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ぽっぺん日記@karashi.org


2008-12-31(Wed) [長年日記]

_ 2008年ふりかえり

日記を読み直して、2008年をふりかえってみた。

なんといっても一番デカいイベントは、ハナが来たこと(我が家に子犬が来た! - ぽっぺん日記@karashi.org(2008-08-29))。

ホントにあっという間に大きくなって、貰ってきた時は、4キロくらいしかなかった体重は、もう10キロを超えるくらい。 いたずらばかりしているけれど、可愛くてホントに来て貰ってよかったなぁーと心から思っている。

今年は散財の年だった。 MacBookに、デジイチに、とどめにiPhoneまで買ってしまった。 Appleとはほとんど縁のない生活を送っていたのに、一気にマカーの仲間入り。:-)

来年はちょっと節約したい。 でも、Macが好きになったので、もう1台欲しかったりもするんだけど。

10月と11月に事故に遭遇するという、なんだかスゴイ年でもあった。

大きなケガをしなかったのは不幸中の幸い。

健康第一ということで、来年も大病せず健康に過ごしたいところ。

_ 2008年のKPT

2007年のKPT読みかえしつつ、2008年のKPT。

Keep

  • 健康第一
    • 今年は車をぶつけられて病院に行くというアクシデント以外には、医者の厄介にもなっていないので、来年もこの調子でいきたい
  • 本を読むペースはこんな感じでつづける
  • タイピングは1週間ほど練習してそれなりに早くなった

Problem

  • 荷物はあまり減らせなかった
    • 蔵書は減るどころか、増えている感じ
  • 技術書をほとんど読まなかった
    • 世の中に、面白い本が多すぎるのが悪い気がしないでもない
  • 顔を広げることができなかった
    • 人見知りがはげしいのは生まれつきな感じがするので、どうしようもない気がしないでもない
  • 英語の勉強をまったくしなかった
    • 英語を普段から使う環境にいないのが原因かなー
  • ほとんどOSS関連へのアウトプットをしなかった
    • うむむ。これは来年がんばりたい

Try

  • もうちょっと文章をうまく書けるようにする
    • 日記を読み直す度に嫌になるので
  • 荷物を減らす
    • 主に蔵書を減らす方向で
  • 技術書も読む
    • 大量の積読も消化したいところ
  • プログラミング言語をいくつか齧って、引き出しの数を増やす
  • OSS関連へのアウトプットを増やす
  • 来年はますます不景気になりそうなので、職を失わないよう仕事をがんばる(ぉ
  • カメラをもうちょっと勉強する

_ 2008年に読んだ30冊のスゴイ本

今年も良い読書ができた年だった。 去年はエンタメ・ノンフが豊作だったが、今年は傑作小説が豊作。

来年も良い読書ができますように。

今年読んだスゴイ本を

  • ノンフィクション
  • フィクション
  • 軍事

に分けて10冊ずつリストアップしてみる(上下巻を入れると、優に30冊を超えたしまっているけど、そこらへんはご愛嬌)。

ノンフィクション

プリオン発見の歴史を紐解くスゴイ本──眠れない一族-食人の痕跡と殺人タンパクの謎

原因不明の奇病に悩まされるイタリアの一族を軸に、狂牛病の原因であるプリオンまで話が展開される医療系のノンフィクションが本書。 ミステリー的な面白さもあり一気読みできる一冊だ。

本書では、プリオンを発見した功績によりノーベル賞を贈られたガイジュシェックとプルジナーという2人の科学者が取り上げている。ただし、この2人、お互いに相手のことを嫌悪している点は横に措くとしても、はっきりいってまともな人間ではない。

公衆衛生の幕開けを描いたスゴイ本──感染地図-歴史を変えた未知の病原体

本書は19世紀半ばのロンドン・ソーホーで発生したコレラ禍をきっかけとして生まれた公衆衛生の幕開けを描いている。

新型インフルエンザ・ウィルスが誕生する危険性が高まっている昨今だが、

人類とウィルスの戦いはこれからもつづくだろう。我々が持つ最大の武器は迷信に惑わされない理性だ。

ということは肝に銘じたい。

現代の鯨捕りたちの姿を描き出す傑作ノンフィクション──煙る鯨影

シー・シェパードが日本の調査捕鯨に対して妨害活動を行なっているというニュースは記憶に新しいが、実は日本沿岸での商業捕鯨も行なわれているということは本書で初めて知った。 しかし、それも行なっているのは小型捕鯨船5艘だけだ。

本書からは、巧みに逃げる鯨を自らの経験と運を頼りに追う乗組員たちの男くさくも魅力的な姿が立ち上がってくる。

また、本書は、終始著者に対して心を開くことがなかった捕鯨船の船長の姿を通して、言ってみれば「外部の人間」にしか過ぎない取材者が取材対象者との間に「理解」や「共感」という共通の感情を持つことがいかに難しいことであるかを伝える。

カラヴァッジョという病に感染した人々──消えたカラヴァッジョ

200年もの間行方が分からなくなっていた、イタリア・バロック期の天才画家カラヴァッジョの傑作『キリストの捕縛』。 この絵画の真作が1990年に発見された経緯を描いたノンフィクションが本書。 歴史ミステリー仕立てとなっていて、美術オンチにも楽しく読める一冊だ。

『キリストの捕縛』の失われた200年の歴史を明らかにすることとなったのが、ローマ大学で美術史を専攻する24歳のイタリア娘2人組の功績によるものだとは、まるで映画かマンガのストーリーのようだが、ホントの話。 本書の前半では、彼女たちの活躍が生き生きとした筆致で描かれている。

人間が不合理な生き物であることをユーモア溢れる語り口で浮き彫りにする一冊──予想どおりに不合理-行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

我々の行動がいかに不合理であるかとともに、それが予想できるということを数々の実験から明らかにしてしまった書。

著者は実験のため、チョコレートやコーヒー、ビールを学生たちに無料で振る舞い、大学バスケットボールのチケットのダフ屋をやり、不正ができる環境をワザと作り学生にテストを受けさせる(もちろん、経済的利益はなく、被験者の同意も得た上で)。中には、若く健康な男子学生に「女性の靴に性欲をかきたてられますか?」「60歳の女性とセックスをする自分を想像できますか?」などという質問を普通の状態と自慰中にし、その回答に差異があるかを調べるなんていうキワモノもある。

本村洋さんの闘いの真実──なぜ君は絶望と闘えたのか

光市母子殺人事件の被害者、本村洋さんの等身大の姿を描き出す一冊。

9年間に渡り、本村さんを見つめつづけた著者が浮き彫りにするのは、そんな本村さんの真の姿と、彼が絶望の淵から這い上がるのに手を貸した人々である。それは彼の両親や亡くなった妻・弥生さんの母はもちろんのこと、会社の上司、酒鬼薔薇事件の遺族である土師氏をはじめとする犯罪被害者の人々、はては事件発生当時、彼を厳しく取調べた刑事にまで及ぶ。

汚染されていると分かっていても海外から運ばれてくる食料を食べるか、手間がかかっても食料を自分たちで作るか──食料植民地ニッポン

去年に引き続き、食品偽装に揺れた1年だったが、本書はそれよりも深刻な食料植民地というでもいうべき日本の実態を浮き彫りにする。

アジフライの尻尾に衣がついている、海老フライの尻尾が欠けている、魚フライから小骨一本出てきた──こんなことがあれば、たちまちクレームである。食料輸出元が値段を買い叩くくせにクレームが多い日本に愛想を尽かし、文句も言わず高く買ってくれる他国へと輸出先をシフトする「買い負け」が起きるだろうと著者は警告する。 本書で述べられる著者の主張を乱暴にまとめてしまえば、我々がとるべき道は次のふたつとなる。 汚染されていると分かっていても海外から運ばれてくる食料を食べるか、手間がかかっても食料を自分たちで作るか、である。

大量殺人者と秋葉原事件の犯人像との共通点に戦慄する──犯罪捜査の心理学-プロファイリングで犯人に迫る

犯罪捜査におけるプロファイリングから犯罪者の心理までを浮き彫りにしている書。

これらがつい先日、6月8日に起きた秋葉原無差別殺傷事件の犯人像とぴたりと重なることは一目瞭然だろう。無差別大量殺人者に共通する要素がこれほど明確なものだということに戦慄を覚えた。

漫画と漫画家への深い愛が感じられる評論集──漫画ノート

「BSマンガ夜話」で辛口なコメントをすることで有名な著者による、漫画とそれを描く漫画家への愛がこめられた評論集。

どの評論も作品とともにその作者という人間まで描き出す鋭い切れ味であるし、文章の質も高い。正直なところ、内容、文章ともにこれほど高いレベルでバランスのとれた漫画評を読んだのは初めてではないかと思う。

「イラク」という名のパンドラの箱から飛び出した混沌を描き出す──イラク崩壊-米軍占領下、15万人の命はなぜ奪われたのか

これまで読んできたイラク関係の本の中でも最も衝撃を受けた一冊だ。自分がいかにイラク情勢を理解していなかったを痛感させらる。

アメリカが「イラク」というパンドラの箱を開けたということは事実だ。本書を読めば、そのパンドラの箱から飛び出した「混沌」がどのようなものなのかを知ることができるはずだ。

フィクション

フロストを読まない人は人生の10%くらい損をしている──フロスト気質

本書がきっかけで、これまで未読だった「フロスト」シリーズに、夏休みの1週間どっぷり漬かることになってしまった。 稀代の仕事中毒刑事フロストの大活躍をご覧あれ。

「フロストを読んでいない人は、人生の10%くらい損をしている」と言っても決して大袈裟ではないのではないかと思う。マジで。

デニス・ルヘイン『運命の日』を全力でオススメする

本書は1919年に起きた警官のストライキを題材とした歴史小説であるが、それだけでなく、警官である親子の確執と愛を描いた警察小説であり、人種や社会的地位を越えた男たちの友情小説であり、すぐそこにある本当の幸せを見付けるためにわざわざ遠回りをしてしまう男の悲しさを浮き彫りにした小説である。

トム・ロブ・スミス『チャイルド44』を全力でオススメする

1953年のソ連を舞台に、全体主義体制下で起きる猟奇連続殺人と、それを追う捜査官の姿を描いた一作。

実際にあったチカチーロ事件をモチーフに、時代を30年以上ずらしたソ連を舞台にして作者が徹底的に描いていくのは、ソ連という全体主義国家が内包していた「歪み」である。

本年エンターテイメント小説における最大の収穫のひとつ──『新世界より』

ロハスな文明と奇妙な生物たちが生きる1000年後の日本を活写したSF大作。

ユートピアと思われていた世界がディストピアに一気に転換する展開が見事だ。 キチンとディストピアである理由もストーリーに折り込まれている点も素晴しい。

本書を読んだ読者は千年後の「新世界」の空気を感じ取ることができるに違いない。もちろん、それは限りなく悪夢に近い世界ではあるが。

ベテランの手練の技を堪能していただきたい。

琉球王国の衰亡を描いた池上永一の『テンペスト』を全力でオススメする

寧温という一人の男として生きることを選んだ美少女、真鶴を主人公に、琉球王国の滅亡を描いた大作。

清と薩摩藩の二重支配を受けながら、軍隊を持たず、美と教養のみを武器として、絶妙なバランス感覚で中立を保っていた琉球。しかし、アヘン戦争を契機とする清の衰退、列強のアジア進出、明治維新はそのバランスを崩し、その独立は徐々に危ういものとなってなっていく。寧温は独立を守るため奮闘するが、健闘虚しく、明治政府の琉球処分により王国は滅びることとなる──。作者は外交の第一線で活躍する寧温を通して、琉球を揺がした激動の時代を鮮やかに描いている。

『時間封鎖』は『宇宙消失』を超えた地球封鎖SFだ!

イーガンの『宇宙消失』に似た地球封鎖というネタながら、1億倍の時間加速と火星テラフォーミングという大技が繰り出される傑作SFだ。

SFとこの人間ドラマを両立させているところに、作者ウィルソンのスゴさがある。あまりに人間ドラマを重視すれば、SFとしての面白さが削がれるし、SFばかりを書き込めば、完全にマニア向けの作品となってしまう。その中間を行く絶妙な匙加減により、本書は単なるSFを超えた作品へと昇華されているのだ。

シモンズの多芸ぶりが堪能できる傑作──ザ・テラー-極北の恐怖

大西洋と太平洋を結ぶ北西航路発見のため、イギリスより〈エレバス〉と〈テラー〉の2隻の軍艦で北極に向かった末に消息を断ったサー・ジョン・フランクリン率いる探検隊をテーマにしたダン・シモンズのホラー小説。

全滅という運命に見舞われたフランクリン探検隊はそれだけでも悲劇ではあるのだが、しかし、それだけでは終わらないのがストーリーテラー、シモンズだ。大胆な想像力と怪物という超自然的要素を加えて、読み応えのある作品に仕上げている。

英国紳士、エデンへ行く

時は1857年のヴィクトリア朝英国。英国植民地タスマニアに、アダムとイブが追放されたエデンの園があると信じた英国人3人組の遠征隊と、密輸で儲けるつもりがひょんなことから彼らをタスマニアまで運ぶことになった英国王室領マン島人船長の物語に、アボリジニの母親と白人の父親の間に生まれた少年の成長が絡んでくるというのが本書の骨子。

数多くの語り手たち(総勢なんと20名!)を登場させ、多角的な視点から物語が紡がれていく。登場人物は多いが、それぞれがきっちり書き分けられているので、リーダビリティを損ねていない。著者の筆力の高さの現れといっていいだろう。人種差別の愚かさを浮き彫りにするブラック・ユーモアで締められるラストも良い。

植民地化における影という重い話題を扱いながらも、最後までユーモア小説の枠組みは崩さず、エンターテイメントに徹した著者の姿勢には拍手。

影の棲む城

ロイス・マクマスター・ビジョルドの異世界ファンタジー〈五神教〉シリーズ第2弾。

ビジョルドの卓越したストーリーテリングにぐいぐい引っ張られて、睡眠時間が奪われること必至なので注意すること。

未読の方はシリーズ第1弾のチャリオンの影も一緒にどうぞ。

きみのためのバラ

2007年の作品だが、素晴しい短篇集だったのであげておきたい。

なんといっても表題作「きみのためのバラ」が出色の出来。

満員電車の中を渡るという日常の一コマから、ポスト911ともっと牧歌的だった時代を対比させる手腕が見事だ。多くを語らずとも、今の世界が失なったものを浮かび上がらせる。

軍事

大祖国戦争を戦った女性兵士たちの証言──戦争は女の顔をしていない

今年読んだ軍事本の断トツ1位。

第二次世界大戦(ソ連呼称:「大祖国戦争」)を戦った女性兵士たちの声を丹念に集めたインタビュー集が本書。

ひとつひとつのインタビューは決して長いものではない。例外的に10ページ前後のものもあるが、そのほとんどが1ページに収まるものだ。中には数行というものもある。しかし、その証言がひとつひとつが強烈に胸に迫ってくるのである。

備えあれば憂いなし──「戦争」の心理学 人間における戦闘のメカニズム

「なぜ兵士は敵を殺せないのか」をテーマにした 『戦争における「人殺し」の心理学』を著した著者が、「戦士たち*1が精神的なダメージを受けずに敵を殺すためにはなにが必要なのか」を浮き彫りにしているのが本書。

著者は 「テロリストや犯罪者といった悪から一般人を守るためには番人たちが法や正義に基づいて行使する暴力が必要」という実利的なスタンスで本書を記している。そこに「正義とはなにか」や「どんな状況で暴力は許されるのか」といった抽象的な問いが入る余地はない。それゆえに本書を受け入れ難く感じる人もいるとは思うのだが、どんな信条の人であっても読む価値がある書だと断言しておきたい。なぜなら思想・心情に関係なく降りかかる事件や事故、災害に対処するためにも本書は役に立つに違いないからだ。

戦争を経済から斬る!──戦争の経済学

戦争を「巨大公共投資」と見なし、経済学的なアプローチで読み解こうとしている意欲作が本書。

それなりに長い間、軍事オタクをやっているが(わりに、水たまりのように浅い知識だが)、のっけから著者が提示する「戦争にかかる費用は年々安くなってきている」という視点には、目からウロコ。

心理学から戦争を読み解いた『戦争における「人殺し」の心理学』や、経営学から日本軍を考察した『失敗の本質』と並び、今後、戦争の本質を考える上で欠かせない一冊になるのではないかと思う。

テロリズムを情緒ではなく論理に従って考える時代に突入した──テロの経済学

「貧困がテロを生む」という考え方に真っ向から異を唱えた書。

  • テロリストは十分な教育を受けており、裕福な家庭の出である傾向が多い。
  • 教育を受け、高収入な人々の方が、社会的に恵まれない人々よりも過激な意見を持つとともに、テロリズムを支持する傾向がある。
  • テロリズムを独占的に起こす宗教はない。

といった事実を、感情を排した冷徹な分析から浮かび上がらせている。

第二次世界大戦時の暗号戦に新たな光を当てる傑作ノンフィクション──エニグマ・コード-史上最大の暗号戦

第二次世界大戦中、ドイツ軍の暗号作成に使われたエニグマとそれを解読した連合国について描いたノンフィクション。

近代コンピュータの祖アラン・チューリングをはじめとする数学者だけではなく、エニグマ解読に貢献した軍人たちにも光を当てている。 007シリーズの著者イアン・フレミングも登場します。、

これまでにも暗号の歴史を綴った名著『暗号解読』(サイモン・シン)など、エニグマの解読を扱った本は数多く出版されているが、著者は綿密な取材と新たに発見された資料を活用し、暗号戦に新たな光を当てている。エニグマ解読本の決定版といってもいいデキの一冊だ。

現実主義に立脚した国際貢献を提言する一冊──自衛隊の国際貢献は憲法九条で-国連平和維持軍を統括した男の結論

国際NGOの一員として活動した後、独立後の東チモールで暫定行政機構の民政官として県知事を勤め、シエラレオネ、アフガニスタンでDDR活動 (=Disarmament Demobilization Reunification:武装解除・動員解除・社会復帰)を行なった著者が、日本が行なうべき国際貢献を提言した書。

著者の主張に同意できない人もいるのではないかと思うが、一読の価値はあるはず。

アフガニスタンで日本が主導した武装解除活動がスムーズに進んだ最大の要因は日本への「美しい誤解」にあった、と著者は述べる。現地の人々は、日本がアメリカの同盟国としてインド洋で給油活動をしていることを知らず、戦争をやらない唯一の国だと思っていた。だからこそ、日本を信用したのだ。

マリアナ沖海戦-母艦搭乗員激闘の記録

1944年に起きたマリアナ沖海戦。 日米の機動部隊が激突した史上最大の空母戦を、綿密な調査により日本側の視点から詳細に描き出しているのが本書。 まさに労作の名にふさわしい一冊だ。

著者は、各航空隊の生い立ちから筆を起こし、それらの部隊がどのように訓練を積み、どう強大な米空母部隊に戦いを挑んだかを描き出すとともに、マリアナ海戦後の運命にまで筆を伸ばしていく。母艦航空隊を陸上基地に派遣して行なわれた「い号作戦」や「ろ号作戦」が招いた消耗や、訓練時の事故や機材の不良、空輸で多数の搭乗員と機材が失われたという事実、零戦を戦闘爆撃機化した経緯など、非常に興味深く読んだ。

中国戦線における陸軍航空隊の戦いの実態──中国大陸の隼戦闘隊-1943-45年 飛行第25戦隊と48戦隊 & 中国大陸の鍾馗と疾風-1943-45年 飛行第9戦隊と85戦隊

ホントは2冊だけど、あわせて1冊のような感じなので。

太平洋戦線と比べると、ぐっと知名度が落ちる中国戦線での陸軍航空隊の戦いを描き出しているのが本書。 こちらも労作の名にふさわしい。

本書を読んで意外だったのが、米中の空軍に手もなくやられてしまったと思い込んでいた陸軍航空隊の善戦ぶりだ。まぁ、「善戦」と称するかどうかは読者の判断によって異なってくるとは思うが、電波警戒機(レーダー)を利用した邀撃を積極的に行ない、強敵P-51を含む敵機を数多く撃墜し、終戦まで一定の練度を保ったという点を見れば、互角に近い戦いをしていたと評してもいいのではないかと思う。

第三帝国の興亡

ドイツに駐在し、ヒトラー政権の誕生や第二次世界大戦勃発、対仏戦などをその目で見たジャーナリストが、ヒトラー率いるドイツ第三帝国の興亡を描いたシリーズ。 まだ完結していないが、スゴイ本としてあげておきたい。

あ、これも1冊じゃないけれど、分冊みたいなものなのでご勘弁を。

感想は下記に。

軍事ネタをネタとして楽しむ一冊──戦争のリアル Disputationes PAX JAPONICA

毎年2月26日に戦争をテーマにしたトークイベント「226イベント」を行なっている映画・アニメ監督、押井守と軍事評論家、岡部いさくの対談集。

自衛隊の装備を通して、「戦争のリアル」を持たない日本人の戦争観を浮き彫りにするというのが本書の建前であるのだが、実際は重度の軍事オタクである押井守が岡部いさくを合いの手にして、小銃にはじまり、携行対戦車兵器、戦車、次期戦闘機、軽空母保有論までと様々なネタを喋りまくっている一冊だ。

*1 著者は兵士や法執行官といった職業として戦闘に携わる人々をこう呼んでいる。

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