ぽっぺん日記@karashi.org
2008-06-14(Sat) [長年日記]
_ やっぱり、ホーガン節は健在でした!!──『黎明の星』
黎明の星 上 (創元SF文庫 ホ 1-25)
東京創元社
¥ 882
黎明の星 下 (創元SF文庫 ホ 1-26)
東京創元社
¥ 882
J・P・ホーガンの最新作にして、 地球文明を壊滅させてしまったトンデモSF『揺籃の星』に続くシリーズ第2弾が本書。 全篇に渡ってストーリーテラー、ホーガンの技が冴え渡り、ぐいぐい読ませる傑作冒険SFに仕上がっている。
彗星アテナの通過により生じた大カタストロフィにより地球文明が壊滅してから3年。 アテナの影響でいまだ変動が続く太陽系だが、土星の衛星群に独自の科学文明を築いたクロニアは最後の人類文明の担い手として、力強く生き延びていた。 しかし、クロニア内にも新たな対立の火種が生まれようとしていた。 地球から脱出しクロニアに受け入れられた地球人の一部が、社会体制の改変を求め政治闘争を開始したのだ。 折しも、アテナによってもたられた激変が治まりつつある地球に調査団が派遣されることが決定される。 大陸の形さえも大きく変わってしまった災厄後の地球で調査団を待ち受けるものとは──。
まずは訂正をしておかないといけない。
前作『揺籃の星』についてはJ・P・ホーガンもアッチに行ってしまいました──『揺籃の星』 - ぽっぺん日記@karashi.org (2008-06-12)で
……やっぱり、トンデモでした!!
や
「あぁ、ホーガンもアッチに行っちゃったのね」とちょっと悲しくなってしまう。
なんて酷評したが、本書を読了してシリーズを通しての感想を次のように改めなくてはいけないと感じた。
それでも、やっぱり、ホーガン節は健在でした!!
前作の最大の問題点であるトンデモ理論は本書でも健在なのだが、既に所与のものとして扱われ、その成否を巡るような論争がないため、それほど違和感なく受け入れることができる(こちらが慣れてしまったせいもあるとは思うが)。
トンデモ理論に代わって本書でクローズアップされるのが、前作ではあまり言及されなかったクロニアの独自の文明だ。 貨幣制度を捨て、他人からの評価でその個人の価値が決まるというクロニア人の極端かつ、ちょっとムリのある考え方は、いかにも科学第一主義なホーガンらしく、ホーガン作品に馴染んだ読み手であればニンマリしてしまうだろう。
さらに、ニンマリさせられてしまうのがホーガン節炸裂の大団円だ。 読書の興を削ぐので書けないが(うー、書きたい)、すっかり変貌した地球の大地でのサバイバルや危機に次ぐ危機などの絶望的な状況を一気に爽快なラストへと着地させる手腕は見事。 たっぷりとホーガン流のカタルシスを味わうことができるはずだ。
文明の崩壊というテーマである以上、仕方がないのだが、『揺籃の星』に足りなかったものはこのカタルシスなのだ。 ホーガン作品の醍醐味は「センス・オブ・ワンダー」とともに、危機的な状況から一転して爽快なラストに至るカタルシスにあるということを再確認できた一作だ。
トンデモ理論が展開されてしまうあたりはご愛嬌だが、そこに我慢できる読み手であれば、『揺籃の星』とともに読む価値がある作品と断言しておきたい。
なお、本シリーズは三部構成になるとのことだが、最終巻になる第三部はまだ執筆されていないとのこと。 もう何年か待つことになりそうだが、読める日が楽しみだ。
- 内田 昌之
- 東京創元社
- 882円
書評/SF&ファンタジー





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