«前の日記(2009-01-28(Wed)) 最新 次の日記(2009-01-30(Fri))» 編集
RSS feed

ぽっぺん日記@karashi.org


2009-01-29(Thu) [長年日記]

_ [読書感想]児童書とバカにすることなかれ。これこそオールタイムベスト級の一冊だ──肩胛骨は翼のなごり (創元推理文庫)(デイヴィッド アーモンド/David Almond/山田 順子)

ぼくはスケリグの乾いた、冷たい手に触れた。「あなたはなに?」

スケリグはまた肩をすくめた。「なにか、だよ。きみみたいな、獣みたいな、鳥みたいな、天使みたいな、なにか」(p.217)

これはスゴイ本。

カーネギー賞とウィットヴレッド賞の二冠に輝いた児童文学の傑作が本書。 優れた児童文学の例に漏れず、本書もまた老若男女問わず、読み手の心に沁み入ってくる一冊だ。

本書の語り手は、サッカーの得意な少年マイケル。 一家そろってファルコナー・ロードに引っ越してきた。 希望に満ちた引越しのはずだったが、一家の心に影を落としていたのが、生まれたばかりの、マイケルの妹のことだった。 彼女の体調が思わしくなく、入退院を繰り返していたのだ。

引っ越し先の庭には、古びた今にも倒壊しそうなガレージが建っていた。 危険だからという理由で両親から入ることを禁じられたそこに、ある日、マイケルは忍び込む。 ガラクタで埋まったガレージの奥で、マイケルが見たものは、ほこりと蜘蛛の巣と虫の死骸にまみれた一人の男だった。 リュウマチの痛みに苦しみながらも、テイクアウトの中華料理とブラウンエールをこよなく愛す男。 隣りに住む奇妙な少女ミナとともに、マイケルはその不可思議な男を助けようとする……。

本書は訳者あとがきを入れても、250ページに満たない。 たいていの人が、2時間もかからず読み切れてしまう分量ではないかと思う。 しかし、これに倍するページ数であったとしても、これほどの深い読後感を残す小説はそうはないのではないだろうか。

文章力がないため、本書の魅力を伝えることはとても難しい。

美しい作品である。 しかし、文体は淡々と出来事を描いていくもので、ことさら美しさを強調するようなところはない。

ファンタジーであるが、寓話的なところはなく、根底にあるのはリアリズムだ。

マイケルが幼い妹の心臓の音を常に感じていることに代表される、きょうだいを思う気持ちにぐっとくる作品でもある。 だが、最近の日本の小説によく見られる「感動させてやろう」といういやらしさは微塵もない。

ひとつだけ確信をもって書けるのは、この作品をいっぺんに大好きになってしまったということだ。 私的オールタイムベストに入る作品だと言い切っていいだろう。

とにかく傑作である。 児童書とバカにすることなく、すべての人に、この奇妙で乾いていても温かい味わいをぜひ堪能していただきたい。



肩胛骨は翼のなごり

  • デイヴィッド・アーモンド/山田 順子 訳
  • 東京創元社
  • 735円
Amazonで購入
書評/SF&ファンタジー


«前の日記(2009-01-28(Wed)) 最新 次の日記(2009-01-30(Fri))» 編集
RSS feed