ぽっぺん日記@karashi.org
2009-01-05(Mon) [長年日記]
_ [読書感想][軍事]知られざる海上保安官の活躍を浮き彫りにする一冊──
これはスゴイ本。
海上保安庁といえば、海の警察・消防といえる組織である。 最近の『海猿』の大ヒット(コミックも読んでいないし、映画も見ていないので実はよく知りません)で、海難救助活動がとみに有名になった。 しかし、一方でその警察活動はあまり注目されてこなかった。
海保の特殊警備部隊SSTの隊長を勤めた著者が海難救助活動から、これまで語られてこなかった犯罪捜査、領海警備までを浮き彫りにしているのが本書である。
海保は緊急車輌を持たないため、陸上では緊急時でも制限速度を守った運転をしなければならないという、なんとも情けない事実も書かれているが、基本的にはプロフェッショナリズム溢れる海上保安官たちの姿を感じとれる一冊になっている。
本書の中でも特に目を引くのが、1992年に行なわれた「あかつき丸」によるプルトニウム輸送の警備活動である。 本書を読むまで知らなかったのだが、「あかつき丸」には著者を含む武装した海保の特殊部隊員たちが乗り込んでいたそうである。 彼らは米海軍特殊部隊SEALsによって実技訓練を受けた。 そのアレンジをしたのが船舶振興会の笹川良一というのだから、さすがというべきだろうか。
「あかつき丸」の警備については、高度な訓練と装備を持つ敵対勢力に襲撃を受けた場合には、護衛に失敗する可能も考えられた。その時のために自沈も選択肢のひとつに入っていたということである。
個人的に非常に面白いと感じたのは、「あかつき丸」の帰国に際してのマスコミ対策。 当日、東海村で「あかつき丸」の帰国を待ち受けていたマスコミに流されたひとつのニュースがあった。 それは皇太子殿下御成婚の発表だった。 青天の霹靂のニュースを受けて、一斉にマスコミは引き上げたという。 実は、これは政府による報道コントロールだったそうだ。 なんとなく無策と考えがちな日本政府であるが、やはり裏ではそれなりにしたたかな手も打っているのである。
海保に関する知識の他、特殊部隊の様々なテクニックや、MP-5をはじめとするサブマシンガンや防弾ジャケットなどの装備品に関する率直な意見なども読むことができる。 特殊部隊の基礎的な知識を得るための本としてもオススメ。
本書読了後、巻末の著者略歴を見て驚かされた。 著者は海保を退官後、ロンドンに拠点を持つ多国籍PMC(民間軍事会社)、アーマーグループに所属しているそうである。 アメリカでは特殊部隊のオペレータがPMCに引き抜かれることが問題になっていると聞くが、軍事の民営化という波は、日本の特殊部隊にも決して無縁ではないことを改めて思い知らされた。

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