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2008-10-28(Tue) [長年日記]

_ 『消滅の光輪』は日本SF史に燦然と輝く一作だ

消滅の光輪 上 (創元SF文庫 ま 1-2)(眉村 卓)

消滅の光輪 下 (創元SF文庫 ま 1-3)(眉村 卓)

これはスゴイ本。

〈司政官〉シリーズに列なる長篇第一弾が本書である。 〈司政官〉シリーズの全ての短篇を収めた『司政官 全短編』を読んで以来、待望していた作品が復刊され嬉しい限り。

本書は小川一水に代表されるプロジェクト型SFの先駆けといっていい作品だ。

本書の舞台となるのは植民星ラクザーン。 特殊な藻類の輸出を主な産業とし、人類に瓜二つの先住民が暮らすその星へ司政官マセ・PPKA4・ユキオは赴任した。 マセがラクザーンに赴任してから1年後、連邦経営機構より突然の命令が下される──ラクザーンの恒星が新星化する危険性が高まったため、全ての移民を別の星へ退避させよ。 司政官制度が形骸化し、一行政機関と同じレベルまで失墜しているという困難な状況の中、マセは伝家の宝刀である緊急指揮権を確立し、ロボット官僚とともに空前の計画に挑む……というのが本書のメインプロット。

目を引くのはプロジェクトX的・シミュレーション的なストーリーだ。 住民の視点は排され、計画にかかる費用の確保、移住先を決定するための住民投票、脱出船の運行計画、移住後の住民たちの生活基盤確立など、様々な計画の遂行が徹底して司政官マセ──つまり体制側の視点で描かれていく。

強権政策に反発する移民たち、思惑の見えない連邦経営機構、軍事介入をちらつかせる連邦軍、なぜか事態を静観する先住民といった要素により、徐々に退避プロジェクトは困難の度合いを深めていく。 それらがどのような決着を迎えるかは実際に読んで確かめて欲しいが、連邦経営機構という巨大官僚組織から見れば、単なる中間管理職にしかすぎない司政官の悲哀を見ることができるということだけは触れておきたい。

さらにストーリーには司政官である自らのアイデンティティに悩むマセと、協力者である女性とのプラトニックな恋愛といった要素も盛り込まれ、読み応えのある作品に仕上がっている。 ラストはひとつの星の終焉を描きながらも爽やかだ。

登場するガジェットに少々の古臭さこそ見られるものの、プロットはまったく古びておらず、発表から30年近く過ぎているとは思えないほだ。 日本SF史に燦然と輝く一作である。 強くオススメしたい。

個人的には、本作につづく〈司政官〉シリーズ長篇第二弾である『引き潮のとき』が、創元SF文庫から復刊されるのかどうかが気になるところ。 黒田藩プレス版『引き潮のとき』は二巻までしか出版されていない上、価格もかなり高めなので、ぜひ文庫として出版して欲しいが。

※あと関係ないが、書影を用意して欲しい。 > Amazon


消滅の光輪 上 (創元SF文庫 ま 1-2)
眉村 卓
東京創元社
¥ 1,050

消滅の光輪 下 (創元SF文庫 ま 1-3)
眉村 卓
東京創元社
¥ 1,050

_ otsuneさんにハナを「かわいい」といってもらった

花

poppen家の犬がカワイイとotsuneさんにいってもらって嬉しかったので、親バカを承知で写真を貼ってみる。

ちなみに写真は妻撮影。

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