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2009-01-27(Tue) [長年日記]
_ 大人でも楽しめるアイルランド・ファンタジー──
プーカと最後の大王(ハイ・キング)―時間のない国で〈2〉 (創元ブックランド)(ケイト トンプソン/Kate Thompson/渡辺 庸子)
ガーディアン賞、ウィットブレッド賞児童書部門、ビスト最優秀児童図書賞の三冠に輝いた、アイルランド在住の作家ケイト・トンプソン作『時間のない国』
の続篇が本書。
ヤングアダルト作品ではあるが、バカにすることなかれ。
アイルランド(ケルト)神話や伝承を下敷きに、大人でも楽しめるファンタジーに仕上がっている。
ちなみに、続篇ではあるが、作中で前作の内容が語られているので、本書だけでも独立して楽しむことができる。
『時間のない国』で妖精の国ティル・ナ・ノグに行った少年、JJ・リディ。 あれから25年以上の歳月が経ち、彼もまた生活に疲れた中年男性となっていた。 結婚し4人の子供に恵まれたものの、彼の悩みの種は11歳の次女のジェニーだった。 ジェニーは、学校に行くことを嫌がり、常に薄着と裸足で外を歩き回るような女の子だったのだ。 また、音楽家として世界中を飛び回り家を空けることが多いのも妻、アイスリングから不満をぶつけられる原因になっていた。 自分自身でもそんな生活に嫌気が差しはじめていたJJは、本来の職業であるはずのフィドル(バイオリン)作りに戻るため、ある計画を立てはじめる。 そんなJJの前に現われたのが、彼と因縁のあるヤギの姿をした神、プーカだった……。
アイルランドの田園風景でのんびりと繰り広げられるリディ一家の珍騒動(2歳の破壊王、エイダンが最高!)や、リディ家の裏山の塚を発掘しようとする考古学者チームとジェニーのやりとりなど、中盤までは、なんとも牧歌的な物語が描かれる。
しかし、プーカや妖精が登場するにつれて徐々にストーリーは緊迫度を増し、なんと人類の存亡をかけるところまで雪崩れ込んでしまうのだ──と言っても、最後までほのぼのした雰囲気が消えないのは作者の持ち味だろう。 コミカルな作風の挿絵も、そんな雰囲気にマッチして彩りを添えている。
作中に散りばめられ、どこに転がるか検討のつかない数々の謎──プーカの目的、塚を守る幽霊、塚に行くことに執着する老人など──がストーリーの進展とともに、組み合わさり、最後にきれいに収斂する展開も見事。
物語には環境破壊に対する警鐘も盛り込まれているが、押しつけがましくない程度なので好ましいレベルだ。 リディ一家の母、アイスリングの職業がスラッシュドット・ジャパンでも話題になったホメオパシーの療養師という点が、個人的に気になったものの、深く言及される訳ではないのでとやかく言うほどのことはないだろう(欧米では一般的だそうだし)。
作者ケイト・トンプソンのストーリーテリングの妙を味わえる本書は、子供から大人まで。親子ともども楽しめる一冊と言っていいだろう。 個人的には『時間のない国で』が未読なので、これを機会に読んでみたいと思う。
- Kate Thompson、渡辺 庸子訳
- 東京創元社
- 2730円
書評/SF&ファンタジー




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