ぽっぺん日記@karashi.org
2009-01-02(Fri) [長年日記]
_ 猥雑なロンドンで繰り広げられる中世歴史ミステリー第3弾──
神の家の災い (創元推理文庫)(ポール ドハティー/Paul Doherty/古賀 弥生)
14世紀後半のロンドンを舞台に、修道士アセルスタンが探偵役となって活躍するミステリー・シリーズ、〈アセルスタン修道士〉シリーズの第3弾が本書。 600年以上前の活気に満ちたロンドンの空気とともに、その臭気も感じられる一作となっている(いちおう誉め言葉です)。
托鉢修道士アセルスタンが仕える検死官、ジョン・クランストン卿は進退きわまっていた。 摂政ジョン・オブ・ゴーントの宴で、酒の勢いとプライドからクレモナの領主が語った〈緋色の部屋〉の謎を2週間以内に解くと豪語してしまったのだ。 4人が怪死したというその部屋の謎を解けなければ、クランストンが莫大な賭け金を払うはめになる。
当然のごとく、頭脳明晰な書記アセルスタンに助けを借りようとするクランストンだが、アセルスタンも問題を抱えていた。 彼が守る教会の改修工事中に、床下から白骨死体が発見されたのだ。 身元不明なことに加えて、人骨が聖人のもので、奇跡の治癒力があるという噂が広がり、それを打ち消すのに躍起になる始末。 さらにアセルスタンが修行した修道院で連続殺人が起き、修道院長よりアセルスタンに助力が求められる。 二人は三つの謎を解くことができるのか……。
本書の魅力はなんといっても、主人公のクランストンとアセルスタンの二人の主人公にある。
クランストンは大食漢にして大酒飲み。 国王勅任という役職にありながら、常にワイン袋を手離さず、放屁とげっぷを漏らしまくる。 双子の子供を溺愛し、美しい奥方には頭が上がらない。 そんなユーモラスな人間でありながら、赤ら顔の下には優れた頭脳を隠している。
一方のアセルスタンも頭脳ではクランストンに負けていない。 過去に犯した罪を償うため貧民街の教会を守り、クランストンの書記として付き従う。 聖職者らしい品行方正な毎日を送りつつ星の観測に情熱を注ぐも、教区の未亡人に口に出せない恋心を抱いている。
まったく違う性格の二人であるが、かたい友情で結ばれているのだ。
もうひとつの魅力がクランストンとアセルスタンが歩くロンドンの町並みとそこに生きる市井の人々が活写されていることだ。
といっても、ファンタジー小説の消毒されたかのような小綺麗なものではない。
強烈な悪臭が漂う。
ネズミが走り回る。
街路にはゴミや汚物が溢れている。
さらに人命まで簡単に奪われてしまう。
貧民街に住む人々の営みは
図説「最悪」の仕事の歴史(トニー・ロビンソン/日暮 雅通/林 啓恵)に描写されるもの、そのものだ。
そんな猥雑なロンドンの姿が本書のページから立ち上がってくる。
犬猫の死体や排泄物、ゴミが流れるテムズ川を見て、クランストンは言う。
「昔の地図を研究したことがある。ローマ人が町に下水を作り、水を洗い流して洗い清めていたのを知っているか? わたしたちだって、おなじようにしてもいいじゃないか」(p.296)
しかし、ロンドンに下水道が完備されるのが、感染地図—歴史を変えた未知の病原体
に描かれたように、実に200年以上後になることを考えると興味深い。
基本的にシリーズものは一作目から読むことにしているのだが、本書に関しては既刊シリーズを読まずに読了してしまった。
本書が非常に面白かったので
毒杯の囀り (創元推理文庫)(ポール・ドハティー/古賀 弥生)と
赤き死の訪れ (創元推理文庫)(ポール ドハティー/Paul Doherty/古賀 弥生)を購入した。
クランストンとアセルスタンの活躍を遡って楽しみたいと思う。
- ポール・ドハティー/古賀 弥生 訳
- 東京創元社
- 987円
書評/ミステリ・サスペンス
_ 今日のできごと
箱根駅伝の合間に、ゴミ捨て場の掃除(今週当番なので)、墓参りをやり、往路優勝を見届けてから買い出しに出掛けるなどしていたら、あっという間に一日終わっていた。
別に動いていない訳ではないんだけど、なんだか早いなー。
今日も義父と囲碁を一局した。 負けたけど、昨日よりも良い調子。熱戦だった。





まで頂ければ幸いです。