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ぽっぺん日記@karashi.org


2009-02-01(Sun) [長年日記]

_ フランス人のエスプリ(とイヤラしさ)を知ることのできるドタバタ・ミステリー──麗しのオルタンス (創元推理文庫)(ジャック ルーボー/Jacques Roubaud/高橋 啓) 麗しのオルタンス (創元推理文庫)(ジャック ルーボー/Jacques Roubaud/高橋 啓)

文学実験集団ウリポに属し、詩人にして数学者という異色の肩書を持つ著者によるミステリーが本書。 パリを舞台に、哲学を専攻する美人女子大生オルタンスをはじめとする登場人物たちがドタバタ劇を展開する怪作である。

なんとも人を食った小説だ。

第1章からして悪ふざけの極致。 事件の発端あたりが語られるのかと思いきや、エウセビオス食料品店のオヤジが店の前を通る彼のストライクゾーン(註:15~59歳)に入る女性の鑑賞術とその喜びが、哲学を交じえつつ、長々と語られるのである。 その視線のイヤラしいこと。 まぁ、私も同性なのでその気持ちの一端は理解できなくはないが、いかにもフランス人という感じである(偏見か?)。

訳者あとがきによれば、「エウセビオス」とは、初期キリスト教の貴重な歴史を記した『教会史』の著者であるとのこと。 なんとも罰当たりな命名である。

本書のヒロインであるオルタンスが登場シーンもスゴイ。 なんと下着を着け忘れたまま疾走しているのである!(それも超ミニのワンピース姿で!!)。 男たちの視線を釘付けにするのは言わずもがな。 彼女は半日を下着を履かず、バイト先や図書館で半日を過ごしてしまうのだから、大胆というか、サービス精神旺盛というか……。

さて、ストーリーはパリで起きる金物屋連続襲撃事件を軸に、事件を追うブロニュール警部とその部下アラペード、オルタンスに恋する小説家志望の語り手(でも、全然目立たない)、オルタンスと恋に落ちる謎の青年、高貴な血を引く黒猫アレクサンドル・ウラディミロヴィッチ(フルネーム以外で呼ぶことは禁止されている)、それにオルタンスの近所の人々といった、ヒロインを上回るほどの存在感を示す個性的な人々が加わって、ドタバタかつカオスな状態へと展開していく。

混乱に拍車を掛けるのがめちゃくちゃ実験的な小説技法。 著者が地の文に現われるなんていうのは序の口。 著者「私」と語り手の「私」(なんともややっこしい)が口論をしたり、登場人物が「章」や「ページ数」について言及したり、章間に「幕間」と呼ばれる閑話休題的な章があったり、と一般的な小説とは一線を画すものとなっている。

珍妙なテイストなので、万人にオススメとは言い難い、というのが正直な感想だ。 しかし、本書を読めば、フランス人が持つエスプリを感じることができるだろう。 あと、ついでにフランス人男性のイヤラしさも(ぉ。

ちなみに、本書には、オルタンスに限らず、下着を着けないで外出する女性についての言及があるのだが、これってマジなんでしょうか? 原著が刊行された1985年前後の話で、現在はそんなことはないのではないかと思うのだが(今でもそうだったら、色々な意味で尊敬します > フランス人)。



麗しのオルタンス

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書評/ミステリ・サスペンス

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