で出火し、屋敷は全焼。 焼け跡からティンズリーと思われる死体が発見された。 村の検死官リー・スローカム閣下と招集された6人の検死陪審員は検死審問を開廷するが……。

本作もまた前作同様、証人陳述、供述書の朗読、検死官と陪審員の発言などがミックスされた審問記録のスタイルで描かれている。 陪審員には3ドルの日当、検死官には1ページの証言を聴取するごとに25セント、さらに審問記録速記者であるスローカムの娘には1ページごとに10セントが支払われるため、やたらと審問を引き延ばそうとするあたりもおなじみのものだ。

大きく違うのは、陪審長に任命されたのが、前作ではスローカムの進行に異を唱えたイングリスであること。 審問記録にはイングリスの注釈が書き加えられているのだが、これがやたらと長い上に、審問とはまったく関係のない蘊蓄ばかりがかたむけられているという代物。 イングリスの斜め上をいってしまっている推理もいかんなく発揮されていて、笑ってしまうこと間違いなし、である。 ちなみに、イングリス氏、シャーロック・ホームズよろしく虫眼鏡片手に、現場捜査にまで行ってしまいます。

本書をさらに笑えるものにしているのが、個性的な証人たちだ。 ネタバレになるので詳しくは書かないが、延々とキノコのことを語り続ける菌類学者なんて最高におかしい。

もちろん、ただ笑えるだけの作品でないことは、前作を読んだ人であれば、ご存じの通り。 なにげないように見えるスローカムの発言や陪審員との会話に散りばめられた伏線やヒントの数々が明かされるラストには、思わず膝を打つはずだ。

わたしは陪審員にすべての情報を伝えた。

何も隠していない。(p.329)

と、スローカムが言う通り、まったくフェアな謎掛けになっている。

本書は1942年の作品であるが、ミステリとしての面白さはまったく色褪せていない。 前作と同じで恐縮だが、この言葉を贈らせていただきたい。

「名作は色褪せない」

文句なしに太鼓判を押せる傑作ミステリである。



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書評/ミステリ・サスペンス


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