ぽっぺん日記@karashi.org
2008-08-01(Fri) [長年日記] この日を編集
_ きき手についてなにからなにまで分かる一冊──左対右きき手大研究 (DOJIN選書 18)(八田 武志)
きき手研究の第一人者である著者が、きき手に関する様々な最新研究をまとめたものが本書。
本書について、著者は
本書のどこかの部分が、家族や仕事仲間での団欒時のネタとなれば、私の狙いの大方を叶えられたことになる。(p.3)
と謙遜しているが、なかなかどうして、興味深い話題がてんこ盛りの本だった。 きき手についてなにからなにまで分かる一冊といいたい。
- 八田 武志
- 化学同人
- 1785円
書評/サイエンス
本書を読んで驚かされるのが、一口に「きき手」といっても、それは様々な角度の研究があることだ。
たとえば、第1章では左ききが右ききよりも優れていることを証明する研究が紹介されている。 一塁に近いという理由から左バッターが右バッターに比べて有利なのは知られていることであるが、左ききの子どもの方が学力や知能指数で優れているという研究もあるそうである。
また第2章ではよくいわれる「左ききは短命」という説を検証している。 この説が唱えられる背景には、世の中のほとんどのものが右ききを前提に作られているため、左ききだと常にストレスを抱えるとともに、危険な作業ではミスをしやすくするという認識があるのだが、著者は様々な統計を用いてその真偽を確かめている。 その過程は本書に譲るが、「左きき短命」説は俗説と判断してもいいのだろう。
個人的に印象に残ったのは第8章で論じられる、きき手の矯正についてである。 私自身は右ききであるが*1私の弟が左ききで、親に直された結果、現在は右手で字を書いているためだ。 本書にも書かれている通り、最近は左ききには社会全体が寛容になってきて、特に矯正されることも少ないのではないかと思われるが、私が子供時代の頃は、まだ「ぎっちょ」などと呼ばれ、あまり良いことではないと思われていたのだ。
また、著者が次のように書いている親心もあったのだろう。
学校に入って授業の際に文字を書くとき子どもが困るのではないか、ハサミなどさまざまな道具を使うわが子が不自由するのではないか(p.185-186)
本書では左ききを右ききに矯正することが良いことかどうかが論じられているが、著者は矯正にはあまり賛成しないというスタンスを取っている。 適切であるかどうか疑問があるとはされているが、きき手を矯正することによって人生の満足度や健康に影響があるという実験結果もあるそうである。
まぁ、そんな実験を云々しなくても、著者が
左ききとなるはずの遺伝子をもつ場合、左手が動作の速度や巧緻性、持久性などで右手よりも優れるべく脳はプログラムされているわけであり、右ききへの変更は一流の仕事ができる潜在能力をもつ左手をあえて使用せずに、わざわざ潜在能力で劣る右手の使用を強いることになる。(p.103)
と指摘している通り、弊害があってもおかしくないというのが自然な考えだろう。 そう考えると、弟には少々酷だったなと思わなくもない(そうしてしまった親心は充分に理解できるので責める訳にはいかないが)。
その他、本書では、きき手はどのようにして決まるのか、きき手と脳の関係など非常に広範囲の研究が紹介されている。 左ききとなるメカニズムについては、胎児期や出産時に脳に損傷を負ったためや細菌性髄膜炎に感染したためなどという、読みようによっては左ききの人には失礼な説や、男性ホルモンの影響、母体の中で胎児の姿勢による聴覚系の影響、神経細胞の数など数々の説が唱えられている。 どれが正しいのかといえば、まだなんともいえないというのが実際のようだ。 どこか差別につながりそうで、少々怖い面もなくはないのだが、純粋に知識として面白い内容である。
このように世界中の様々なきき手研究について述べられている本書であるが、著者がもっともらしく見える統計の嘘について繰り返し触れている点も興味深い。 どうしても、グラフなどの図表を見せられると信憑性があるように感じられるが、そのデータの母集団や集めた過程などに注意を払わなければ、それが本当に意味のある統計であるかどうかを判断することはできないという考えは肝に銘じるべきだろう。
本書の終章は、ニホンザル、チンパンジーやゴリラなどの類人猿、ネコ、イヌ、カエル、さらには魚やヘビなどのきき手についての研究が書かれている。 内容は非常に面白いのであるが、「ヒマな人もいるもんだなー」と思ってしまったのも正直なところ。 なにしろ、カエルの頭に風船を乗せてどちらの手ではねのけるのか観察したり、ヘビの前進の仕方やトグロの巻き方を半年以上に渡って、1813回も観察しているのである。
しかし、著者は次のように書いている。
昨今の日本の大学に見られる、特許などの経済効果に直接的に繋がらない研究の軽視を体感する者として、文化的でこころ豊かな知識の学府を構成する研究者も内包できる環境を保ち続けることの重要性を、ルースが行ったヘビのこの研究を読んで痛感した次第である。(p.227)
なるほど。直接利益に結びつかない、きき手の研究のようなものができる国こそ真の余裕ある国といえるのかもしれない。
現代日本の現在の実利一辺倒の教育へのアンチテーゼとも読める好著である。
*1 ちなみに、本書によれば自己申告のきき手はあまり信用できないようである。右手で字を書いても左ききの人も多いとのことだ。
2008-08-03(Sun) [長年日記] この日を編集
_ 「病は気から」は欧米にはない文化であることを感じさせる一冊──本当のところ、なぜ人は病気になるのか?―身体と心の「わかりやすくない」関係(ダリアン・リーダー/デイヴィッド・コーフィールド/小野木明恵)
ロンドン在住の精神分析家と哲学者の二人の著者が心理的な要因が身体に影響する病気について述べるとともに、心身医学の復権を論じた本である。
- 小野木明恵
- 早川書房
- 1890円
書評/健康・医学
心身医学という医療分野があることは本書で初めて知った。 それは現在主流の病気の原因を細菌やウィルスといった外的なものだけに求めるのではなく、患者本人の社会的な立場や生い立ちなどによる心理的な背景にもあるとみなす医学でである。 ストレスが様々な病気の引き金になることはほぼ常識として認知されているが、心身医学は患者の個人史にまで踏み込んでいる点が目を引く。
心身医学の発祥の地は心理学が生まれた地、ドイツである。 20世紀初頭にはアメリカに渡り発達したとのことだが、近年、ほとんど忘れられた存在になってしまった。
その最大の原因は診察時間がかかりすぎるということだろう。 患者と医師が話し合って患者の心から病気の原因を探っていくというアプローチは、現在のビジネス化し効率が求められる医療にはあいなれないものであることは、想像に難くない。 本書は英米の医療事情を焦点に絞っているが、3分診療という言葉がある通り、日本にもあてはまる話なのだ。
著者たちは、医師が患者ではなくコンピュータ・ディスプレイに向き合い、まるで工場の流れ作業のようにシステマティックに行われる現代の医療に異を唱え、患者本人と向き合う心身医学の復活を本書を通じて訴えている。
異父妹が生まれたことが見捨てられたように感じ糖尿病を患った少女。 心臓発作を起こして亡くなった夫と同日に激しい胸の痛みに襲われる女性。 母親の不吉な予言を聞いたあとに死亡した男性 ──著者たちは心と身体が複雑に絡みあった様々な事例を挙げている。 我々の文化には「病は気から」という言葉が根付いている。 そのため、著者の主張にはなるほどと頷けることが多い。
本書で残念な点は、著者たちは
心身医学とは、眼科や心臓内科というような専門分野ではなく、さまざまな分野の医師が協力する方法を示す用語にすぎない。(p.12)
と断わりつつも、あたかも病気のほとんどが心理的なものに起因しているかのように論じていることだ。
その姿勢は病気に限らない。 たとえば、左ききとなる原因を乳児期の心理的な同一化にあるとし
向かい合わせになった人と、ちょうど鏡のイメージ像を見つめるようにして同一化すると、自分の左は、相手が右利きであれば、相手の右になる。だが、相手を自分を見る地点から同一化すると、右と左はそのままに保たれる。(p.268)
と記している。ここはつい先日読んだ『左対右きき手大研究 』(八田 武志)から考えると、ちょっと信憑性が薄いと感じる。
著者たちの態度は大袈裟すぎるというのが正直な感想なのだが、「病は気から」の文化がない欧米では、これだけ大袈裟に書かないと真面目に受け取られないということなのかもしれない。
意識しない文化の違いを感じさせるという点でも興味深い一冊だった。
最後に蛇足ではあるが、本書のメインテーマとはあまり関係ない話題をひとつ。 本書によれば、
高齢者が、人生においてもっとも後悔しているものはなにかと尋ねられると、いちばん多い答えは、もっと道楽をすればよかったとか、セックスをすればよかったとか、バンジージャンプをしたち外国を旅行すればよかったとかいうものではなく、もっと歯の手入れをすればよかった、というものなのだ。(p.53)
若いうちから歯磨きをしっかりしておいた方が幸せな老後を送れそうだ。
_ 週末はMacBookの設定をして過ごした
土日はMacBookの設定をして過ごした。
普段、FreeBSDで生活していたから、MacOSXも楽勝だろうと高を括っていたのだが、やはり違うOS。 なにかと慣れるまで結構、大変だった。 とりあえず、この日記をMacBookから書けるくらいまでは設定できた。
設定その他では
- MacBook 買った後にやったことまとめ - IT戦記とコメント欄
- 本当は使いにくいMacOSX (GANAware)とトラックバック先
が非常に参考になった。 先人に感謝。
この週末にやったことを列挙しておくと、こんな感じ。
- レポジトリからdotfilesをcheckoutして、FreeBSD用に書いたMakefileをbsdmakeで走らせてインストール
- Xcodeをインストール
- MacPortsをインストールして、必要なソフトをインストール
- 電話したいのでSkypeをインストール
- わさわさしたいのでiChatでwasserを読み書きできるように
- キーボードオペレーションが楽になるらしいのでQuickSilverをインストール
- vimがないと死ぬのでCarbon Vimをインストール(Cocoa Vimは起動するとなぜかエラーを吐いて死ぬ)
- SKKがないと死ぬのでAquaSKKをインストール
- 最速Web閲覧のためにdolipoをインストール
- パスワード管理のためにKeepassXをインストール
- KeyRemap4MacBookをインストールして
- Shift-SpaceでIMEをトグル
- Ctrl-[をESCに
- システム環境設定をいじって
- Dockを隠す
- ExposeとSpacesを有効化
- ファンクションキーを標準に
- フルキーボードアクセスを「すべてのコントロール」に変更(tabでボタンも選択できるようになる)
- トラックパッドをいじって
- ドラッグを有効化
- 2本指クリックを有効化
- 偶発的なトラックパッドへの入力を無視を有効化
まだ(手をつけていない|分からない)のが次の点
- ウィンドを最前面に固定
- CarbonとCocoaの違い
- Insertキーがないので、Shift-Insertでvimやvimperatorのコマンドラインに貼り付けできない
- vimperatorのコマンドラインへの入力が時々、二重になってしまう(AquaSKKが原因?)
- VMware Fusionの導入
まぁ、色々と戸惑うことも多いのだが、最初からsvnどころかsvkまでインストールされているのには驚いた。 PerlもRubyもPythonもインスール済みだから、すぐ開発できるじゃん。
_ 次期MacBookが出るという噂が……
どう考えてもアップルの新製品が登場間近 : Gizmodo Japan(ギズモード・ジャパン), ガジェット情報満載ブログ
otsuneさんに不吉な予言をされてしまったが、それが当たるような感じ。
poppen予言が当たる可能性が
[poppen予言が当たる可能性が http://www.gizmodo.jp/2... - Wassr [お気軽メッセージングハブ・ワッサー]より引用]
別にいい! 欲しくなったら、そっちも買うから!
2008-08-04(Mon) [長年日記] この日を編集
_ 注文しておいた2GBメモリ x 2本が届いた
注文しておいた2GBメモリが2本届いたので早速増設。 注文したのは、安いメモリで有名な上海問屋のコレ。
1枚4099円也(税込)。
届いたのはTranscend JM667QSU-2Gだった。 チップセットはJetRam。
増設方法はMacBook: メモリの取り付け方法を参考にした。 簡単だったけど、レバーでメモリが飛び出してくる構造は独特でちとビックリ。
さて、MacBookが最高に強まりまくったので、VMware Fusion買って、FreeBSDを動かしてみることにするか。
_ Amazon EC2の固定IPアドレスサービスが1ヶ月弱、有効になっていた
amazon.comから料金確定メールが来てた。 $6ちょいの請求。
「先月、たしかにEC2を試したけど、1時間くらいで止めたぞ」と思って、詳細を確認してみたら、たしかにインスタンスは止まっていたけど、固定IPアドレスが動きっぱなしだった($0.01/h)。
インスタンスを止めたら自動的に解除される訳じゃないんだね。
慌てて
% ec2-describe-addresses
で割り当てられているIPアドレスを確認して、
% ec2-release-address <IPアドレス>
で解放した。
今回は失敗だったけど、大した額じゃなくてよかった。 まぁ、勉強代ですな。
EC2やS3を本格的に使う場合には、Plaggerで料金レポートを取得するようにした方がよさげ。
参考
2008-08-06(Wed) [長年日記] この日を編集
_ 脳トレはもちろん、脳科学に興味がある人も得るものがある一冊──未来の記憶のつくり方―脳をパワーアップする発想法 (DOJIN選書 19)(篠原 菊紀)
脳システム論、健康教育学を専門とする著者が記憶をテーマに記したものが本書。
いまだ人気の衰えない「脳トレ」ブームの第一人者が著者だけに、脳トレ一色の本と思いきや、さすがは化学同人。 脳トレの根本になる記憶とその背景にある研究についても教えてくれる一冊となっている。
- 化学同人
- 1680円
書評/サイエンス
本書は大きく分けて2つのパートから構成されている。
第1部では様々な脳と記憶の仕組みが解説されているのだが、その中でも目をいたのが「偽の記憶」というエピソードである。 たとえば、それは催眠術によって本人の奥底に隠されていた記憶が呼び出されるというものだ。 虐待事件やUFOによる誘拐事件などに、よくあるケースなのだが、本書によれば、催眠療法家が期待している内容を患者が無意識に喋ることが多々あるそうである。 著者はそこから敷衍し、公開除霊や霊視セミナーなどがなぜうまくいくかを解説している。
また、目の端を横切る幽霊の原因が桿体細胞にあることや、左右の視力差が引き金となって幻視を見る「シャルル・ボネ症候群」、人工内耳により幽体離脱を繰り返してしまう症状など、魑魅魍魎を見ることについての機能が説明している箇所も、オカルト方面好きとしては非常に面白かった。
つづく第2部では、著者は脳を鍛える方法とともに、物事を効率よく記憶するための方法を具体的に解説している。 詳しい解説は本書に譲るが、その中でも個人的に興味深かったのが、次の記述だ。
記憶したい事柄を覚えようとするときには「感動する」ことです。「なるほど、そういうことか」「これはすごい」などと、あえて感動を付加すると、記憶がつくられやすくなり、かつ忘れにくくなります。(p.140)
なるほど。 言われてみれば、本を読んでいる時でも「おっ、これはスゴい!」と思うものほど、後々まで記憶に残っているものである。 今度からは、なにかを覚える必要がある時には「へー!」や「えっ、マジ!?」などといちいち驚きつつ読んでみようかと思う。
さらに脳トレといえば、前頭葉の活性化であるが、実は暗算など世間一般に難しいとされることをやっても、それが自分が得意なことであれば、それほど活性化されないそうである。 それよりも不得意なことをやる方がぐんと活性化されるとのこと。 その際、そのトレーニングが成功したかどうかは関係ないのだそうだ。 つい問題が(解けない|達成できない)と恥ずかしくなり、トレーニングをやめてしまいたくなるが、「これは難しいぞ。前頭葉がバリバリ活性化しそう」などと考えながらやる方が長続きしそうである。
その他、少し前に流行した「おしりかじり虫」という歌の脳への影響や、どのようにゲームで脳を鍛えるかなどの話題も盛り込まれており、脳トレはもちろん、脳科学に興味がある人も得るものがある一冊ではないかと思う。
最後に本書に内容でちょっと面白かったことを。 著者はパチンコを打っている時の脳の状態を研究しているそうであるが、その際、次のような現象が生じるそうである。
わたしたちは、つい、わくわくどきどきの大興奮を提供する台こそ人気が出る、人気のある台では、ユーザはみな興奮している、と思いがちです。しかし、結果はま逆。海シリーズ(ハイパー以外)や京楽系やニューギン系のいい台ほど、急速に大脳新皮質の活動が低下します。落ち着いてくるのです。(p.70-71)
パチンコには詳しくないので、実は「いい台」の意味が分からなかったりするのだが、台の具体名を出して解説するあたり、著者のパチンコ好きが垣間見えておかしかった。
2008-08-08(Fri) [長年日記] この日を編集
_ 植物版パンデミックが人類を滅ぼす──
チョコレートを滅ぼしたカビ・キノコの話 植物病理学入門(ニコラス・マネー(Nicholas P. Money)/小川真)
去年、ふしぎな生きものカビ・キノコ―菌学入門(ニコラス マネー/Nicholas P. Money/小川 真)が訳された菌類学者である著者が植物病理学について語っているのが本書。
イギリス人(現在はアメリカ在住)らしいユーモアを交えつつ、菌類が原因となる植物の伝染病と人類の戦いと、その中で生じた人間模様を綴っている。
著者は北米の森林や公園の風景を一変させることになったクリ胴枯病とニレ立枯病から筆を起こし、コーヒーやカカオの木の病を経て、人類の運命を左右しかねないゴムの木や麦、トウモロコシなどの穀類、そして、アイルランドを大飢饉へと追い込んだジャガイモ枯病へと筆を伸ばしていく。
菌類たちの不思議な生態はもちろんだが、人間の経済活動のために、いかに世界中に植物が植えられていったかを知り改めて驚かされた。 一例を挙げておくと、マレー半島のゴムの木の森は有名だが、それも植民地時代にイギリスによって植林されたものだそうである。 ちなみに、ゴムの木の原産国であるブラジルからその種を盗み出したイギリス人、ヘンリー・アレクサンダー・ウィッカムは、イギリスでは英雄、ブラジルでは盗人扱いとのこと。
コーヒーについては『コーヒーの真実―世界中を虜にした嗜好品の歴史と現在』(アントニー・ワイルド)を併読するとより一層面白く読めるのではないと思う。
軍事マニアとして興味深かったのは、第8章「止まらない木の枯れ」で取り上げられている菌類の伝染病を軍事利用しようとしたエピソードだ。
1950〜60年代にかけて、朝鮮半島やベトナムなどアジアに軍事介入する機会が多くなったアメリカはコムギ黒さび病菌やジャガイモ疫病菌などを生物兵器として使う研究をスタートさせた。 面白いのは、その輸送手段。 胞子をまぶしたダチョウの羽をいっぱいに詰めた爆弾を水素風船で飛ばそうとしていたそうなのだ。 太平洋戦争末期に日本軍がアメリカ本土を攻撃するために投入した風船爆弾からヒントを得たとのことであるが、最近唱えられるようになった「実は風船爆弾はアメリカにとってかなりの脅威になっていた。戦後の本土安全保障を確保するため、風船爆弾で受けた損害を隠蔽し過小評価させるよう誘導した」という説を裏付けるものといえるかもしれない。
冷戦時代のもうひとつの雄、ソ連も同じ病気を兵器として使うことに興味を示していた。 その輸送手段はアメリカのものに輪をかけてスゴい。 なんと、大陸間弾道弾で胞子を撃ち込むことを考えていたそうである。 いかにもソ連らしい大雑把さといえるだろうか。
幸いにも菌類の伝染病が軍事利用されることはなかった*1が、人類と菌類の戦いはいまだ続いている。 それどころか、人類は著しく劣勢に立たされているといっても過言ではない。 なにしろ驚くべきことに、本書で取り上げられている菌類で撲滅されているものはひとつもないのだ。 著者が「はじめに」で次のように書いている。
我々人間にできることは、生物界で気ままに生きる菌類の活動を抑え込むために、莫大な経費を浪費して戦い続けることぐらいしかない。(p.ix)
しかし、その尽力にも関わらず、徐々に被害が拡大しつつあるというのが現状のようである。 その行く末はといえば、著者が本書の原題──The Triumph of the Fungi(菌類の勝利)で暗示しているように、悲観的にならざるをえないものだ。 もし、黒さび病菌のような穀物を枯らす伝染病がパンデミックとなり地球規模に広がれば、新型インフルエンザに比肩しうる被害をもたらすことは想像に難くない。
このような事態となった原因は、著者が繰り返し述べるように人類が地球上の自然を破壊してきたことにある。 これを「しっぺ返し」と考えることはできると思うが、人類の一員としては──エゴイスティックと非難されるかもしれないが──この戦いに勝利することは難しいにしても、抑え込みがうまくいくことを願うばかりである。
本書は著者の第3作にあたる。 第1作である『ふしぎな生きものカビ・キノコ』と本書との間に、黒カビをテーマにした本があるとのことだ。 訳者あとがきによれば、日本ではあまり話題になっていないということで今回は出版が先送りされたが、要望があれば検討するということなので、ここにリクエストしておく次第。
第2作が出版されるまでに、未読の『ふしぎな生きものカビ・キノコ』を手に入れて読んでおくことにしよう。
- 小川真
- 築地書館
- 2940円
書評/サイエンス
*1 もし利用されていれば、使用者も制御できないような事態に陥っていたのではないだろうか。
2008-08-09(Sat) [長年日記] この日を編集
_ 軍事オタクが読んでも楽しめる美術書──
戦争と美術1937‐1945(椹木 野依/蔵谷 美香/河田 明久/平瀬 礼太/大谷 省吾/針生 一郎)
自他ともに認める美術オンチなのだが、最近、絵画関係の本を読むのが面白くなってきたのに加えて、戦争芸術という軍事オタクなら、ピピッときてしまう内容なので読んでみた本。
ちなみに15,750円(税込)というスゴい値段なので図書館にリクエストして、他館から取り寄せて貰った。GJ! > 司書の人。
本書には日中戦争が勃発した1937年から1945年の終戦までに発表された様々な美術作品が掲載されている。 収録作は、戦闘など戦争に関わるシーンを描いた戦争画が中心であるが、直接戦争を描いている訳ではなくとも、売上金を軍に献納するために作成された美術作品も戦争芸術に分類され収められているのが特徴だ。
とはいえ、やはり軍オタとしては、どうしても注目してしまうのは戦争画の方である。
ひとくちに戦争画といっても、様々な画家によって描かれているだけあって、表紙にも使われている鶴田吾郎《神兵バレンパンに降下す》のようにリアルなタッチなもの(構図はリアルとはいえないが)から、山下菊二《日本の敵米国の崩壊》のようなシュルレアリスムの作品、日本画の手法で描かれた小早川秋声《日本刀》までと多岐に渡っている。 個人的には、北斎を思わせる筆遣いで荒波を乗り越える伊号潜水艦を描いた茨木衫風《潜水艦の出撃》が印象に残った。
残念なのが、戦争画といえば大抵の人がまず考えるに違いない、藤田嗣治の作品が掲載されていないこと。 著作権継承者の同意が得られなかったということだが、画竜点睛を欠く感は拭えない。
作品そのものと並んで、軍オタ的に外せないのが作品解説だ。 艦上機の塗装の間違いや
カウリングをはずされ、発動機を整備中と思われる機体は九七式三号艦攻だが、本機に搭載されていたのは中島製の「栄」発動機で、本発動機は複列星型十四気筒であったが、描かれている機体の発動機のシリンダーの数は明らかに十四本以上ある。(p.218)
と発動機の間違いを指摘するなど、美術書とは思えないほど詳しい記述あったりする。 この解説は学芸員の人によって書かれているのだが、間違いなく軍オタだろう(笑)。
本書には論考も収録されているのだが、その中のひとつは以前読んだ美術評論集『なんにもないところから芸術がはじまる』の著者、椹木野衣によるもの。 あいかわらずレトリック過剰な文章で非常に読みにくいのだが、藤田嗣治の《アッツ島玉砕》の日本陸軍兵士をガンダムのザクに置き換えた、会田誠の《ザク》という作品があることを知ることができたのは収穫だった。 会田は他にも戦争画を翻案した「戦争画リターンズ」というシリーズを描いているそうなので、どんな作品があるのか、あとで調べてみようと思う。
値段が値段なのでおいそれと買える本ではないと思うが、興味がある人はオレのように図書館にリクエストしてみるといいんじゃないだろうか。
2008-08-10(Sun) [長年日記] この日を編集
_ イスラエルとパレスチナ問題の根幹にあるものを思想面から探る一冊──
ユダヤとイスラエルのあいだ―民族/国民のアポリア(早尾 貴紀)
パレスチナ問題を「ユダヤ人国家」として建国されたイスラエルをその根幹にある思想面から批判的に考察しているのが本書。
イスラエルに憲法がないことは、本書を読んで知った。 憲法の代わりとして使われているのが、建国の際の「国家独立宣言」である。 そこには次のような一文がある。
イスラエルの預言者たちによって語られた自由と正義と平和を基礎におき、宗教、人種、性別にかかわりなくすべての住民に、完全な社会的および政治的な平等を確保する。(p.62)
このような理念に基づいて建国されたはずのイスラエルにおいて、数の上では圧倒的に多数派のはずのアラブ人が「少数民族」とされ、権利を制限された事実上の「二級市民」とされている。 著者は、帰属する国を持たず、その帰結としてそこにナチスによるホロコーストという大虐殺を経験したはずのユダヤ人が、アラブ人たちを弾圧し無国籍の民へと貶めているという大きな矛盾を見る。
しかし、すべてのユダヤ人がそのような階層社会を肯定していた訳ではなかった。 著者はマルティン・ブーバー、ハンナ・アーレント、ジョディズ・バトラー、アイザイア・バーリン、エドワード・サイードといったユダヤ人でありながらイスラエルのあり方に異を唱えた思想家たちの主張を引きつつ、なぜ、二民族共存国家という理想が潰されたのかを描き出していく。 そこから浮かび上がるのは、ユダヤ人というアイデンティティを持つがゆえに思想家たちが抱えた葛藤である。
イスラエルについては戦争史という面からであるならば、ある程度把握しているつもりだが、思想的な背景ということになると、さっぱりというのが実のところだ。 ほとんど哲学とは縁のない人生を送ってきたせいもあって、本書のどれだけを理解できたのかといえば、いささか心もとないところではあるのだが、非常に刺激を受ける内容ではあることは間違いない。
特に、ユダヤ人の民族的悲願と思っていたディアスポラの解消をユダヤ教の視点から否定する思想があることには驚かされた。
先日出版された
ディアスポラの力―ユダヤ文化の今日性をめぐる試論(ジョナサン ボヤーリン/ダニエル ボヤーリン/Jonathan Boyarin/Daniel Boyarin/赤尾 光春/早尾 貴紀)がそのような思想を唱える
ボヤーリン兄弟によるものということなので、固そうな本であるが、いずれ挑戦してみたいと思う。
イスラエルとパレスチナ問題の根底にあるものを知ることができるという点で非常に意義のある書である。 ただ、冒頭に掲載されている論考『「偽日本人」と「偽ユダヤ人」』については少々首をかしげたくなった。 多民族国家になりつつあるのに、イスラエルはシオニズムを捨てず、日本は天皇制と戸籍制度を捨てないという指摘の乱暴さは横に措くにしても*1、日本が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)への偏見があるとする一文には納得することができない。 少なくとも拉致問題には関しては、日本国民の安全が脅かされたという点で警戒心を持つのは当然ではなかろうかと思う。 それは偏見とはまた違ったものだろう。
*1 正直なところ、国家消滅の危機感を持つイスラエルと、国民の大多数がそんなことを考えたこともない日本との間でそのような比較が成立するのかどうかも疑問ではある。
2008-08-11(Mon) [長年日記] この日を編集
_ 夏休みの計画
お盆休みは13日〜17日なのだが、明日は午前中のみ仕事で午後から休みになったので、実質5.5日間の夏休みとなった。
ってことで、夏休みにやりたいこと。
- 今日届いた
[24時間365日] サーバ/インフラを支える技術 ‾スケーラビリティ、ハイパフォーマンス、省力運用 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)(安井 真伸/横川 和哉/ひろせ まさあき/伊藤 直也/田中 慎司/勝見 祐己)を読む- 内容を踏まえて社内ネットワーク環境の整備案をアイデアを練る
- MacBookの環境を整備する(特にRails周り)
- Plaggerのソースを読む
- FreeBSDのlsあたりのソースを読む*1
実は休み中、結構イベントが盛りだくさんなので、まぁ、半分も出来れば御の字か。
*1 えー、まだ読んでなかったのー?
2008-08-12(Tue) [長年日記] この日を編集
_ 夏休み第1日目
といっても、午前中は外回りだったので、休みは半日間だったけど。
直行で外回りの仕事を済ませてから直帰して、Bフレッツ工事の立合いを頼まれていた親戚の家へ。
PCの設定やらSkypeの設定やらで夕方まで過ごす。
SkypeフォンとしてKX-WP800を買っておいたので、それも設定。 ちなみに値段は29,800円也。高いが、さすがはパナソニック。音質は良くてグッド。 親戚もアメリカ在住の従姉への電話代が安くなると喜んでいた。 国際電話代だけで月1万近く払っているらしいので、まぁ、すぐに元は回収できるでしょう。
実は自宅と同じ市内だったりするので、妻に車で迎えにきて貰って帰宅。
夜は読書やらなんやらをしようと思っていたんだけど、疲れてしまってマターリしてた。
そんな感じの一日。
_ KX-WP800を設定した時のメモ
- 親機(付属ルータ)と子機のセット。通話は子機からのみ可能。
- SSIDに_が入れられない謎仕様なので注意すること。
- 暗号はWEPの他、WPA-PSK、WPA2-PSKが使える。
- 親機の無線設定を変更すると、子機の再設定が必要になるので注意(当たり前だが)。SSIDや暗号キーなど設定情報自体は「子機登録」で子機へ流し込めるので楽チン。詳しくはCD-ROM版マニュアルのp.161ページを参照のこと。
- っつーか、こんな大事なことはマニュアルの最初の方に書いていて欲しい。電話ボタンで暗号キー(63文字!)を打ち込んじまったよ。
TODO
- 付属ルータにPCをぶら下げた時の速度測定をするの忘れたので、今度計る。
2008-08-13(Wed) [長年日記] この日を編集
_ 作者の怒りと人を信じたい心を感じさせるイヤミス──
千の嘘 (創元推理文庫)(ローラ ウィルソン/Laura Wilson/日暮 雅通)
まずは警告しておきたい。
本書はとびっきりのイヤミス(イヤになってくるようなミステリ)である。 なぜなら本書のメインテーマは家庭内での虐待──ドメスティック・ヴァイオレンスだからだ。 本書にはその様子が克明に描き出されている。 読み進めるうちに、そのあまりの救いのなさに絶望するに違いない。 はっきりいって、この手の話が苦手な人にはお世辞にもオススメできる内容ではない。
しかし、もし、本書のページを開くだけの勇気があるのであれば、なんらかの救いを見出せるかもしれない書でもある。
本書の主人公は34歳のジャーナリスト、エイミー・ヴォーン。 彼女の父親は彼女が幼い時に家を出ていき、母親は父親が出奔した理由をエイミーのせいだと考え、彼女を憎み続けてきた。 その母親がなくなり、エイミーはたった一人でその葬儀を終えたところから本書ははじまる。 母親の遺品を整理しはじめたエイミーはモーリーンという女性によって書かれた一冊の日記帳を見付ける。 そこに綴られたいたのはシャンド家の一見平凡ながらも、どこか不自然な影を感じるものだった。 エイミーは同じ遺品の中から見付けた新聞記事から驚愕の真実を知る。 シャンド家は、これまで知らなかった彼女の母方の親戚筋にあたり、妻アイリスと娘たちに対して長年虐待を続けていた父親レズリーをモーリーンの姉シーラが殺害していたのだ。 アイリスが老人介護施設に入所していることを知ったエイミーは、彼女に会いに行くにする。しかし、それをきっかけにしたように、エイミーの周辺で奇妙な事件が起きはじめる……。
本書の特徴は、なんといってもストーリーが進展するにつれて浮かび上がってくる、シャンド家の家長である父親レズリーが妻や娘たちに行なった虐待の数々だ。
家庭内に細々とした理不尽な決まり事──音を立てない、決められた位置に食器を置く等々──を作り、それが守られないと足腰が立たないほどに妻や娘を殴りつけ蹴りつける。 精神的に妻や娘を支配するために、彼女たちの前でペットを虐殺する。 とどめには12歳となったシーラを毎週土曜になる度にレイプする──そんな悪行の限りを尽くしながらも、レズリーは表と裏の顔を使い分けるだけの知性を持ち、人畜無害の「良い父親」を装っていた。
あまりの酷さに思わず「やめてくれ」といいたくなってしまうが、作者ローラ・ウィルソンは決して目を背けず、その酷さを綿密に描き出していく。 そこには、ごく最近まで「家庭内の問題」として社会的に黙殺され、常に女性が犠牲になってきたドメスティック・ヴァイオレンスに対する、同じ女性としての怒りがある。
しかし、本書は単なるイヤミスではない。 レズリーの悪に対するように、他の人々が元来持つ善なるものも同じく描写されているのだ。 たとえば、主人公エイミーは最初は興味本位だったにも関わらず、徐々にシーラに同情しなんとか支えようと奮闘するし、エイミーの隣人たちも奇妙な出来事に見舞われた彼女を手助けしようとする。 そして、ひょっこり現われ調子の良いことばかり吹き、責任感というものがまったく欠如したエイミーの父親にしても、その奥底には娘を愛す気持ちを持っている(行動が伴なっているとはいえないが)。
ミステリとしての緊迫感が削がれているという点では、もしかすると、彼ら善なる登場人物たちは欠点といえるかもしれない。 しかし、これこそ、人間の性善説を信じようとする作者の意思なのではないかと思うのだ。
本書のラストにはどん底に突き落とされるかのような真相とともに、一筋の光が見えるような結末が用意されている。 本書を開いたのなら、ぜひ最後まで読み切って欲しい。 どんなに辛いことがあったとしても人生を生きることに価値があるという作者からのメッセージを受け取ることができるだろう。
- 日暮 雅通
- 東京創元社
- 1155円
書評/ミステリ・サスペンス
_ 夏休み第2日目
昼は6月に行って以来の和食屋さんで久しぶりに食事をした。 オーソドックスに豚の生姜焼き定食を食べたのだが、すげーウマくてびっくり。 火が通っていても、豚肉が柔らかいんですなー。 「オレが今まで食べていた豚の生姜焼きってなんなの?」と、ちょっと感動してしまった。 同じ豚肉で煮豚を作っているそうで、予約を入れておけば出してくれるとのこと。 煮豚好きとしては非常に食べたくなる。
結局、なんやかんやで6月にカニは食べに行かなかったんだけど、また、ちょくちょく行きたいお店だ。
午後は昼寝してから夕方まで休耕地の草刈り。 草刈機を使ったんだけど、途中で燃料が切れて、最後は手で刈った。 疲れまくり。
夜は読書したりオリンピック見たりでマターリ過ごしていたんだけど、すげー眠くなって、24時前には就寝。
そんな感じの一日。
2008-08-14(Thu) [長年日記] この日を編集
_ 夏休み第3日目
赤ちゃんが生まれた友人の家にお邪魔した。
「えらく暑い日 + 片道2時間かかる」という悪条件なのに、お土産にシュークリームを買っていってしまって、自分のアホさに絶望。 着くまで保冷剤が保って助かった。
赤ちゃんのいる家庭の空気を実感できて良かった。 赤ちゃんがニコーと笑って可愛かったなー。
夕食にビール(エビスビール!)を2本飲ませて貰って酔っ払ってしまった。 せっかくメインディッシュに手作り餃子を用意して頂いてのに食べられず、大変申し訳ないことをしてしまった。
帰りの電車の中では、うたた寝する度に壁に頭をゴンゴンぶつけながら帰宅。 寝過さなくてよかった。
2008-08-16(Sat) [長年日記] この日を編集
_
数学で犯罪を解決する(キース・デブリン/ゲーリー・ローデン/山形 浩生/守岡 桜)
数学者がFBI捜査官の兄と協力して犯罪を解決するという米ドラマ『NUMB3RS』の解説本が本書。 『NUMB3RS』に関する知識は要求されないので、未見の人でも安心だ。
地理的プロファイリングから筆を起こし、データマイニング、画像、ゲーム理論と、犯罪捜査で活躍する様々な数学を紹介している。正直なところ、登場する数式の数々は「???」な感じではあるのだが、興味深く読めた一冊だ。 同時に、数学的素養がある人はもっと面白く読めるんだろうなぁ、と自分の能力のなさを残念に思ってしまった一冊でもある。
SPAMフィルタでベイズ推論に普段からお世話になって人も多いと思うが、ベイズ推論を解説する章では世界中の米軍施設に導入されたテロのリスク評価をするソフトウェアのエピソードが紹介されている。 そのソフトウェアは911前に、テスト段階でペンタゴンへのテロ攻撃の可能性を示唆したとのことだが、「いささか例外的な結果を出しがちだった」とバグ扱いされてしまった。 その結果はといえば、ご存知の通り。
mixiをはじめとするSNSにある人物相関図を自動生成するソフトウェアに類するものがテロ組織の相関関係を洗い出すことに使われていたり、 同じくSNSで引き合いに出される「6次の隔たり」の元ネタになったスタンレー・ミルグラムのスモールワールド現象の実験結果が、実は50通の手紙を出して最終的に届いたのが3通だったという事実や 911以後に導入された旅客機への搭乗客をスクリーニングシステム、CAPPSがMITの学生2人によって破られたという逸話、 我々が個人特定手段として認識している指紋への疑念が示されていたりと、楽しめること間違いなしの記述がてんこ盛りである。
ちなみに、国防省が開発しているという
いくつものエージェントが相互に通信しあい、それぞれが個別の小作業を実施するようになっている(p.52)
というソフトウェア・エージェントが「Plaggerぽくね?」と思ってしまった。*1
確率や統計に関する話題も豊富に含まれているので『運は数学にまかせなさい―確率・統計に学ぶ処世術』(ジェフリー S.ローゼンタール)と併読すると、さらに楽しめるのではないかと思う。
巻末には、日本版オリジナルのボーナストラックとして訳者である山形浩生による関連書籍ガイドが付けられていてお得だ(『運は数学にまかせなさい』も紹介されています)。
それにしても『NUMB3RS』面白そうだなぁ。 日本でもDVD化しないだろうか。
*1 UNIXぽくね、でもいいかな。
_ DCカードの会員誌「GRAN」がまあまあ面白い件
DCカードの会員誌「GRAN」を購読しているのだが、いつも届いても妻が読むだけでオレはスルーしていた。
今日なんとなく読んでみたら、広告が1/4を占めているし、「金持ち向け」という誌面づくりには鼻白むところもあるのだが、書評欄や女優へのインタビューなどもあって、まあまあ面白く読める内容だった。
料金分の価値があるかといえば微妙ではあるが、まぁ、読み物が好き人にはいいのかもしれない。
ただ、読者アンケート兼プレゼントのハガキに80円切手を貼らなきゃいけないっていうのはどうかと思う。 今時「Software Design」だって、「WEB+DB PRESS」だって、アンケートのハガキは着払いだよ。
「GRAN」を読む上流階級な人は、80円切手くらい気にしないってことなのかもしれないけど。
_ 夏休み第5日目
特に用事もなかったので、午前中、運動がてら歩いて買い物に行った。 どうも田舎暮らしだと車に頼りきりになってしまっていかんね。
午後は浴槽の下の掃除をしたり。 手が届かない場所にカビが生えていそうなので、一度、業者に掃除をして貰った方がいいかもなー。
夕方には『クリスマスのフロスト』と『極道めし』第3巻を読了して、『サーバ/インフラを支える技術』を読み始める。
2008-08-17(Sun) [長年日記] この日を編集
_
機動戦士ガンダム THE ORIGIN (17) ララァ編・前 (角川コミックス・エース 80-20)(安彦 良和/矢立 肇/富野 由悠季)
オデッサ作戦終了後に宇宙に上がってからサイド6あたりのストーリーをカバー。
サイド6のアムロの親父のエピソードの謎が解けて、個人的にかなり嬉しかったり。
いや、オレ、ガノタじゃないのでTV版『ガンダム』はガキの時(小学校低学年くらい)の時に見ただけなのだが、あの時、アムロの親父が渡してくれたパワーアップ・パーツをなんでアムロは捨てちまったのかな? って疑問だったんだよね。
あれって、アムロの親父が酸素欠乏症でイッちゃっていて、ガラクタを渡していたんだな。 20年来の謎が解けた感じだ。
_
極道めし 3 (3) (アクションコミックス)(土山 しげる)
新刊で出ているのに気付いて発注したのだが、かなりがっかりなデキだなー、というのが正直なところ。
メインの房の決着が着いたので、また別の房でスタートという第2巻とまるっきり同じ展開なので、「それはもう読んだよ」と言いたくなる。
第1巻を読んだ時には「すげー、こんなシンプルなプロットでストーリーを組み立てしまうのか!」と驚かされたのだが、それも続くと飽きがきてしまう。
一巻完結にしておけば、『孤独のグルメ』のような神漫画として後世まで語り継がれた名作になったかもしれないのに、ずるずる続けてしまって凡作と化してしまう典型かもしれない。 このままのパターンだと、もう続刊を買うのをやめるかもなー。
同じ作者の『喰いしん坊』も近刊もイマイチだし、がんばってほしいところだ。
2008-08-20(Wed) [長年日記] この日を編集
_ フロスト三昧
夏休みからちょこちょこ読みはじめていたフロスト・シリーズだけど、すっかりハマってしまって、通勤電車と就寝前はフロストばかり読む日々になってしまった。
現在、『夜のフロスト』を読んでいるところ。
フロストが面白いというのは聞いていたんだけど、これほどとは思わなかったなぁ。 まだ、『フロスト気質』と短編『夜明けのフロスト』が残っているので、今週いっぱいは楽しめそうだ。
2008-08-21(Thu) [長年日記] この日を編集
_ 風邪引いた
会社で「冷房が寒いなー」と思いつつも、面倒くさくて設定温度を上げずにいたら、帰宅する頃には、ちょっと熱っぽく、関節も痛くなってしまって、完全に風邪の初期症状状態。
早く寝ればよかったんだけども、オリンピックのソフトボールの試合を見ていたら、すっかり夢中になってしまって、結局、試合終了まで見てしまった。 やったぜ、金メダル!
気分が良くなったとこで、葛根湯飲んで厚着をして早めに就寝した。
2008-08-22(Fri) [長年日記] この日を編集
_ いよいよ子犬が来ることになった
動物指導センターから子犬を貰える順番が回ってきたとの連絡があった。 いよいよ我が家にも子犬が来る。
センターには、半休をとって来週の金曜日に迎えにいくことにした。 3匹の中から選ぶことになるようなのだが、迷ってしまうのではないかとちょっと心配だったり。 どの子も可愛いだろうしなぁ。
それよりも犬小屋の準備をしておかないといけないな。 明日は休日出勤なので、日曜日にはやらないと。
_ デジタル一眼レフカメラが急に欲しくなった
子犬が来ると知ったら、めらめらと「デジタル一眼レフカメラ欲しい」熱が燃え上がってきてしまった。
子犬を写した可愛いだろうなー。
うむむ。こないだMacBookを買ったばかりだし、iPhoneとかイーモバイルあたりへの物欲も抑えている最中だというのに……。
しかし、子犬の時はあまり長くないしなぁ。 まぁ、使い込なせるかどうかという心配もあるのだが。うーん。
2008-08-23(Sat) [長年日記] この日を編集
_ 休日出勤だった
土曜日なので電話もなく、サーバをいじって、マターリ過ごす。
_ Flash Player 10 for FreeBSD
Alex Bustin氏のブログ「64 bit Linux / FreeBSD Flash Player exists」に興味深い内容が掲載されています。同ブログによれば,Adobe Systemsはすでに64/32ビットの双方に向けたFreeBSD版Flash10プレーヤを持っていることになります。同氏はFlashForwardにおいてFreeBSDで動作している64ビット版Flash Player 10のデモンストレーションを目撃した他,32ビット版FreeBSD Flash Playerも見たと説明しています。
しっかりとしたリリース計画はないようですが,Adobe SystemsからFreeBSD版Flash10が公開される可能性がありそうです。
FreeBSDを常用環境とする上での最大の障害は最近のバージョンのFlashが見られないことじゃないかと思っているので、これは期待大。
_ Terminal.appでcopy-on-selectがしたい
メインの作業環境をMacBookにしてから早3週間なんだけども、いまだに違和感があるのが、Terminal.appでcopy-on-selectができないこと。
copy-on-selectというのは、X.orgを使っている人だと分かると思うのだが、テキストを選択すると、それがclipboardに入るという機能。 「Cmd-C押すだけだろ」って話なんだが、Windowsで使っているPuTTYでも実装されているものなので、なんでMac OS Xに入っていないのか疑問ではある。
ググって見付けたCopy on select in Terminal? [Archive] - The macosxhints Forumsによると、TigerのTerminal.appまでにはあったみたいなんだけどなぁ。 なんで削除されちゃったんだろう?
色々とググったところ、マウスの中ボタンで同等のことはできるようなんだけども、MacBookにはマウスを付けないようにしているので、それも享受できなかったり。
なにか解決方法があればいいのだが(まぁ、どうしようもなければ、Cmd-Cに慣れればいいんだけどねぇ)。
2008/11/30追記
瀧内さんがTerminal.appでCopy on SelectをできるようにするSIMBLを作ってくれました。
Terminal.appでCopy On Selectできるようになった! - ぽっぺん日記@karashi.org(2008-11-30)
2008-08-24(Sun) [長年日記] この日を編集
_
本の雑誌 301号 夜店提灯トコロテン号
最近、
買う本 > 読む本
のスピードが加速中で、積ん読になっていた本誌をやっと読んだ次第。
301号特集ということで、これまでの300号に紹介されたうち、厳選の300冊の書評が掲載されている。 積ん読タワーが低くなったら、こっちの本も読んでみるかねー(いつになるか分からんけど)。
その他、面白かった記事をピックアップしてみる。
「前代未聞『本屋プロレス』の全貌」
俺たち文化系プロレス DDT(高木三四郎)の販促で、なんと17坪の町の本屋さんでプロレスをしてしまったという記事。
書いているのはその本屋プロレスの会場になった、書店の店員さん。
どんな内容かは下記のニコニコ動画にアップされた当日の様子に譲るが、あまりの馬鹿馬鹿しさに笑ってしまった。
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2008-04-28 |
本屋プロレス旗揚げ戦 前編 (05:21) ピンクwwww wwwww www 本www オーじゃねぇww ファイトマネーどれく |
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2008-04-28 |
本屋プロレス旗揚げ戦 後編 (10:12) はまってきた 変態だなあ ジャスコプロレスみた アスファルト上でラナ |
そういえば、この本、本が好き!の献本になっていたんだった。 プロレスには興味がないのでスルーしてしまったのだが、せっかくなので読まさせて貰えばよかったかも。 ちょっと惜しいことをした。
「世界の魔窟から」(第1回) 日下三蔵邸・書庫編
SF/ミステリの評論家として著名な日下氏だが、本の他、アニソン・特撮ソングのコレクターとしても有名だそうである。
そんな氏の書庫となっている団地の一室を探索しているのがこの記事。
なんと現在、約1万5千冊の本と、アニメ専門店を超える量のアニソンや特撮ソングのCD、DVDなどで、足の踏み場もない状態らしい(ちなみに自宅には4万冊の蔵書があるとのこと)。 総重量はすごいことになっているものと思われる。 部屋の床が抜けないことを祈るばかりだ。
積ん読が多くなって、かなり部屋がプチ魔窟に近い状態になっているオレだが、基本的にはあまり本を取っておく方ではなく、読み終えた本はバンバンあげてしまっている。 というのも、日本の土地代の高さを考えると、その収納コストがベラボーなものになるのではないかと思うからなのだ。
しかし、問題は10年、下手すれば5年もすれば、入手できなくなる本がゴンゴン出てくることなんだよなー。 うーむ。
2008-08-27(Wed) [長年日記] この日を編集
_
新編 真ク・リトル・リトル神話大系〈4〉(H.P. ラヴクラフト/A. ダーレス/Howard Phillips Lovecraftt/August Derleth)
新編真ク・リトル・リトル神話大系 3に続く第4弾。
収録作は次の10作。
- 「月に跳ぶ人」(R・A・W・ローンズ)
- 「深淵の王者」(C・H・トンプソン)
- 「爬虫類館の相続人」(H・P・ラヴクラフト&A・ダーレス)
- 「開かずの部屋」(H・P・ラヴクラフト&A・ダーレス)
- 「第七の呪文」(J・P・ブレナン)
- 「妖虫」(R・キャンベル)
- 「異次元通信機」(R・キャンベル)
- 「暗黒星の陥穽」(R・キャンベル)
- 「ポーの末裔」(H・P・ラヴクラフト&A・ダーレス)
- 「魔界へのかけ橋」(H・P・ラヴクラフト&A・ダーレス)
個人的な収穫はキャンベルの「妖虫」。 英国版デルタ・グリーン「ピスケス」の裏で手を引いているのが、本作に登場するシャガイからの昆虫生物だと知って以来、読みたくて仕方がなかったのだが、旧版『真ク・リトル・リトル神話大系』は絶版の上、古本でもプレミア価格がついていて手が届かなかったという苦い思い出があるので感慨もひとしお。 長生きはするもんですなー。
その他、オススメは「月に跳ぶ人」、「爬虫類館の相続人」、「異次元通信機」あたり。 出来はよくないが、「開かずの部屋」のマーシュ一族とウェイトリー一族の子供という、あまりに節操のないネタにもワロタ。
巻末に収められたエッセイはTRPGデザイナーの朱鷺田祐介によるもの。 いくつかクトゥルフ関連のTRPGが紹介されているが、2085年における人類と侵略者(旧支配者&奉仕種族&独立種族)の『永劫戦争』を舞台したCthulhu Techが最高に面白そう。 ネタ的にはクトゥルフ + エヴァンゲリオン + マクロス + ガイバーらしい。 未訳なので、どっか訳さないかなぁ。 出版されたら買うけど。
ニコ動にCthulhu TechのPVがアップしてあったので貼っておく。
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2008-02-12 |
Cthulhu Tech PV (02:50) 試用版ならタダで手に メガテンっぽいな 右から2番目が名状し クト... |
_ 佐々木譲先生も
速水螺旋人の馬車馬大作戦(速水螺旋人)を買っていた
それにしてもこの著者、たいへんなロシア・ソ連フリークであり、軍事マニアだ。近代史への造詣も深い。『頭上の装甲列車』など、ロシア革命や東欧の革命についてのそうとうの知識がなければ描けない作品だし、『砦の上にわられの世界』は、ロシア内戦史の見事な要約。箱館戦争を題材にした『奈張藩の要塞』にも大笑いだ。刺激される。
[佐々木譲のプッシュピン: リトルプレス始動間近より引用]
とベタ誉めですよ! すげー。
_ Mixiのパスワードを変更したの忘れてた
Mixiのコンテンツは、PlaggerのCustomFeed::MixiScraperを使ってGmail経由で読んでいるんだけど、今月はじめくらいからGmailに飛んできていないことに、今さら気付いた。
「また、Mixiのレイアウトが変更になったんかなー」と思いつつ見てみたが、そんなこともなさげ。
あれ? と思い調べてみたら正常にログインで出来てなかった。 そういえば、先月の終わりくらいにパスワード変更してたんだった。orz
ってことで、YAMLのパスワード部分だけ書き直した。
_ wassrとfrepの同期を中止した
「frepa」サービス終了のお知らせ - ソーシャルネットワーキングサイト (SNS) - フレパ
ってことなので、wassrからtwitter & frepに同期させているPlaggerのYAMLを編集して、frep部分を削って対処。
2008-08-28(Thu) [長年日記] この日を編集
_ direct_bookmark.jsでdeliciousとはてブに同時ポストするようにした
Plaggerでdelicious→はてブの同期をしていたんだけど、ポロポロと取りこぼしているようなのでvimperatorのdirect_bookmark.jsで同時ポストするようにした。
それにしても、なんで取りこぼしているんだろうなぁ。
_ 次はFreeBSD 7.1-RELEAESEでいいかな
保守的なオレなので6系で通してきたけれど、7.0Rでの不具合も聞かないし、次のリリースではもう7.1Rに全面移行してもよさげ。
まぁ、リリースが遅れるのはいつものことなので、10月には出ないんじゃないかと思うんだけど。:-)
2008-08-29(Fri) [長年日記] この日を編集
_ フロストを読まない人は人生の10%くらい損をしている──
フロスト気質 上 (創元推理文庫 M ウ)(R.D. ウィングフィールド/R.D. Wingfield/芹澤 恵)・
フロスト気質 下 (創元推理文庫 M ウ)(R.D. ウィングフィールド/R.D. Wingfield/芹澤 恵)
邦訳が出版される度に、「このミステリーがすごい!」や「週刊文春ミステリーベスト10」の1位に輝き、また数々の年間ミステリーベストテンにランクインしてきたジャック・フロスト警部シリーズの第4弾が本書。
このシリーズはこれまで未読で、本書を献本して頂いたことをきっかけに第1弾『クリスマスのフロスト』から本書まで、夏休みからの1週間ほどで一気に読んだのだが、いやー、面白いのなんのって、完全にフロストのファンになってしまった。 「フロストを読んでいない人は、人生の10%くらい損をしている」と言っても決して大袈裟ではないのではないかと思う。 マジで。
本シリーズの主人公にして、 よれよれのレインコートに垢染みたスーツ、いつ洗濯したか分からないえび茶色のマフラーがトレードマークのジャック・フロストは、ロンドンから70マイルの地方都市レンドンの警察署に勤める中年の警部だ。 下品かつ悪趣味なジョークを──本書での部下であるリズ・モード曰く、 「時と場所をわきまえず、最も言ってはいけないタイミングで」(上巻・p.244) ──連発し、女性がいればおっぱいとお尻の観察に余念がなく、上司の権威や命令を屁とも思わず、書類仕事はまるでダメ。 しかし、稀代の仕事中毒で、ひとたび事件となれば、文字通り不眠不休で事件解決のために駆けずりまわるという人である。
こう書くと、普段は「昼行灯」扱いされつつも、緊急時には名推理を働かせるタイプの捜査官を想像するかもしれないが、フロストの推理は完全に行きあたりばったり。 なにしろ、まず、第一印象で怪しそうな人物がいれば、証拠もへったくれもなく、その人物を犯人とした「仮説」を組み立て捜査をしてしまうのだ。 予断を持った捜査を戒めたのは京極夏彦の百鬼夜行シリーズ登場の木場刑事だったと記憶しているが、その言から考えると、フロストが展開するのは、まさに「予断入りまくり」の捜査なのである。
そんなメチャクチャな方針で進められる捜査は、当然のことながら、推理が外れることは日常茶飯事の、行きつ戻りつの迷走状態となる。 そこを持ち前の粘り強さと刑事としての勘、そして強運でフロストが解決にこぎつけていくのだ。
がさつを絵に描いたようなフロストだが、同時に情の人でもある。 犯罪被害者はもちろん、心ならずも加害者となってしまった人や小悪党に、自分の手柄そっちのけ、上司の叱責も覚悟で見せる優しさには胸をつかれることもしばしばだ。 清濁あわせ持った人間臭さこそがフロストの最大の魅力といえるだろう。
さて、そんなフロストが活躍するシリーズの第4弾の本書である。
本書のストーリーは、ハロウィーンの夜のデントン市内を警邏中の巡査がごみ捨て場からごみ袋に入った全裸の少年の死体を見付けることから始まる。それは行方不明となり捜索願が出されていた少年だった。折り悪く、捜査を指揮すべきアラン警部はマレット署長に同行しパーティに出席中。 混乱するデントン署にひょっこり現われたのが、署長室に忍び込み煙草をせしめようとしていた休暇中のフロスト警部だった。 アラン警部に引き継ぐまでを約束に現場に向かうフロストだったが、思わぬ展開で捜査を指揮することに……。 さらに連続幼児刺傷犯が現れ、15歳の少女が誘拐され、謎の腐乱死体が見付かり、フロスト警部は自らのキャパシティを超えた事件を抱えつつも解決に奔走する!
巻を重ねるごとにページ数を増してきた本シリーズだが、今回は上下二分冊となった。
その総ページ数は、なんと908ページ!(解説含む)
分厚い本が好きな人間としては、ここは
量子真空 (ハヤカワ文庫SF)(アレステア レナルズ/鷲尾 直広/中原 尚哉)ばりの超分厚い一冊本を目指して欲しかった気もするが、実際に読むという面ではこちらの方が望ましいだろう。
フロストの部下となった新米刑事──フロスト曰く、「坊や」──が巻ごとに入れ替わり、人使いの荒いフロストとともに(内心でフロストを罵りつつ)不眠不休で捜査に当たるのがシリーズの恒例であるが、本書ではその役を務めるのは女性(フロスト曰く「嬢ちゃん」)。 前掲のリズ・モード部長刑事がそれだ。
そこに他の署へ出向となったアラン警部の代わりに、フロストと浅からぬ因縁を持つ、強烈な上昇指向の持ち主ジム・キャシディがレンドン署に警部代行として出向してきて混乱に拍車をかける。
シリーズ最大の狡知に長けた犯罪者とフロストとの緊迫したやり取りや、心からスカッとするラストもあって、フロスト・ファンは楽しめること間違いなしの一作に仕上がっている。 もし、フロスト・シリーズを未読の方も、良い機会なので『クリスマスのフロスト』から読み始めることを全力でオススメする次第。 最初にも書いた通り、フロスト・シリーズを読まないのは「人生の10%くらい損をしている」のだから。
巻末に収められた荻原浩氏による解説を読んで驚かされたのだが、作者である R・D・ウィングフィールドは去年、前立腺癌のため亡くなったとのことである。現在、未訳のフロスト・シリーズは、今年出版されて遺作となった一作を含めて残り2冊。 早く読みたいと思う反面、それでフロストにもう会えなくなってしまうかと思うと、読むのを出来るだけ先延ばしてしてしまいたいような不思議な気分になってしまう。 それだけフロストに惚れ込んでしまったということだろうか。
最後に、本書を献本して頂けなければ、フロスト・シリーズを手に取る機会はなかったのではなかったのではないかと思う。 このような傑作を読む機会を与えて頂いた東京創元社様には改めて感謝したい。
誤植
誤植らしきものを見付けたので。
上巻p.78に「リズ・モード巡査部長」とあるけれど、「リズ・モード部長刑事」ですよね?
- 芹澤 恵
- 東京創元社
- 1155円
書評/ミステリ・サスペンス
_ 我が家に子犬が来た!
県の動物指導センターで犬を譲渡して貰える日だったので、会社を一回休み。 ホントは半休を取ろうとも思たんだけど、車で行くため、結構、時間がかかりそうなのでスパッと休んでしまった。
現地に着いて、犬2匹とご対面ー。
毛色は白と茶。どちらも人懐っこくて可愛いくて、どっちにするか非常に悩んだのだが(両方を貰うことはできない)、結局、前の飼っていた犬と同じ毛色の茶にした。
手続きを終えた後、妻が助手席で犬を抱いて帰った。 帰路、さっそく犬が吐いてしまうという洗礼を受けた。:-)
帰宅後、緊張している感じだったけど、しばらくすると慣れて、用意しておいた犬小屋にも入ってくれた。 とてもおとなしい犬でびっくり。 寂しくて鼻は鳴らすことはあるけれど、まだ一度も吠えていない。
名前はハナにした(妻による命名)。
さて、明日から10年ちょい、 ハナと暮らす日々がはじまるよ。さっそく早朝から散歩だ。






Canon デジタル一眼レフカメラ EOS Kiss X2 レンズキット KISSX2-LKIT








まで頂ければ幸いです。