ぽっぺん日記@karashi.org
2009-02-01(Sun) [長年日記] この日を編集
_ [読書感想]フランス人のエスプリ(とイヤラしさ)を知ることのできるドタバタ・ミステリー──
文学実験集団ウリポに属し、詩人にして数学者という異色の肩書を持つ著者によるミステリーが本書。 パリを舞台に、哲学を専攻する美人女子大生オルタンスをはじめとする登場人物たちがドタバタ劇を展開する怪作である。
なんとも人を食った小説だ。
第1章からして悪ふざけの極致。 事件の発端あたりが語られるのかと思いきや、エウセビオス食料品店のオヤジが店の前を通る彼のストライクゾーン(註:15~59歳)に入る女性の鑑賞術とその喜びが、哲学を交じえつつ、長々と語られるのである。 その視線のイヤラしいこと。 まぁ、私も同性なのでその気持ちの一端は理解できなくはないが、いかにもフランス人という感じである(偏見か?)。
訳者あとがきによれば、「エウセビオス」とは、初期キリスト教の貴重な歴史を記した『教会史』の著者であるとのこと。 なんとも罰当たりな命名である。
本書のヒロインであるオルタンスが登場シーンもスゴイ。 なんと下着を着け忘れたまま疾走しているのである!(それも超ミニのワンピース姿で!!)。 男たちの視線を釘付けにするのは言わずもがな。 彼女は半日を下着を履かず、バイト先や図書館で半日を過ごしてしまうのだから、大胆というか、サービス精神旺盛というか……。
さて、ストーリーはパリで起きる金物屋連続襲撃事件を軸に、事件を追うブロニュール警部とその部下アラペード、オルタンスに恋する小説家志望の語り手(でも、全然目立たない)、オルタンスと恋に落ちる謎の青年、高貴な血を引く黒猫アレクサンドル・ウラディミロヴィッチ(フルネーム以外で呼ぶことは禁止されている)、それにオルタンスの近所の人々といった、ヒロインを上回るほどの存在感を示す個性的な人々が加わって、ドタバタかつカオスな状態へと展開していく。
混乱に拍車を掛けるのがめちゃくちゃ実験的な小説技法。
著者が地の文に現われるなんていうのは序の口。
著者「私」と語り手の「私」(なんともややっこしい)が口論をしたり、登場人物が「章」や「ページ数」について言及したり、章間に「幕間」と呼ばれる閑話休題的な章があったり、と一般的な小説とは一線を画すものとなっている。
珍妙なテイストなので、万人にオススメとは言い難い、というのが正直な感想だ。 しかし、本書を読めば、フランス人が持つエスプリを感じることができるだろう。 あと、ついでにフランス人男性のイヤラしさも(ぉ。
ちなみに、本書には、オルタンスに限らず、下着を着けないで外出する女性についての言及があるのだが、これってマジなんでしょうか? 原著が刊行された1985年前後の話で、現在はそんなことはないのではないかと思うのだが(今でもそうだったら、色々な意味で尊敬します > フランス人)。
- 東京創元社
- 882円
書評/ミステリ・サスペンス
2009-02-03(Tue) [長年日記] この日を編集
_ [読書感想][HORROR]英国ゴーストハンターの祖、ここに復活!──
東京創元社様より本が好き!経由で献本御礼。
英国ホラー作家、アルジャーノン・ブラックウッドによって創造されたゴーストハンター、ジョン・サイレンスを主人公にした連作集が本書。
時は20世紀初頭。 ロンドンで医師を営むサイレンス博士は、超常現象に悩む相談者たちを助ける「心霊博士」としてのもうひとつの顔を持っていた。 本書には心霊博士ジョン・サイレンスの活躍を描いた6作が収められている。
ジョン・サイレンス博士は名探偵シャーロック・ホームズをヒントに造形されたそうである。
しかし、断じて二番煎じではない。 探偵小説に超常現象やオカルト要素を持ち込んだことはもちろん評価されるべきだが、純粋に作品として注目したいのが、読者を飽きさせない工夫だ。
まず、挙げたいのが収録作のバラエティの豊富さ。 サイレンスが幽霊屋敷での悪霊を退治するというオーソドックスなゴーストハンターもの「霊魂の侵略者」がある一方で、フランスの猫たちが支配する田舎町において旅行者が遭遇する恐怖を描いた「古えの妖術」や南ドイツの山奥にある寄宿学校を舞台にした「秘密の崇拝」、スウェーデンの群島での人狼譚「犬のキャンプ」など、単純な幽霊退治ものに収まらない。
その描き方や語り口がそれぞれの作品で違うのも特徴だ。 「炎魔」はワトソン役の語り手による手記風の作品、 「古えの妖術」はサイレンスが怪奇現象に遭遇した人物の体験を語るという形式になっている。 「秘密の崇拝」ではサイレンスが第三者として描かれ、「四次元空間の虜」ではサイレンスともうひとりの登場人物の会話風の作品となっている。
巻末に収録されてホラー作家、朝松健氏の解説によれば、本書は大成功をおさめたとのことだが、それにもうなずける読者へのサービス精神である。
本書の成功を受けて、その後、数々のゴーストハンター・ストーリーが生み出された。
つまり、ジョン・サイレンス博士こそ、英国ゴーストハンターの祖先というべき人物なのである。
その系譜に連なるものとして、
W・H・ホジスンの『幽霊狩人カーナッキの事件簿』
のカーナッキや
ブライアン・ラムレイの『タイタス・クロウの事件簿』
のタイタス・クロウが挙げられるだろう。
なお、こなれた本書の翻訳は、古臭さを微塵も感じさせない上に読みやすく、本書の魅力を引き立てることに一役買っている。 特筆しておきたい。
英国ゴーストハンターもの魅力に溢れた書である。 英国ゴーストハンターの原点も知る上でも強くオススメしたい一冊だ。
最後に収録作の個人的ベストスリーを。
- 超常現象の解明が魅力的な「炎魔」
- 最後の最後にジョン・サイレンスがカッコよく登場する「秘密の崇拝」
- 犬好きは最後にほっとさせられる「霊魂の侵略者」
- 東京創元社
- 1218円
書評/ミステリ・サスペンス
2009-02-07(Sat) [長年日記] この日を編集
_ [読書感想][SF]山本弘がこれまで貫いてきた姿勢を再確認できる一冊──
金や住居を持たず、賀来野市に住むそれまで繋がりのなかった人と人を結びつけて幸せをもたらすことを「天職」としている女性、詩羽を軸とした連作集。
作者初のノンSFという謳い文句なのだが、詩羽はホーガンの『黎明の星』に登場するクロニア人並みに、現実的とは言えないキャラクターなので、そういう意味ではSFといえるかもしれない。
以前、作者のエッセイ集、宇宙はくりまんじゅうで滅びるか?
の読書感想に
純粋すぎるとも言える著者の正義感には違和感を覚えなくもなかった。
と書いたが、本書はテーマがテーマだけに、山本弘の持つ青臭い正義感が全開である。 そのため、1話、2話を読み終えたところで「言っていることは正論なんだけど、ちょっとなぁ……」と少々辟易してしまう。 もちろん、感動を覚える人もいると思うし、私自身も多少心を動かされたことは否定しないが、やはり、年をとってスレてしまうと真正面な正論には素直に頷けなくなるんですな。
しかし、さすがはベテラン、山本弘。 単に正義を振りかざるのではなく、第3話、最終話である第4話では、その青臭さを逆手にとったストーリーを展開がされていて「うむむ。こう来たか」と感心させられる。
全篇に渡ってアニメネタを中心とするオタク・カルチャーが前面に押し出されている点(最終話はなんと、人気アニメの「聖地」である賀来野市をあげた一大イベントが舞台!)はちょっと違和感を覚えなくもないが、オタク・カルチャーへのこだわりこそが山本弘の魅力のひとつでもある。
従来の作品とは一見毛色は違うように見えるが、山本弘がこれまで貫いてきた姿勢を再確認できる一冊だ。
最後に、巻末の参考文献では、作中で使われたアニメやラノベ、マンガ、ボードゲームなど、元ネタがきちんと示されていて好感が持てたことを特筆しておきたい。
_ [日常][読書]読む本がどんどん溜まっている
最近、仕事が少々忙しいこともあって、読書スピードが落ち気味なのだが、それに反してバカスカ本を入手してしまって、ちとオーバーフローになりかけ。
まぁ、仕事は片付けないと、にっちもさっちもいかないけれど、本は積ん読にしておけばいいんだけどね(ぉ。
ちなみに今読んでいる本は、こんな感じ。
十の罪業 BLACK (創元推理文庫)
東京創元社
¥ 1,680
2009-02-08(Sun) [長年日記] この日を編集
_ [読書感想]ジャック・ロンドンの面白さを堪能できる短篇集──
ジャック・ロンドンの作品といえば、恥ずかしながら『野生の呼び声』と『どん底の人びと』くらいしか知らなかったのだが、40歳の若さで亡くなるまでに、長篇小説20冊の他に、200本以上の短篇小説を書いていたそうである。 ジュック・ロンドンの執筆活動の中でも、短篇を中心に据える人も少なくないとの由。
本書はそんなジャック・ロンドンの短篇9本を収録している。 多彩なテーマを扱ってきたロンドンだが、本書に収められた作品もまた、冒険、スポーツ、SF、伝承──とバラエティに富んでいる。
野生における人間の生を描いた「火を熾す」「生の掟」「生への執着」、ホラー風の「世界が若かったとき」など、 どれも100年前の作品とは思えないほどの出来だが、その中でも「メキシコ人」と「一枚のステーキ」のボクシングもの2本をオススメしたい。
前者は、革命前のメキシコを舞台に、革命を成功させるための武器調達資金を稼ぐため、リングに立つボクサーの話である。 対戦相手や白人の観客はもちろん、自分のセコンドさえも敵という状況の中での孤独な闘いが描かれている。
後者は、妻と二人の子供を養うファイトマネーを稼ぐため、若手ボクサーとの試合に臨むことになったロートル・ボクサーを主人公にした一作。 金欠で一枚のステーキを食べられなかったことに悔いを残しつつも、衰えた体力を知力でカバーして闘う姿を描き出している。 哀愁漂うラストも味わい深い。
他のジャック・ロンドン作品を読みたくなる一冊だった。
2009-02-10(Tue) [長年日記] この日を編集
_ [読書感想]ミステリ界のベテランたちが競演した豪華アンソロジー──
2005年に逝去したミステリ界の巨匠、エド・マクベインが編者となって編まれた書下し中篇アンソロジーが本書。
一緒に刊行された
とは姉妹篇で、それぞれ5篇が収録されている。
中篇であること、内容が広義のミステリの範囲に収まること、という2点の制約のみで、ベテラン作家たちが自由に筆を伸ばした作品はどれも素晴しい出来栄えだ。
冒頭を飾るのは編者エド・マクベインの「憎悪」。 マクベインの代表作といえば〈87分署〉シリーズだが、本作は奇しくも最後の〈87分署〉シリーズとなってしまった。
アイソラで起きた連続タクシー運転手殺人事件。 狙われた運転手はみなアラブ系だった。 そして、タクシーのフロントガラスには青いペンキでダビデの星が残されていた。 犯人はユダヤ人なのか? 事件が発火点となり、人種・宗教対立の不吉な機運が高まる中、87分署の刑事たちは犯人を追う……。
イラク情勢を世界観を架空の街、アイソラに投影した力作だ。 911がもたらした世界にミステリがどう影響を受けたかを見るという意味でも必読と言っておきたい。
ドナルド・E・ウェストレイクの「金は金なり」は、不運な犯罪者、ジョン・ドートマンダーを主人公にしたシリーズの一篇。
仮出所中の鍵開け師から、ドートマンダーと相棒ケルプに持ち掛けられたある儲け話。それは、本物の外国紙幣を印刷して頂戴するというものだった。 しかし、儲け話の裏に、なにか引っ掛かるものを感じる二人は、その背後を洗うことに……。
ウェストレイクの作品を読むのは今回が初めてなのだが、ユーモア溢れるコンゲームが展開されていて楽しめた一作だった。 〈ジョン・ドートマンダー〉シリーズは既に長篇が12冊、短篇集が1冊刊行されているということなので、古本屋で探してみようと思う。
ジョン・ファリスの「ランサムの女たち」は、美術界+孤島という2大要素をテーマにした作品。 ちなみに、本書に収められた作品中、最長の一篇である。
謎に満ちた天才画家ランサム。 彼の描いた絵画のモデルとなった女性たちは〈ランサムの女たち〉と呼ばれ、そのプロフィールは一切秘密にされていた。 美貌の美術鑑定人エコーは、ランサムより絵のモデルとして一年間、ランサムと孤島で過ごすとの依頼を受ける。 ランサムから絵の手ほどきを受けるとの栄誉に舞い上がるエコーだが、彼女の婚約者である警官ピーターは嫉妬心とともに、ランサムに疑念を抱きはじめ、過去の〈ランサムの女たち〉を調べはじめる……。
ジョン・ファリスといえば、ホラー作家だと思っていたが、実はミステリ作家でもあるそうだ。 とはいえ、やはりと言うべきか、本作もホラー色が色濃い。 隠されていた事実が徐々に明らかになり、急速に事態が転がりだす展開は、まるで映画のようで、ぐいぐい引っ張られる確実の一作だ。
老いた黒人が過去を回顧するという形式で描かれる、シャーリン・マクラムの「復活」は、高水準の作品ぞろいの本書の中でもイチオシ。
舞台は19世紀半ばのアメリカ南部。 黒人奴隷グラディソンは「ある業務」を担当するための医大の用務員として買われる。 農園で働く奴隷とは違い、過酷な労働もなく、ある程度の自由も手にしたグラディソンだが、彼に課せられた仕事は神をも恐れぬものだった……。
グラディソンの「業務」についてはネタバレになるので詳しくは書かないが
解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯
と一緒に読むと、さらに楽しめるのではないかと思う。
当時の南部アメリカの様子、南北戦争、医学事情などもきっちり書かれていて、歴史小説とも読める作品だ。
日本でも人気の高いローレンス・ブロックの「ケラーの適応能力」は、殺し屋ケラーを主人公にしたシリーズの一篇。 「憎悪」と同じく、911をテーマにしている。
殺し屋ケラーは、「仕事」で訪れていたマイアミで、テレビを通じてツインタワーに突っ込む2機の旅客機を目撃する。 それを機に時代が大きく変わったことを実感したケリーは、自身と世界についての思惑を深めていく……。
ケリーは殺し屋という職業であるにも関わらず、 グランドゼロで救助活動に従事する人々に食事を給仕するボランティアに志願したり、孤独を紛らわせるために犬のぬいぐるみに話し掛けたりと、なんともねじれたユーモアがおかしい。 派手なアクションなどはないが、個人的には好みな味わいの作品だった。
5作中2作が911をテーマにしていて、いかにその傷跡が大きかったのかを改めて再認識させられた。 ミステリ好きならずとも、強くオススメしたいアンソロジーである。
- エド・マクベイン、木村 二郎
- 東京創元社
- 1680円
書評/ミステリ・サスペンス
2009-02-11(Wed) [長年日記] この日を編集
_ [vimperator][github][gist][Firefox]autoproxychanger.jsでFoxyProxyの主要な機能を実現できた
FoxyProxyからproxy.jsに乗り換えたばかりなのだが、proxy.jsのちょっとした不満がFoxyProxyで出来たURLベースのProxy設定。
社外から社内のWebにアクセスする時に、いちいち
proxy socks
とコマンドを打つのが少々面倒だった。
そんな時に見つけたのがautoproxychanger.js。 proxy.jsの機能に加えて、URLベースでのProxy設定にも対応しているという優れもの。 さっそくproxy.jsと置き換えたところ、コマンドなしでばっちり社内Webにアクセスすることができた。
.vimperatorrcに追記した設定は次の通り。
vimperator、ますます便利になるなぁ。
2009-02-18(Wed) [長年日記] この日を編集
_ [読書感想]川が消える──
蛇口をひねれば水がほぼ無制限に使える生活をしている日本人には、なかなか想像がつかないが、水は石油を超える21世紀の最も重要な資源といわれている。
地球上に存在する水の総量は約140億立方キロメートル。 そのうち、陸地から海へと流れて循環している水の総量は約4万立方キロメートルある。 しかし、そのうちのほとんどが洪水や河川の氾濫によって急速に流されてしまい、人間が最新のテクノロジーを用いて利用できるのは、そのうちの約1万4000立方キロメートルになるそうである。 さらに、そこから人間が住みのに不適当な場所を川として流れている量を引くと、残り9000立方キロメートル。 これが人間が一年間に使える水の総量である。 一人あたりに換算すると、年間約1400立方メートルになる。
問題は、現在の先進国並みの生活を送ろうとすれば、一人あたり1500~2000立方メートルが必要になるという事実である。 つまり、水は不足しているのだ。
ジャーナリストである著者は10年以上の歳月をかけて、世界各地を歩き、関係者にインタビューをして、深刻な事態に陥っている水の危機を浮き彫りにしている。 環境問題を扱った本といえば、先進国や大企業を糾弾する反グローバリズム的な内容になりがちだが、著者の姿勢は違う。 取材で得た事実のみを積み重ね、中立な立場で水問題に取り組んでいる。
本書で明らかになる実態は恐るべきものである。 我々が使う水の主な源は川だ。 しかし、その川がダムによる寸断と許容量を超える取水により、海まで届かない。湿原や湖は姿を消す。 たとえば、アメリカとメキシコの国境にあるリオデグランデ川は干上がり、内陸湖であるアラル海は消滅の瀬戸際にある。
さらに、足りない水を補うため、1000年単位で地下の帯水層に溜められた水をどんどん汲み上げている。 言ってみれば、もう二度と元に戻らない貯金を切り崩しているようなものである。 事実、アメリカ中部の帯水層の1/4は既に枯渇し、残りも水位が低下し続けている。
では、これらの水はどのような目的に使われているのか。 著者によれば、大部分が野菜や家畜の飼料を育てるための灌漑用水に使われているそうである。
貴重な川や地下水を枯らしつつ作られた野菜や肉は商品として世界各地に輸出されている。 つまり、水を輸出しているに等しいのである。 このような貿易は「仮想水貿易」と呼ばれている。 そして、一大食糧輸入国である日本は、一大水資源輸入国である訳だ。 蛇口をひねれば水を得られる生活を送っている日本人もまた水問題に深く関わっていることの証左といえるだろう。
本書はまた国際政治にも踏み込んでいる。 いくつかもの国を流れる川の取水やダム建設が国際的緊張の引き金になるという事実他、イスラエル・パレスチナ問題や第4次中東戦争の背後に、水問題が横たわっていることも描き出している。
著者が水問題の根源にあるものとして導き出したものが、コミュニティの利益よりも個人の利益が優先される近年の価値観だ。 著者は水問題の解決策として、節水農業や雨水の利用、氾濫の許容といった具体策とともに、そのような価値観の転換を挙げている。
水問題を考える上での必読書と言っていい一冊である。強くオススメしたい。 なお、巻末に付された沖大幹・東大生産技術研究所教授の解説は、日本人にはあまり馴染みのない水問題を知る上で大変役に立つものとなっている。 特筆しておく。
_ [日常]近況
なんちゃって会社員のはずなのに、このところ、ずっと忙しい風味。
早朝に起床→ろうどー→帰宅→晩飯→うたた寝→24時くらいに妻に起こされて風呂→就寝、ってな感じの毎日。
ちなみに、今読んでいる本はこんな感じ。
オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険
新曜社
¥ 2,730
2009-02-19(Thu) [長年日記] この日を編集
_ [読書感想]体臭から見た西洋史──
「歴史」と銘打ってはいるが、欧米に重点が置かれているので、『不潔の西洋史』というのが本当のところな一冊。 個人的には『体臭から見た西洋史』と呼びたい。
「清潔」の基準は人によってもまちまちであろうが、日本人のだいたいの共通項は
- 毎日、風呂に入る。
- 起床したら顔を洗う。
- 起床後、食事ごと、就寝前に歯を磨く。
といったところだろうか。
しかし、実は「清潔」という概念は時代や文明によって大きく変わっている。
ローマ人は水や湯を浴びたり、浸かったり、蒸したりを2時間以上続けてから、汗や脂を金属の道具で掻き落とし(痛そう!)、仕上げにオイルを塗っていたそうである。 一方で17世紀のフランス人に貴族にとっては、下着を毎日替えることこそが清潔だった。 それ以外は風呂にも入らず、身体のどこにも湯をつけなかった!
本書は「清潔」と「不潔」という概念の変遷を明らかにする。
著者はギリシャ、ローマ時代から筆を起こしているが、だいたい13世紀までは現代から見ても、まぁ、だいたい許容範囲の清潔さである。
しかし、その「清潔さ」のレベルがぐっと低くなるのが14~16世紀。 その原因は1347年に中央アジアからヨーロッパにもたらされた〈黒死病〉、つまりペストである。 当時のフランスでは、湯浴みをして開いた毛穴からペストに感染するという説が信じられ、風呂はもちろんのこと、洗顔さえしなかった。 なんと、そんな習慣が18世紀まで続いたのである。
ここら辺の記述は想像を絶する。 ぜひ本書を読んで確かめて欲しいが、一例を挙げれば、1601年に生まれたルイ王太子(のちのルイ13世)が初めて足を洗ったのは5歳の時、産湯を使った時は7歳の時とのこと。 それまでもちろん風呂に入ったことはなかった。
1511年にそんなフランスから出されたイタリア人の手紙がおかしい。 フランス人女性について「薄汚い」「不衛生」と書き連ねているのだが、一方でそれらを埋め合わせるほど「かわいらしい」と書いているのだ。
清潔であることに無頓着であったヨーロッパ人への反動のように、新大陸たるアメリカでは、19世紀末にはシャワーが一般家庭にも普及して、清潔であることが徐々に尊ばれるようになる。 その頃にはヨーロッパからの移民が押し寄せ、アメリカ人たちは「粗野な」彼らに清潔を教える必要がある、とまで決意するのである。
そのアメリカ人の潔癖さは、石鹸メーカーの宣伝戦略もあり、20世紀に入ってさらに高まっていく。 体臭があることは悪いこととされてデオトラントが売れ、口臭を防ぐという触れ込みの〈リステリン〉が売れ、(本来は象牙色なはずの)歯を白くするグッズが売れるようになった。 それは現在まで続く異常とも言える習慣である(これだけの「潔癖さ」がありながら、アメリカ男性のかなりの割合がトイレの後で手を洗わないというのは、なんだかアンバランスだと個人的には思うが)。
しかし、翻って日本の状況を考えてみると、決してそんなアメリカの状況を笑えないのではないだろうか。 ドラッグストアには体臭や口臭を防ぐための品物が大量と並んでいる。 もちろん、それを元々の日本人の綺麗好きさの延長と捉えることもできるが、過剰に清潔さを求めていると見ることもできる。
日本では、同じ職場の人間が、就業中扱いの休息の一環で、集団で入浴することがよくある。(p.37)
なんていう一節(社内旅行のことか?)があって、日本人に対する多少の誤解も見られるものの、 これまでなかった視点から歴史を俯瞰させてくれる好著だ。
2009-02-20(Fri) [長年日記] この日を編集
_ [読書感想]ミステリ界のベテランたちが競演した豪華アンソロジー(2)──
2005年に逝去したミステリ界の巨匠、エド・マクベインが編者となって編まれた書下し中篇アンソロジーが本書。
中篇であること、内容が広義のミステリの範囲に収まること、という2点の制約のみで、ベテラン作家たちが自由に筆を奮った力作5篇が収められている。
先日読んだ十の罪業 RED
の姉妹篇だ。
本書の冒頭を飾るのは、数々のヒット作を飛ばし、『ボーンコレクター』が映画化もされたジェフリー・ディーヴァーの「永遠」。
ニューヨーク州の郊外の閑静な住宅街で老夫婦が拳銃自殺をした。 当初、普通の自殺を考えられた事件だが、保安官事務所に勤める元数学者にして統計担当の警察官、タルボット・シムズは統計学的な疑念を抱く。 独自の捜査をはじめたシムズだが第2の自殺が……。 200ページ程度の中篇ながら、最近流行の科学的な捜査やサイコスリラー、デスクワーク型警官と熱血型警官の対立と友情、大どんでん返しなど、おいしいところがこれでもかと押し込められている。 一度読みはじめれば、映画を見るかのようにぐいぐい引っ張られ一気通読確実のエンタメ作品だ。 本書のイチオシである。
911を背景にして、生き残った者の心理を描いているのが、スティーブン・キングの「彼らが残したもの」。
ツインタワーの農業保険会社に勤めていた主人公は、2001年9月11日、虫の知らせを受けて会社を欠勤し、辛くもテロの被害から免れることができた。 それから約1年後、突如、彼の身の周りに雑多な品物が現われはじめる。 それはこの世に存在しないもの──911の被害にあった彼の同僚の持ち物だった……。 キングらしく、スーパーナチュナルな要素はありながらも、ホラー・テイストはほぼ皆無で、終始静かな雰囲気の中でストーリーは進展される。 作品を通して、キングが受けた911の衝撃が透けて見えてくる。
ジョイス・キャロル・オーツ「玉蜀黍の乙女──ある愛の物語」は、少女誘拐事件の顛末を、少女やその母親、犯人、濡れ衣をかけられた容疑者など様々な登場人物からの視点で描いていく一篇。 登場人物たちの細やかな心情を浮き彫りにしつつ、読み手を不安にさせる筆致がなんとも怖い。
ウォルター・モズリイの「アーチボルド──線上を歩く者」は陰謀論満載の怪作。
新聞広告を見て謎めいた無政府主義者、アーチボルド・ローレスの代書人の仕事をすることになった、ジャーナリスト志望の学生。 仕事をはじめて早々、彼は陰謀渦巻く事件に投げ込まれることに……。 のっけから政府の陰謀を書き立てたニュースレターやら秘密暗殺部隊「キルキル・ボーイズ」なんてネタが登場して、フィクションとしての陰謀論が大好きな人にはたまらないはず。 アメリカ人は陰謀論大好きだもんなー。 陰謀論初心者の方は、本作の前に「陰謀」大全 (宝島社文庫)(別冊宝島編集部)あたりを読むと吉。 本書のニオシだ。
本書のトリを務めるのはアン・ペリーの「人質」。 カソリックとプロテスタントが対立する北アイルランド問題を背景に、休暇中のプロテスタント強硬派指導者一家に訪れた危機を妻の視点から描いている。 夫に服従することで生きてきた妻が危機に直面して徐々に自主性を取り戻していく姿とともに、いざという時には役に立たない男と、宗教が原因で殺し合う愚かさをも描き出す。 アイルランド出身の作者だからこそ書けた一作と言えるだろう。 ちなみに、カソリックとプロテスタントの和平は、最近になってやっと形になってきている(対立してきた人々が真に融和の時を迎えるまでには、まだずいぶんと時間がかかるに違いないが)。
700ページ近くのボリュームでたっぷり楽しませてくれる一冊だ。十の罪業 REDとともにオススメしたい。
- エド・マクベイン、白石 朗
- 東京創元社
- 1680円
書評/ミステリ・サスペンス
2009-02-22(Sun) [長年日記] この日を編集
_ [日常]近況
なんちゃって会社員のはずなのに、ここのところ忙しい風味。 ありえないことに、自宅でも仕事しちゃってるし。 我ながら嫌になる。
そんな訳でPlaggerで走らせているldr2gmailのメール数も3800超え。いつになったら消化出来るかなー。とほほ。
_ [読書][日常]最近の読書
今読んでいる本。
モダンPerl入門 (CodeZine BOOKS)
翔泳社
¥ 2,940
あと、今日届いた
。
VMwareな仕事が出来そうなので、仮想化特集は非常に嬉しい。
これから読む本。
2009-02-23(Mon) [長年日記] この日を編集
_ [日常]最近のマイブーム:けむタンちゃん
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2009-02-23 |
テレビCM けむタンちゃんのうた♪ 篇 (00:30) けんたんちゃんてっな けんたんちゃん うぜwwww うぜーwwww wwwwww 津... |
シュールすぐる。
2009-02-24(Tue) [長年日記] この日を編集
2009-02-28(Sat) [長年日記] この日を編集
_ [散財][日常]最近の買い物
こないだハナに壊されたイヤホンの代わりのものを購入。
audio-technica iPhone/iPod専用インナーイヤーヘッドホン ATH-CK300i WH
オーディオテクニカ
¥ 4,200
SoftBank SELECTION Jabra BT2010 Bluetooth ヘッドセット SBS-BT2010
SoftBank SELECTION
¥ 3,481
また壊される可能性も考慮して、Bluetoothヘッドセットは安いヤツにした。 まぁ、Skypeで通話に使うくらいなものだし。
それから来月、日本公開される映画『ウォッチメン』の原作も発注した。 傑作という話なので届くのをwktkしている。
_ [Windows]solipo 0.07付属のpolipoが不安定らしい
こないだ導入したsolipoだが、結構な頻度で無反応になってしまい、その度にrestartが必要だった。
いい加減面倒になってきたのでググってみたところ、作者様のblogに
0.07 に添付した polipo は若干不安定なようです。
[SimpleBoxes | solipo 0.07より引用]
ってな記述が。
ということで、polipo.exeだけをsolipo 0.06から貰ってきて入れ換えてたところ、順調に動いている模様。






