ぽっぺん日記@karashi.org
2008-10-18(Sat) [長年日記]
_ ギャグとスラップスティックなノリが全開の英国発バカ・ライトSF──
ブライトノミコン―リズラのはちゃめちゃな一年間 (創元推理文庫)(ロバート ランキン/Robert Rankin/圷 香織)
英国イースト・サセックス州に実在する観光地ブライトンを舞台に、ギャグとスラップスティックなノリが全開の英国発バカ・ライトSFが本書。
600ページ弱という長丁場ながら、全篇に渡ってギャグ・下ネタ・爆走するストーリーが展開されてしまう(ラスト近辺はちょっとシリアスだが)という、いろんな意味で恐るべき一冊である。
ちなみに『ネクノロミコン』を思わせるタイトルだが、クトゥルフ神話とはなんの関係もないので、あしからず(まぁ、『クリプトノミコン』といっしょですな)。
時は1960年代。 主人公のリズラは、ガールフレンドと訪れた観光地ブライトンで、ガールフレンドに振られた上、因縁をつけてきたチンピラに海に投げ込まれ、なんともカッコ悪い死を迎える。 そんな彼を蘇えらせたのがミスター・ルーンと名乗るスキンヘッドの巨漢。 神秘の探偵、麻薬愛好家、宇宙刑事、男の中の男、オカリナに新たな力を与えし者という肩書(ただし自称)を持つミスター・ルーンと血の契約を結んだリズラは、ヴァチカンより盗まれたという過去を自由に見ることのできるテレビ、クロノビジョンの存在を知らされる。 クロノビジョンを手にした者は世界を征服することも夢ではない──とくれば、案の定、世紀の大悪党オットー・ブラック伯爵がクロノビジョンを狙っているらしい。 ブラック伯爵に先んじるためには、ブライントンの地図に隠された12の図柄、ブライノミコンにまつわる事件を解決しなくてはならないのだ。 リズラはミスター・ルーンの記録者として冒険に飛び込むことに──。
というのが本書のあらすじ。 あらすじだけ読めば、一見カッコよさげだが、実のところ、中身はハチャメチャである。
正義の味方のはずのミスター・ルーンからしてスゴい。
H・G・ウェルズを手伝ってタイムマシンを設計した、ローマ法王は友達だ、ロバート・ジョンソンにギターを教えたのは自分だ、とホラなんだか分からないことを語るのなんていうのは序の口。
この天才的な頭脳を世のために使っている。わたしの使った金くらい、世の中が持って当然だ(p.95)
と嘯きつつ、どんな品物を買っても一切代金を支払わず、 レストランで食事をすれば、最後にネズミの骨を吐き出して勘定をタダにさせ、タクシーに乗れば、支払いの段で自慢の杖で運転手を殴り倒し逃げる*1、という金についてはモラルもなにもあったもんじゃない人なのである。
クロノビジョンを見付けるために解決しなければならない12の事件というのもスゴい。 なんと最後まで読んでも、なんで解決しなければいけなかったのか分からないものばかりなのだ。
事件の中には、聖職者同士のクリケット大会(なにそれ?)で狙撃犯を阻止しなかったり、ヌーディスト専用のレストランで食い逃げしたり、と事件と呼ぶのが妥当なのかどうか甚だ疑問なものまで混じっている始末。 ラストの第12章のリズラのセリフを借りれば、
十二のうちの半分はインチキみたいな事件ばっかりだったのに、今度のはそれ以下だ(p.551)
というようないい加減さなのである。
さらにストーリーの整合性がとれていないことなんていうのも当たり前。 先の章の美女がいきなり秘密結社の首領として再登場をしたり(詳しい説明はなし)、スチームパンク風のロボットや宇宙蟹が唐突に登場したり(やっぱり詳しい説明はなし)と読んでいて、なんだか頭がくらくらしてきてしまう。
本書の一番スゴいところは、こんなメチャクチャなことを作者が分かっていてやっているところ。 言ってみれば、吉本新喜劇(英国だからモンティー・パイソンか)あたりと同じくコントなんですな。 そう考えると、全章に登場するスパニエル・ネタ、パブがあればどこであろうと現われるバーテンダーのファンジオと、数々の「お約束」を見ることができる。
まぁ、本書で何度も使われる言葉遊びギャグは、平均的な日本人にはその面白さが分からないのではないかと思われるのだが……。
下ネタ大好きな品のない人間なので、書くのがはばかれるパブの名前を筆頭にニヤニヤさせてもらったし、全篇に散りばめられたフリーメイソンやエリア51、秘密結社『ビルダーバーグ』などの大好きな「ムー」ネタも愉しませてもらった。 ただ、600ページ弱は長すぎるというのが正直な感想。 だって、最初の1章と終わりの11章、12章を読めば、ストーリーの90%以上は把握できてしまうもんね。
感動できる本を探している人や読書からなにかを得ようと思っている人、下品なものが嫌いな人、ぐだぐだしたものが我慢できない人にはオススメしかねる作品だが、そこらへんに耐性がある読み手あれば、それなりに愉しめる一冊ではないかと思う。
- ロバート・ランキン/圷 香織 訳
- 東京創元社
- 1554円
書評/ミステリ・サスペンス
*1 いちおうラスト付近でその深淵なる(?)理由が説明されるけど。
_ ハナの歯が抜けた
ガーゼでハナの歯磨きをしたいたら、なんだか歯がぐらぐらし出した。
「うわ!」と思ったら、ハナが口をもごもご動かして、抜けた歯を吐き出した。
乳歯が抜けたぽい。 当たり前だけど、犬もだんだん大人になっていくんだなー。





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