ぽっぺん日記@karashi.org
2008-11-21(Fri) [長年日記]
_ 邪神狩人タイタス・クロウが帰ってきた!……のだが、しかし──
タイタス・クロウの帰還―タイタス・クロウ・サーガ (創元推理文庫)(ブライアン ラムレイ/Brian Lumley/夏来 健次)
優れた霊能力を持つタイタス・クロウと旧支配者たちの戦いを描く全6巻シリーズ〈タイタス・クロウ・サーガ〉の第二弾が本書。
前巻『地を穿つ魔」の感想の最後に
続刊が訳されたら買うので、続けてください。おながいします。 > 創元社様
[ 地を穿つ魔 <タイタス・クロウ・サーガ> (創元推理文庫)(ブライアン・ラムレイ) - ぽっぺん日記@karashi.org(2006-01-21)より引用]
と書いてから早2年余。 遂にタイタス・クロウが帰ってきた! 続篇が刊行されたことをまずは喜びたい。
しかし、肝心の内容はというと……少々期待はずれだったというのが正直なところだ。
CCD(=クトゥルー眷属邪神群)の襲撃を受け崩壊するブロウン館から、〈ド・マルニーの掛け時計〉を使い、タイタス・クロウと盟友アンリ・ド・マリニーが何処の次元へと脱出してから10年。 長らく行方不明になり、死亡したものと思われていたアンリが半死半生の身でテムズ川に浮いている姿を発見された。 失踪している間の記憶を失っていたアンリだが、彼の身体はこの10年の歳月を感じさせない肉体年齢を保っていた。 タイタスの行方はいっこうに判然としない中、アンリは夢の中で彼の助力を求めるタイタスの声を聞きはじめる……。
新しい知識と能力を携えてタイタスが帰還し、いざ、CCDとガチンコ勝負かと思いきや、実は時空を超えるスペースタイムマシンだった〈ド・マルニーの掛け時計〉でのタイタスの旅路の様子が延々と語られるという展開に、かなり拍子抜け。
タイタスが白亜紀で翼龍や巨大ヤドカリのエサになりかけたり、惑星に墜落してロボットに助けられたり、ローマ時代で囚われの身になったり、旧神の国エリシアへ召喚されたりというストーリーはクトゥルー神話で味付けされたファンタジーとして考えれば充分、及第点だが、コズミック・ホラーな要素がほとんどなく、ホラーなクトゥルー神話作品が好きな人間としては寂しいかぎりだ。
また、初老でとっつきにくい印象の霊能探偵であったタイタスが若返り旧神に近いヒロインとのロマンスを演じるというのも、どうにも『タイタス・クロウの事件簿』や『地を穿つ魔』で語られてきたキャラクター造形にそぐわない気がしてならなかった。
独自のクトゥルー神話の要素としては、クトゥルーの娘クティーラなんていうものも登場するのだが、邪神殲滅機関〈ウィルマース・ファンデーション〉の指導者ピースリー教授の語りに、ちょこっと出てくるだけという具合で、いまいちな印象である。 その〈ウィルマース・ファンデーション〉にしても、 〈デルタ・グリーン〉をはじめとして、クトゥルー神話と戦う人間組織という設定が大好きなため、活躍を読めることを期待していたのだが、本書ではあまり触れられておらず残念。
ちなみに、ピースリー教授が語る数少ない〈ウィルマース・ファンデーション〉の活動によれば、彼らはクトゥルーの眷属を殲滅するため、太平洋に半減期の短い放射性同位体を散布し(他の海洋生物に被害を与えないように注意深く、という注釈はついているが)、インスマス沖の〈悪魔の岩礁〉を核爆弾で攻撃したそうである。 オイオイ。
寂しかったり残念だったりと、今一つの読後感だった本書であるが、いわば新生タイタス・クロウの開幕篇とでも呼ぶべきもの。 本篇に突入するはずの次巻では、本書では見られなかったタイタス vs CCDの激突と〈ウィルマース・ファンデーション〉の活躍が読めることを期待したい。
ということで、早い続刊をおながいします。 > 東京創元社様
- ブライアン・ラムレイ/夏来 健次 訳
- 東京創元社
- 1050円
書評/ミステリ・サスペンス





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