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ぽっぺん日記@karashi.org


2008-11-11(Tue) [長年日記] この日を編集

_ [読書感想]スウェーデン発国民的ベストセラー・ミステリー第一弾──『ミレニアム1』(スティーグ・ラーソン)

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上(スティーグ・ラーソン/ヘレンハルメ美穂/岩澤雅利)

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 下(スティーグ・ラーソン/ヘレンハルメ美穂/岩澤雅利)

スウェーデン発世界的ベストセラー三部作の開幕篇が本書。

なんと人口900万人のスウェーデンで三部作合計で270万部を売り上げ、全世界では合わせて700万部を売り上げたというのだから、びっくりしてしまう。 特にスウェーデンでは単純計算で4人に1人、三部作を一人が買ったと計算しても10人に一人は買ったということになるので、国民的ベストセラーといって間違いないだろう。

さらに、作者スティーグ・ラーソンは三部作を書き上げた後、刊行を待たずして50歳の若さでこの世を去ったということで、なんとも運命的なものを感じてしまう。

今回、『予想どおりに不合理』につづいて、早川書房さんから本が好き!経由でプループをいただいて読んだのだが、たしかにベストセラーになるだけのことはある面白さだ。 675ページという長尺ではあるが、ぐいぐい引っ張られて休日一日で読み切ってしまった(ちなみに刊行時には上下巻になるとのこと)。 三部作ではあるが、本作のストーリーは一冊で完結しているので、「つづきを待つのはいやだ!」という人にもオススメできる。

主人公は、スウェーデンの月刊誌『ミレニアム』の発行責任者を務めるミカエル・ブルムクヴィスト。 次々と経済界の不正を暴いてきた彼だったが、罠にはまり、実業家ヴェンネルストレムの違法行為を暴露した記事を巡る名誉毀損裁判で有罪の判決を受けてしまう 。多額な賠償金の支払いと禁固刑を命じられたミカエルだったが、なによりも苦しいのは今まで築き上げてきた『ミレニアム』の信用が地に堕ちてしまったことだった。 『ミレニアム』の立て直しに悩むミカエルの元に、一本の電話がかかってくる。 それは20年前に表舞台から姿を消した、財閥ヴァンゲル・グループの元会長ヘンリック・ヴァンゲルの顧問弁護士からのものだった。 ヘンリックがミカエルと会うことを希望しているというのだ。 ヘンリックに会うことを渋るミカエルだが、好奇心に負け、ヘンリックが住むヘーデビー島に赴く。

……という導入から経済犯罪小説的な展開になるのかと思いきや、ここでストーリーは一気にミステリーへと舵を切る。 ヘンリックはミカエルに言う。 40年前に突如、島から姿を消した姪ハリエットになにがあったを突き止めて欲しい──。

当時、島と本土を結ぶ橋でタンクローリーが炎上する事故があり、島と本土を行き来するができなかった。 そんな一種の密室状態の島からハリエットは失踪してしまったのだ。 ヘンリックはヴァンゲル一族の誰かが彼女を殺した信じていた。 巨額な報酬にも心が動かず、依頼を断わろうとするミカエルだが、ヘンリックがヴェンネルストレムを有罪とする資料を渡すことを約束したため依頼を受けることを承諾する。

一方、フリーランスの女性調査員リスベット・サランデルはヴァンゲル・グループよりミカエルの身辺調査を依頼され、名誉毀損事件について個人的な興味を持つ。 そんな彼女にもたらされたのは、ミカエルの助手としての仕事だった──。

臨時のコンビを組んだミカエルとリスベットは40年前の事件に挑んでいく。 事件の新事実を明らかにつれ、失踪事件は新たな様相を見せはじめる。 そして、真相に近づく彼らにも魔手が……。

というのが、だいたいのあらすじだ。

本書のテーマは、各章の扉に付されたスウェーデンの女性が遭った性暴力事件の統計やハリエット失踪事件から浮かび上がる真相、そして、登場人物の一人を襲う悲劇からも分かる通り、女性に対する虐待である。 遠く離れた日本からは「福祉の国」というイメージが第一にくるスウェーデンだが、その影には女性たちの叫びが隠れていることを本書は浮き彫りにしていく。

女性や子供が犠牲になる作品を読むと、どうしても陰鬱になってしまうのだが、しかし、本書は決して暗い一辺倒ではない。 男性の女性への暴力を描く一方で、同じ男性であるミカエルを魅力溢れる好人物としても描いているからだ。 悪は徹底的に糾弾し、女性には優しいというミカエルの男前ぶりがなんともいい。 モテまくりのミカエルだが、それが男から見ても嫌味になっていないあたりに、亡くなった作者もいい男だったんだろうなぁと想像させるものがあった。

登場人物に多少まとまりのなさが見られるものの、非常に面白く読めた本書なので、やはりつづきが気になる。 本作で結成されたミカエルとリスベットのコンビは、次にどんな事件に立ち向かうのか? ミカエルとリスベット、それにミカエルの長年のパートナー、エリカを交えた三角関係はどうなるのか? 第2部は来年4月、第3部は来年7月に刊行予定ということなので、首を長くして待ちたいと思う。

ちなみに、ミカエルやリスベットはiBookやPowerBook使いなので、Macユーザであれば、さらに好感度アップしながら読めるかもしれないです。:-)*1

2008/12/9追記

書影を掲載。


ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上
スティーグ・ラーソン/ヘレンハルメ美穂/岩澤雅利
早川書房
¥ 1,700

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 下
スティーグ・ラーソン/ヘレンハルメ美穂/岩澤雅利
早川書房
¥ 1,700

*1 MacBookユーザである私がそうだった。


2008-11-08(Sat) [長年日記] この日を編集

_ [読書感想]人間が不合理な生き物であることをユーモア溢れる語り口で浮き彫りにする一冊──予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」(ダン アリエリー/Dan Ariely/熊谷 淳子)

これはスゴイ本だ。 我々の行動がいかに不合理であるかとともに、それが予想できるということを数々の実験から明らかにしてしまった書なのである。

本書の著者は、MITで教鞭をとる行動経済学者である。 行動経済学とはなにか? シェークスピアは『ハムレット』にこう書いた。 「人間とはなんという傑作だろうか」──これが伝統的な経済学の基本的な考え方だ。 傑物である人間はいつだって合理的に振る舞うはずという前提があるのだ。 だが、実際のところ、我々は合理的とても言えない。 そうであれば、ダイエット中の間食などしないはずだし、衝動買いもするはずがないし、つまらないことにお金を費さず貯蓄しているはずなのだ。

しかし、それら不合理な行動が行きあたりばったりで分別がないものかといえば、そうとも言えない。 それらは我々のほぼ全員に共通する系統的なものであり、何度も繰り返すものなのである。 それゆえ、不合理な行動を予測することは可能である──これが行動経済学の考え方だ。 行動経済学は、本書のタイトルが示す通り、このような「予想どおりに不合理」な人間の振舞いを研究する心理学と経済学の両面を持った新しい学問なのである。

著者は様々なテーマと取り上げ、我々の不合理な面を浮き彫りにしていく。 たとえば、「我々にとって、どれだけ価格の基準が曖昧なものであるか」「我々がどれだけ無料というものに弱いか」「我々のやる気は、どれだけ金銭面での報酬以上に社会規範に影響されるか」といった具合である。

本書の優れている点は、すべてのテーマについて、著者自らが行なった実験による裏付けがなされているということだ。

著者は実験のため、チョコレートやコーヒー、ビールを学生たちに無料で振る舞い、大学バスケットボールのチケットのダフ屋をやり、不正ができる環境をワザと作り学生にテストを受けさせる(もちろん、経済的利益はなく、被験者の同意も得た上で)。 中には、若く健康な男子学生に「女性の靴に性欲をかきたてられますか?」「60歳の女性とセックスをする自分を想像できますか?」などという質問を普通の状態と自慰中にし、その回答に差異があるかを調べるなんていうキワモノもある。

著者はそれらの実験の過程と結果を軽妙な語り口で描いていくが、その裏には「科学は実験によって実証されなければならない」という強い信念が見える。 そこに著者の科学者としての良心を見ることができるだろう。

著者が証明していく人間が持つ数々の不合理な面については、自分がどんなに合理的だ、と考える人でも該当するものがあるに違いない。 それらについては実際に本書を読んで確かめて欲しいが、個人的にズバリ当てられたものを紹介しておこう。

人間がある品物を買おうと決意した時、その価格がまるで錨(アンカー)のように類似商品の価格の判断基準となってしまう。それから常にその価格が高い安いの基準となってしまうというのである。 たとえば、私の場合でいえば、2ヶ月前に一眼レフカメラを買った。 その時の価格は下取りとキャッシュバックを入れて、約6万円。 これが私にとってのアンカーなのだ。 それ以来、一眼レフカメラを見ると、その約6万円を基準に「高いな」「安いな」と考えてしまっている。 まさに著者の言う通りだ。

これまで豪勢な生活を送っていた人間が経済的に破綻してしまった後もそのような生活を続けてしまうという、よく聞く話(最近で言えば、先日逮捕された小室哲哉がよい例だろう)もアンカーで説明できる。 つまり、豪勢な生活レベルにアンカーがアンカリング(係留)されてしまっているため、生活レベルを落とそうと思っても価値基準が引き戻されてしまうのである。

こういう事態を避けるため、著者はまず自分の習慣や価値基準を見つめ直し、長いあいだに渡って同じ決断を続けそうな事柄(服装や食事)などを決める際にも熟考する必要があると述べている。

しかし、そう書いている著者にも、こんな不合理なエピソードがある。 数年前に勤務する大学をMITにするか、スタンフォードにするかで迷った著者は、両校の職場環境を調べるのに時間を費した。 そのうち、その調査にあまりにも熱中しすぎて、ついに肝心の研究がおろそかになってしまったそうだ。 人間とはどんなに分かっていても(たとえ、行動経済学のエキスパートでも!)不合理に振る舞ってしまう生き物らしい。

本書は二種類の人にオススメしたい。

まずは自分が合理的だと考えている人である。 読めば、自分の持つ不合理な一面を知ることができるはずである。 そして、それを避けるための知識を身につけることができるかもしれない(著者のように知識を身につけても避けられない可能性はあるが)。

次にマーケティングに興味がある人である。 言葉は悪いが、企業が人々を騙すために用いているテクニックを知ることができるはずだ。 ビジネスへ応用すれば、立派な戦略のひとつになるだろう。 もちろん、企業に騙されたくない人々にも有用だ。

最後に本書で感銘を受けた事柄をひとつ。 著者によれば、給料の多さと人が感じる幸福感の間の関連性は弱いそうである(繰り返し実験によって実証されているそうだ)。 本書を読んで、本当の幸せとはなにかを考えてみるのも良いのではないだろうか。


本書は本が好き!経由で早川書房様よりプルーフを献本いただきました。

刊行前の本が読めるという本好き冥利に尽きる楽しみを与えていただいたとともに、このような傑作を読む機会をいただきましたことに感謝いたします。

2008/11/20追記

書影を掲載。

予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」
ダン アリエリー/Dan Ariely/熊谷 淳子
早川書房
¥ 1,890

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

_ YO-SHI [こんにちは、YO-SHIといいます。 「本読みな暮らし」という読書ブログをやっています。 以前にも「36倍売れた!~..]

_ poppen [YO-SHI様 コメントありがとうございます。 私も本書にはずいぶんと思い当たる節が多かったです。読書感想にも書い..]


2008-11-07(Fri) [長年日記] この日を編集

_ [greasemonkey]Amazon Cross Book CheckのSITEINFOを修正・追記したら、ほぼ完璧に近い書籍横断検索が可能になった

Amazonから色々な古書店の在庫を調べるid:addaさん作のグリモン、Amazon Cross Book Checkを愛用させていただいているのだが、livedoor BOOKS検索がlivedoor BOOKSのリニューアルにともなって動かなくなっていたのでSITEINFOを修正した。

ついでに、id:turing_patternさんがAmazon Cross Book Checkの素晴しいSITEINFOを公開されているのを見つけたので、そこら古本市場とeBOOKOFFのSITEINFOをいただいて追記してみた。 古本市場については、在庫がないものも拾ってきてしまうので、Regexpをちょっといじって在庫があるものだけに限定させた。

さらに、id:turing_patternさんのAmazon Cross Book Check で自分の好きな図書館を検索する方法を参考に、自宅市内の図書館も追加。

以下がpatch。

=== amazoncrossbookcheck.user.js
==================================================================
--- amazoncrossbookcheck.user.js.orig
+++ amazoncrossbookcheck.user.js
@@ -14,10 +14,28 @@
 	},
 	{
 		label: 'livedoor BOOKS',
-		url: 'http://books.livedoor.com/used/item',
-		afterISBN: '.html',
-		regxp: /\u4E2D\u53E4\u4FA1\u683C\uFF1A<span class="price">([\d,]+)/,
+		url: 'http://books.livedoor.com/search/?word=',
+		afterISBN: '&v=2',
+		regxp: /\u4E2D\u53E4\u4FA1\u683C\uFF1A<span>([\d,]+)/,
 	},
+	{
+		label: '古本市場',
+		url: 'http://www.search.ubook.co.jp/search/search.php?category1=all&shousai_r=1&isbn=',
+		regxp: /span class="biggerlink">([\d,]+)[\s\S]*?<input type="checkbox"/,
+	},
+	{
+		label: 'eBOOKOFF',
+		url: 'http://www.ebookoff.co.jp/cmdtysearch?Ctgry=1002&hdnSearchFlg=1&chkOld=1&txtISBNCode=',
+		regxp: /<span class="uam texttype01">([\d,]+)/,
+		isbn13: true,
+	},
+	{
+		label: '日高市立図書館',
+		url: 'http://www.lib.hidaka.saitama.jp/kensaku/toslist.asp?tilandor=1&autandor=1&autpos=1&isbnkey1=',
+		afterISBN: '+&dspcnt=10&sort=1&order=1&x=52&y=16&pg=0&style=10',
+		regxp: /tosmok\.asp/,
+		isbn13: true,
+	},
 ]

 var CONF = [

実際に使ってみたら、AmazonからBOOKOFF Online、livedoor BOOKS、古本市場、eBOOKOFF、そして図書館の横断検索ができるようになって、最高に便利すぎる。

個人的にはほぼ完璧に近い書籍横断検索が可能になった感じだ。

id:adda++, id:turing_pattern++

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

_ adda [こんにちは。 turing_patternさんのエントリ、SITEINFOが追加されているの気付きませんでした! 次..]

_ poppen [コメントありがとうございます。 ライブドアを今日確認しましたら、おっしゃるとおり、現行のバージョンのSITEINFO..]


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