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ぽっぺん日記@karashi.org


2008-10-19(Sun) [長年日記]

_ [読書感想]デニス・ルヘイン『運命の日』を全力でオススメする

個人的には初めてのデニス・ルヘイン作品。

いくつかのサイトで絶賛されていたので読んでみたのだが、たしかにこれは評判に違わぬスゴい本だ。 読む価値ありの太鼓判を押せる大傑作である。

時は第一次世界大戦末期の1918年。 ボストンは不況を原因とする労働者のストライキと、ロシア革命の影響を受けて活動を激化させていた共産主義者や社会主義者、アナーキストにより不安定な社会情勢となっていた。

警部の父を持ち将来を嘱望されていたボストン市警巡査ダニーはある内密の任務を受ける。 それは待遇に不満を持つ警官たちの組合に潜入し、その内情を調査するというものだった。 刑事への階段を昇るため任務を請け負ったダニーだが、調査を進めるうちに、職務に忠実でありながらも貧困にあえぐ警官たちに同情し、一緒に待遇改善を求めていくことを決意する。

一方、成功を夢見てオクラホマ州タルサへ引っ越した黒人の若者ルーサーは、軽い気持ちで裏社会と関わりを持ったばかりに殺人を犯してしまう。 ギャングから追われる身となり、身重の妻からも絶縁されて、すべてを失ったルーサーは、匿ってくれる人物を頼りボストンへと向かう。

ストーリーはダニーとルーサーという二人の主人公の交互の視点から織られていくのだが、要所要所で当時を代表する野球選手ベーブ・ルースの視点によるエピソードが挿入される。

このベーブ・ルースのエピソードが実に良いのだ。 特に冒頭に書かれたベーブ・ルースとはじめとする大リーガーたちの混成チームとルーサーを含む黒人チームとの草野球シーンの素晴しさは筆舌に尽しがたいものがある。ぜひ、その美しさと、一転して訪れるペーソス溢れる結末を堪能していただきたい。

作者は複雑な人種問題、 労使間の攻防、 アメリカに馴染もうと努力する移民、 どん底の生活状況で生きる人々、 欧州からの復員兵がもたらしアメリカ中に猛威を奮ったスペイン風邪(インフルエンザ)など、当時の様々な事象を生き生きと描写していく。 その確かな筆力のおかげで、読み手はおよそ90年前のボストンの様子がまるでつい昨日のことのように感じられるに違いない。

本書は1919年に起きた警官のストライキを題材とした歴史小説であるが、それだけでなく、警官である親子の確執と愛を描いた警察小説であり、人種や社会的地位を越えた男たちの友情小説であり、すぐそこにある本当の幸せを見付けるためにわざわざ遠回りをしてしまう男の悲しさを浮き彫りにした小説である。

間違いなく、今年の収穫のひとつとして数えられる作品だ。 全力でオススメしたい。

運命の日 上 (ハヤカワ・ノヴェルズ)
デニス・ルヘイン/加賀山 卓朗
早川書房
¥ 1,890

運命の日 下 (ハヤカワ・ノヴェルズ)
デニス・ルヘイン/加賀山 卓朗
早川書房
¥ 1,890


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