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ぽっぺん日記@karashi.org


2009-04-07(Tue) [長年日記]

_ [読書感想]冒険小説であると同時に、失なわれたものを取り戻す青春小説でもある熱い一冊──黒と赤の潮流 (ハヤカワ・ミステリワールド)(福田 和代)

早川書房様より本が好き!経由で献本御礼。

『ウィズ・ゼロ』『TOKYO BLACKOUT』と次々にヒット作を飛ばしている福田和代の第三作が本書。 熱い男たちが繰り広げる、これまた熱い熱い冒険小説だ。 ちなみに、女っ気はほぼゼロです。:-)

時は1995年9月。 阪神淡路大震災から8ヶ月経ても、いまだに深い傷跡の残る神戸。 震災で両親を亡くした大学生の間嶋祐一は、刑事たちの訪問を受ける。 1月から行方が分からなくなっていたタイ人の親友、ドゥアンが震災当日に殺されていたというのだ。 ドゥアンがタイに帰っていたと思い込んでいた祐一は衝撃を受ける。 祐一はその事実を知っていたはずの、もう一人のタイ人留学生の親友、タオを問い詰めるが、タオは何も語ろうとはしなかった。 もどかしい思いを抱く祐一に、一人の男が接触してくる。 探偵の古賀と名乗ったその男は、祐一に告げる。 ドゥアンは俺の息子だ、と。

祐一は高校時代、国体にも出場し、将来を嘱望されたスプリンターだった。 しかし、交通事故に遭って走れない足になって以来、冷えきった魂を抱えてきた。 そんな祐一がドゥアンの死をきっかけに、徐々に魂の熱を取り戻していくのである。 本書は冒険小説であると同時に、失なわれたものを取り戻す青春小説でもあるのだ。

クライマックス近くでの祐一の魂の叫びが熱くていい。

祐一はひとりで嵐に向かって吠え、笑った。自分はとんでもないろくでなしだ。だがろくでなしにもそれなりの熱が必要だ。嵐は何度でも襲ってくるが、この熱さえあれば自分は底の底まで冷えきることはない。腐ることはない。(p.388)

同じく熱い男を書かせればピカイチの船戸与一を彷彿とさせる。

本書の青春小説という要素は、単に祐一だけのものではない。 それは元刑事にして私立探偵の古賀、そして古賀の元親友で20年に渡る因縁をもつ大物財界人、高見にも当てはまるのだ。 彼らもまた事件を通して、20年前に失なってものを取り戻していく。 さらに書けば、高見に仕えるトラブルシューター・真木と漁師の川西たちも、また、遅れてきた青春を謳歌しているといえるだろう。

核となるはずの、20年前の謎がかなり弱く、ミステリーとして見た場合、本書の魅力は薄いというのが正直な感想だ。 しかし、それを補ってあまりある熱さが本書にはある。

熱い小説が読みたい! そんな読み手にイチオシの一冊である。 震災から復興する神戸と魂の再生を重ねあわせたラストを堪能していただきたい。



黒と赤の潮流

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書評/ミステリ・サスペンス


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