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2009-01-19(Mon) [長年日記]

_ ベテランの技が堪能できる短篇集── マーブル・アーチの風 (プラチナ・ファンタジイ)(コニー・ウィリス/松尾たいこ/大森望)

SF作家コニー・ウィリスの最新短篇集が本書。 前短篇集最後のウィネベーゴ最後のウィネベーゴ (奇想コレクション)(コニー・ウィリス/大森望編) の表題作ほど胸に迫ってくる作品はなかったが、どれも高水準の出来なのは、さすがベテラン。

収録作は次の5篇。

  • 「白亜紀後期にて」
  • 「ニュースレター」
  • 「ひいらぎ飾ろう@クリスマス」
  • 「マーブル・アーチの風」
  • 「インサイダー疑惑」

「白亜紀後期にて」は、リストラ対象になった大学の古生物学科を巡るウィリスお得意のスラップスティックもの。

どんどん周りの人が善人になっていくという一風変わった侵略もの「ニュースレター」と、クリスマスがイベント化した近未来でのラブコメ「ひいらぎ飾ろう@クリスマス」は、どちらもクリスマスが舞台となっている。 こちらもやはり、スラップスティックなノリが楽しめる。

「マーブル・アーチの風」は一変シリアスものになる。 カンファレンスに出席するために久しぶりにロンドンを訪れたアメリカ人夫妻。 楽しみにしていたロンドン滞在だが、永遠につづくと思っていた美しい思い出が色褪せていることに気付く。 そんな中、主人公である夫は地下鉄で熱と爆風に襲われる。 しかし、自分しかそれを感じていないようなのだ……。 ロンドン大空襲を絡めながら、中年の危機を描き出している一作。

代表長篇『航路』航路 上 (ヴィレッジブックス F ウ 3-1)(コニー・ウィリス/大森 望) 航路 下 (ヴィレッジブックス F ウ 3-2)(コニー・ウィリス/大森 望) を読んだ人であれば、ウィリスがオカルトや疑似科学を嫌っていることはご存知のはずだが、「インサイダー疑惑」はそんなオカルトや疑似科学をおちょくった作品だ。 しかし、普通にそのバカさ加減を指摘する、なんていう手をウィリスが使うはずもない。 インチキ霊媒師とチャネリングするのは、なんと数々のインチキや誤謬を暴いてきた懐疑主義者H・L・メンケンなのだ(と書きつつ、メンケンの名は本作で初めて知りました)。 二転三転するストーリーに驚かされる快作。イチオシです。